廃村の広場は、月光に照らされると、まるで忘れられた時間の亡霊たちが彷徨うような静けさに包まれていた。崩れた石柱、ひび割れた噴水、風化した石畳が、ここにかつて人々がいた証をかすかに語りかけてくる。遠くで雷鳴が低く響き、夜空に稲妻が一瞬の裂け目を描いた。
噴水の縁に腰掛けたセラヌスは、足を組み、冷たい金色の瞳で私たちを射抜いている。その視線は、まるで彼女自身の孤独を守る壁のようだった。
「同行はしない。」
短い言葉だったが、その響きには断固たる意志と、何かを背負う覚悟の重さが込められていた。
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「どうして?」
私は一歩踏み出して問いかけた。声が震えないようにするのが精一杯だったが、内心では、彼女の言葉の意味を噛み締めていた。
「理由なんてない。」
セラヌスはそっけなく答えた。
「他人に関わることは無意味だ。無駄に期待して、無駄に失望する。それだけのことだ。」
その言葉に、私の胸は重苦しく軋んだ。その冷たさの裏にある何か、たとえば傷つきやすさや孤独が、どうしようもなく目に見える気がしてしまうから。
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「無意味だなんて、そんなことはありません。」
私は静かに言葉を返した。
「一人で生きる方が、よっぽど意味がない。誰かといることで、得られるものもあるんです。」
「誰かといることで得られるもの?」
セラヌスは鼻で笑った。その音には侮蔑と諦めが入り混じっている。
「それは幻想だ。他人に期待すれば、いずれ裏切られる。それが世の常だろう。」
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「それでも、人は他人を求めるのよ。」
リリシアが焚火のそばから穏やかな声を発した。その声は、冷たい夜気を溶かすような温かさを持っていた。
「傷つくことを恐れて背を向けても、心の奥底では癒しを求めているもの。背中を預け合うことが、本当の強さを教えてくれるの。」
セラヌスは口を引き結んだまま、微かに眉をひそめる。彼女の金色の瞳に、一瞬の揺らぎが見えた。
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「強さね。」
セラヌスは短剣を手に取り、その刃先を見つめた。
「強さなんてものは、信じた相手に裏切られた時、消えてしまうものだ。他人に守られるぐらいなら、独りで傷ついた方がマシだ。」
「独りで傷ついてきた人間の言葉ね。」
コンヴァリアが静かに応じた。その声には、彼女の冷静な観察が滲んでいる。
「でも、本当に独りでいたかったわけじゃないでしょう?どこかで、誰かと分かち合いたいと思ったはず。」
セラヌスは視線を外し、口元をわずかに歪めた。嘲笑とも、自嘲ともつかない表情だった。
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「分かち合う?そんな理想論に浸る暇はない。」
セラヌスの言葉には冷たさがあったが、その中に宿る迷いが私には見えた。
「それでも私は、誰かを守るために生きる方が好きです。」
私はその言葉を口にして、自分の胸の内にある感情を整理しようとしていた。
「一人でいる方が楽でも、私はそうしたくない。誰かといることで、ようやく自分の居場所を見つけられる気がするから。」
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短い沈黙が広場を包む。月光が静かに石畳を照らし、遠くの雷鳴がまた空気を震わせた。
「……分かった。」
セラヌスがゆっくりと立ち上がり、手のひらを空に向けて槍を召喚した。その動きは、まるで決意そのものを形にしたようだった。
「だが、勘違いするな。私が同行するのは私のためだ。誰かを守るためじゃない。」
「それで十分よ。」
リリシアが微笑む。その笑顔には、冷たい夜の中でも確かな温かさが宿っていた。
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雷鳴が空を裂き、雨が降り出した。
冷たい雨粒が私たちの間に降り注ぐ中、セラヌスの背中にはまだ孤独の影が漂っていた。だが、彼女の足取りには、少しだけ仲間を受け入れる余地が生まれたように見えた。
旅は続く。その足元には雨に濡れた泥が広がり、頭上には未だ曇天の空が続いている。それでも、私たちは一歩ずつ進んでいく。