塔の外壁は月光に照らされ、その陰影が深く刻まれている。長い年月に耐えた石材には苔と亀裂が入り、上部は半ば崩れ落ちていた。入口は小さく、冷たく湿った空気が絶えず流れている。私は右手の疼きを抑えながらその中を覗き込んだ。
「この中で何か見つけられるといいんだけど……。」
私が呟くと、コンヴァリアが右腕を持ち上げた。異形化した腕が淡い光を放ち、塔の内部をぼんやりと照らし出す。
「これで少しは見えるでしょう。」
彼女は静かに言い、その声は頼もしさを感じさせた。
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塔の中は思った以上に広かったが、天井が低く、壁には古代文字や奇怪な彫刻が彫られている。遠くから響く風の音は、まるでこの場所そのものが何かを囁いているようだった。
「不気味な場所だな。きっと昔ここにいた奴らも狂ってたんだろうよ。」
セラヌスが壁を見ながら冷たく笑った。その言葉には皮肉が混じり、彼女の表情は硬い。
「それでも、ここには重要なものがあるかもしれない。」
リリシアが静かに答えた。彼女の言葉には揺るぎない信念が込められていたが、その目には微かな緊張が浮かんでいた。
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突然、奥から低い唸り声が響いた。空気が一瞬冷たくなり、足元の瓦礫が震える。咎狂だ。
「迎えに来たようだな。」
セラヌスが槍を手にした。その槍が一瞬の閃光とともに現れる。
「さっさと片付けるぞ。」
咎狂は闇の中から姿を現した。その体は捻じ曲がり、骨と筋肉が異様に膨張している。片腕は鋭い爪で覆われ、その動きは人間のそれを超えていた。
「来る!」
コンヴァリアが警告を発しながら右腕を上げる。彼女の光が咎狂の動きを捉えたが、その速さに目が追いつかない。
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咎狂が跳びかかる瞬間、セラヌスが槍を振り抜いた。その一撃が咎狂の肩を削ぎ落とす。だが、咎狂はすぐに反撃し、鋭い爪がセラヌスの頬を掠めた。
「この野郎……!」
彼女は舌打ちし、槍を瞬時に消し、短剣に持ち替える。狭い空間で槍を振るうには不利だと判断したのだ。
「私が援護する!」
その声とともにフローリアが咎霊器を手にした。ねじれた蔦のような形状をしたその器具は、黒光りする表面に青白い光が脈打っている。彼女がそれを掲げると、器具全体が震え、塔全体が青白い光に包まれた。
「お願い、これで終わって……!」
彼女の声が響くと同時に、咎霊器が放つ光の刃が咎狂を貫く。咎狂は短い悲鳴を上げ、その体が崩れ落ちた。
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戦闘が終わると、フローリアはその場に膝をつき、咎霊器を抱きしめたまま動かなくなった。
「……何かが……消えた……。」
彼女の声は震え、その目は虚ろだった。
「記憶を代償にしたのね。」
リリシアがそっと肩を支え、穏やかな声で語りかけた。
フローリアは何も言わず、頭を抱え続けた。その姿はあまりに儚く、痛々しい。
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焚火の周りに集まった私たちは、簡素な食事を取りながら黙り込んでいた。風が吹き抜け、火の明かりが揺れる。
「生きるために、何かを失わなければならない……。」
フローリアが呟いたその言葉には、深い絶望が滲んでいた。
「でも、私たちはここにいるわ。」
リリシアが静かに答える。その声は柔らかく、絶望の中にも微かな光を見出すような力強さがあった。