霊刻の咎(れいこくのとが)   作:くにゅたろ

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第12話: 咎の記憶

森の奥深く、冷たく湿った空気が肌にまとわりつく。木々の隙間から差し込む光は細く弱々しい。鳥のさえずりもどこか遠く、ただ枝葉が風に揺れる音だけが耳を満たしていた。ここには命があるはずなのに、どこか不気味で現実感が欠けているように思えた。

 

「気を抜かないで。」

セラヌスの鋭い声が、静寂を切り裂く。彼女の金色の目が森の奥を警戒するように細められる。

 

「咎狂の気配……じゃないかしら。でも、何かがいる。」

リリシアが周囲を見回しながら小声で応じた。彼女の母性的な穏やかさも、今は緊張感で覆い隠されている。

 

 

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森の奥から微かな人影が見えた。その影は木々の間をゆっくりと歩み、やがて私たちの目の前に現れた。

 

ボロボロのローブを纏い、金色の髪がほこりまみれでまとわりついている。顔は青白く、どこか人形めいて無機質に見える。しかし、その瞳にはかすかな怯えと迷いが浮かんでいた。

 

「……誰?」

私は恐る恐る声をかけた。その言葉に、少女は一瞬だけ戸惑ったような表情を見せた。

 

「……私……名前……フローリア……。」

か細い声で答える彼女。その言葉は途切れ途切れで、まるで自分の記憶を手繰り寄せるかのようだった。

 

 

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「記憶喪失?」

セラヌスが眉をひそめる。その声には疑念と冷たさが混じっていた。

「こんな場所で生き延びている人間がいるなんて、何か裏があるに違いない。」

 

「でも、彼女を放っておけないわ。」

リリシアが一歩前に出た。その言葉には揺るぎない優しさと使命感が込められている。

「たとえどんな状況でも、助けを求める声を無視するわけにはいかない。」

 

セラヌスは鼻で笑ったが、それ以上反論しなかった。

 

 

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リリシアはフローリアに近づき、静かに問いかける。

「どうやってここまで来たの?何か覚えていることはある?」

 

フローリアは首を振り、小さな声で答えた。

「……分からない……ただ、灰色の光……歪んだ声……それと……叫び声が……。」

 

その瞬間、私の刻印が疼いた。冷たい痛みが右手を走り、全身が震える。まるで彼女の記憶が私の中に直接響いてくるようだった。

 

 

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「その記憶、本当に安全なのか?」

 

セラヌスが冷たい目でフローリアを睨む。

「もしそれが何かの罠だったらどうする?私たちまで巻き込まれるかもしれない。」

 

「それでも、彼女を見捨てることはできないわ。」

リリシアがきっぱりと答える。その言葉には、母親が子供を守るような揺るぎない決意があった。

「どんなにリスクがあっても、彼女を助けるべきよ。それが、私たち魔導者の役割だと思う。」

 

セラヌスは短く鼻を鳴らしたが、何も言わなかった。

 

 

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生活感の描写

 

その夜、私たちは森の中で簡素な食事を取った。リリシアが小川から汲んできた水を革袋に注ぎ、焚火で乾いた果実を温める。コンヴァリアが周囲の茂みから摘んできた草木の葉を慎重に選り分けている。

 

「これ、毒はないわ。」

コンヴァリアが干し肉と一緒に分けた葉を差し出した。その冷静な眼差しには、彼女の知性と適応力が宿っている。

「こういう環境で生き延びるには、食べられるものを見極めるしかないのよ。」

 

「助かるわ。ありがとう。」

リリシアが柔らかく微笑む。その表情には母性的な温かさが滲んでいた。

 

 

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フローリアの加入

 

焚火の光に照らされたフローリアの顔は、不安と希望が入り混じった表情をしていた。彼女は自分がここにいる理由も、記憶も、すべて失っている。それでも私たちの中に混ざることを望んでいるように見えた。

 

「一緒に来る?」

私が問いかけると、彼女は小さく頷いた。

 

「……私、何もできないけど……。」

 

「それでいいの。」

リリシアが柔らかい声で答える。

「これから一緒に行動していけば、きっとあなた自身の答えが見つかるはずよ。」

 

 

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こうしてフローリアが仲間に加わった。その記憶の断片が、私たちの運命を大きく変えることになるとは、この時まだ誰も気づいていなかった。

 

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