腹パン系ダンジョン配信者   作:恋狸

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人間は理解できないものを見ると気持ち悪いと思うらしい

「これだから罠ってヤツは嫌いなんだよ!!!」

 

コメント

・好きなやつおるんか?

・昔から言うよな。罠ってのは引っかかる方が悪いって

・腹パンで対処できないの?

 

「こういうのは大体破壊不能オブジェクトなんだ……俺は知ってる……!」

 

 大抵の罠は腹パンの無敵効果とか回避で切り抜けることができるが、俺と相性の悪い罠は"破壊不能オブジェクト"というヤツである。

 まあ、ゲーム的に言ってるから全然正式名称ではないんだけども、まあ、簡単に言ったら何らかの条件を満たさない限り破壊ができない罠のタイプってことだな。

 こういう罠に腹パンのスタン効果が効くかも分からんし、下手に藪蛇を突くよりも普通に逃げたほうが良い──ってことで全力疾走中な? 分かった?

 

コメント

・やってみなきゃ分からないだろ!!

・どうして諦めるんだ!!!

・もしかしたらもしかするかもしれないじゃん!!

・決めつけは良くないよ

・いけ! 腹パンだ!!

 

「お前らさァ!!」

 

 死地に飛び込ませようとするところ、本当に蚊帳の外の第三者って感じよな。

 死ぬな(死ね!)! って思ってんだろ。

 そもそも絶対毒付与されてんだろ、って感じの罠にどうして自ら突っ込まないといけないんだよ。普通に逃げるわ。

 

「よし! 曲がり角!! もろたで工藤!!」

 

コメント

・フラグ建築士1級

・ムラサキウニみたいな鉄球から逃げる夢咲が普通にツボw

・明らかに自立駆動してないとおかしいよな、だって平面だもん

・多少傾いてるから動いてる……レベルの速さじゃねぇwww

・てか何でトゲトゲなのにそんな回ってんだよ

 

 俺が聞きたいわ!!!

 逃げるだけなら足を動かすだけで良いので、ギリギリコメント欄を見る余裕程度はある。それにもう少し行けば曲がり角だし、ムラサキウニとはこれでおさらばすることができるだろう。

 

 俺は後ろをちらっと振り返る。

 相変わらず何でそんな高速で動いてんのか良く分からん。

 

「あばよムラサキウニ!!」

 

 俺はニヤリと笑って急カーブで曲がり角を右に曲がる。

 あれだけのスピードを出しながら曲がり切ることができた。我ながら完璧な体の制動である。

 

 ふっ、と笑って後ろを向くと────紫色の鉄球が内ラチ沿いに完璧にコーナーリングしながら曲がってきた。

 

「うっそやろおい」

 

コメント

・ファッ!?www

・曲 が っ て き た 

・は い 、 こ ん に ち は

・明らかに重さ数トンの罠がやっていい動きじゃない

・真っ直ぐ進みますってツラしておいてホーミング機能付いてるのは聞いてない

・笑いの神に愛されすぎてる

 

 それはズルですやん。

 これが笑いの神に愛された結果なのならば、俺自身を笑わせてくれ。鉄球がコーナーリングしてくるのはシュールだけど、生死関わってたら笑えないんよ。

 いや、これが生死を賭けた熱き戦いとかなら全然笑えるんだけどさ、このまま鉄球に轢き殺されて死んじまった場合は普通に末代までの恥なんだよね。

 

 死因:ムラサキウニによる轢死

 

 俺のWikipediaが後世まで遊び場になってしまう……!!

 

「どうすれば切り抜けられる……!?」

 

 考えろ考えろ。

 意味の無い罠はダンジョンにおいてそこそこ多いけど、そういうモノは得てして単純でしかない。

 単なる落とし穴だったり、普通に弓矢で殺しに来たり。

 

 だけど、このムラサキウニは色々とおかしい。

 明らかに平地で加速してるし、轢き殺すだけの重量が備わってるのに毒毒しいし、何よりもコーナリングしてくるほどのホーミング機能付きだったりと、罠にしては余りに豪華すぎる。

 

 ──まるで意思を持ち得ているかのような……。

 

 ……いや……あり得るか?

 俺は最初からムラサキウニを罠と判断していたけど、もしかしたらそうじゃない可能性だってある。

 

 宝箱を開けたことで魔物となるミミックがいるように、ギミックを発動させることで魔物となるパターンもあるかもしれない。

 

 もしや俺がスイッチを踏んだことで鉄球が魔物化した……という可能性もある。

 

「どのみち、ずっと付いてくるならジリ貧でしかない、か」

 

 覚悟を決める。

 ここで死んだら運が悪かった。ただそれだけの話。

 予測通りなら勝算はある。

 

コメント

・えっ、なんで立ち止まってるの???

・体力切れ!?!?

・私たちが腹パンしろと言ったばかりに……

・夢咲壊れちゃった……

 

「黙って見ておけリスナーども。これが俺の──答えだ!!」

 

 迫りくる鉄球。

 通路を塞ぐほどの大きさの鉄の塊が向かってくる圧力は、俺をしても少しビビるほど凄まじい。

  

 だがしかし、戦おうとしたその瞬間、凍りついたように俺の体が動かなくなったことで────俺の予測は当たったことになる。

 

 あとは発動を待つだけ。

 

 迫る──迫る──迫る──迫る──逃げ場はどこにも無いが、単発の攻撃ならば──【回避】──、

 

 ──その瞬間、俺の体が紙のようにニュルンと滑らかになったかと思えば、鉄球に付いている針の隙間を縫うように躱していった。

 

コメント 

・キッッッッツ……

・うわぁ……

・ペーパーマ◯オ?

・ゲッダンも大概だけど普通に超えてきたわ

・回避不能な状況で回避が発動したらこんなんなるんか、きも

・えぇ…………?

 

 

「抜けた──【即撃】ッッ!!」

 

 針の隙間を抜けた瞬間、鉄球の動きがピタリと止まる。

 回避しきったということは、すなわち俺の腹パンの発動条件が揃ったということ。

 

 叫びながら俺は拳の一撃を針のついた鉄球に叩き込む。

 

 ゴォォォォォォン!!!!

 とドラを鳴らしたかのような鈍い音が響き渡る。

 

 すると──ピシピシッ、とひび割れる音とともに針ごと鉄球がバラバラになった。

 

「やっぱり魔物だったか。ハッ! 見たかリスナー! お望み通り鉄球に腹パンしてやったぜ」

  

 本当は腹パン以外で決めたかったけれど、状況的に他の手段は無かった。結果的にリスナーの指示通りとなってしまったが──盛り上がるならそれはそれで良いかもしれない。

 

 俺は笑いながらコメント欄を見る。

 

コメント

・失望しました。ユキヤきゅんのファン辞めます

・キモすぎて草ァ

・私たちが望んだものがこんな気持ち悪いとは思わなかった

・ご飯時になんてもの見せてくれるの?

・今夜はソーメンかな

・ドン引きやね

・人間だった夢咲を返して……

・キッッ!

・見てないです

・ハッ……! 一体何だったんださっきの光景は! 記憶にない!!

 

「なんでぇ……??」

  

 ドン引きされてた件について。

 

 

 




鉄球退治の儀。

回避って200種類あんねん。
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