廃墟の遺跡は、砂漠の吹き荒れる風を背負って佇んでいた。日中の暑さを失った砂は、夜の冷気を受けて凍てつき、歩くたびに小さな音を立てた。崩れた柱や亀裂の走った壁は、かつてこの場所が神聖な力を宿していた名残を感じさせる。
「暗いな……明かりが必要だ。」
コンヴァリアがつぶやくと、彼女の右手の異形化した蔦が揺らめき、小さな炎を宿した。淡い橙色の光が壁に影を作り、周囲の景色が幽玄な色合いに染まる。
「便利なもんだな、その腕。」
セラヌスが不謹慎に笑いながら短剣を軽く振る。「その光で咎狂をおびき寄せたりしないのか?」
「そうならないように祈って。」
コンヴァリアは冷静に答えたが、その声の底には緊張が混じっていた。
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遺跡の内部は広く、高い天井が空間を包み込んでいた。かつての住人たちが残した彫刻や模様が壁を彩り、神秘的でありながらも異様な不安感を醸し出している。
「この模様……呼吸してるみたい。」
アリセアが壁を見つめながら言った。その刻印が微かに疼き、何かを警告しているようだった。
「触るな。」
セラヌスが素早く声をかけ、彼女の手を止めた。「無駄に命を削りたくなければ、余計なことはするなよ。」
「……わかってる。」
彼女の声は震えつつも、どこか引き締まっていた。
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「待って、何かいる。」
コンヴァリアが足を止め、炎を少し高く掲げた。光の先に揺れる影が見えた。長く伸びた腕、異様に大きな頭部、そして歪んだ骨格が目に入る。咎狂だ。
「やっと遊び相手が来たな。」
セラヌスが短剣を握り直し、不敵な笑みを浮かべる。彼女の背中から一瞬の光がほとばしり、槍がその手に現れた。
「狭い場所じゃ危ないわよ。」
リリシアが冷静に言うと、セラヌスは槍を一瞬で消し去り、短剣に切り替えた。
「分かってるさ、母さん。」
セラヌスが皮肉を交えて答える。その動きは荒々しくも的確で、刃が咎狂の脚を捉えると、その巨体が崩れた。
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「私も加勢する!」
アリセアが霊契の印を輝かせ、壁を伝うように光の盾を展開する。しかし、咎狂の攻撃はそれを砕き、冷たい風が遺跡全体を駆け抜けた。
「しっかりして!」
リリシアが駆け寄り、アリセアの肩を支える。その手は優しく、確固たる強さを持っていた。
「こいつ……なんでこんなにしぶといの。」
コンヴァリアが咎霊器を掲げる。その表面を走る光が遺跡全体を包み込み、咎狂の動きを止めた。「これで終わらせる……!」
咎霊器から放たれた力が咎狂を貫き、その巨体を崩れ落ちさせた。
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戦闘が終わり、静寂が戻った。
「無駄に疲れたな。」
セラヌスが短剣を収めると、疲れを隠すように笑った。
「疲れてないわけがない。」
コンヴァリアが炎を消しながら答える。その顔には安堵と疲労が混じっていた。
「でも、進むしかないわね。」
リリシアの言葉に全員が静かに頷いた。彼女の声には、母なる大地のような落ち着きと力強さが込められていた。
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外に出ると、夜空に満天の星が輝いていた。冷たい風が私たちを包み、砂漠の音が静かに響いている。
「これが終わりじゃない。」
アリセアは小さく呟いた。手の疼きが、まだ何かが待ち受けていることを告げていた。
旅路は続く。遺跡が残した影と共に。