夜の平原を冷たい風が吹き抜け、草原を渡る音が星明かりの静寂をかき乱していた。アリセアの右手の刻印が疼き、微かな光を放ち始める。嫌な感覚が全身を駆け巡り、彼女は鋭く息を呑んだ。
「……来る。」
アリセアの小声に、隣を歩いていたフローリアがすぐ反応した。
「気配が重い……あれは咎狂ね。」フローリアは澄んだ瞳で遠くの闇を見据える。
「どこから?」アリセアが低く問いかけると、フローリアは風にそっと耳を傾けた。
「北側、木立の影に隠れている……。」彼女の声は落ち着いているが、その手は咎霊器の柄をしっかりと握っていた。
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「咎狂か。」
セラヌスの声が冷たく響く。彼の手に握られているのは、先端が歪み光を反射する異形の槍だ。星明かりに照らされ、咎霊器特有の禍々しい輝きを放っている。
「相変わらずの物騒な歓迎だな。」彼が槍を軽く肩に担ぎ、険しい目つきで闇の奥を睨む。
「気を抜かないで。」リリシアが柔らかな声で警告を発し、周囲に防御魔法の結界を張る。
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それはすぐに姿を現した。ねじれた四肢と割れた牙が特徴的な咎狂が、木立から姿をのぞかせ、低い唸り声を上げる。赤く輝く瞳がこちらを捕え、殺意の気配が濃くなる。
「アリセア、サポートに回れ。」セラヌスが冷静に指示を飛ばし、槍を構えると同時に前へと踏み出す。
彼の動きは力強く、槍を振るうたびに風を切る音が響く。槍の先端が夜空の星明かりを受け、異様な美しさと凶暴さを同時に放っている。
「ついて来い、化け物め!」セラヌスの叫びに咎狂が反応し、一気に彼に向かって突進してきた。
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アリセアはその隙を見逃さず、リリシアの隣で魔法を発動させる準備を進めていた。右手の刻印が再び疼き、咎の力を溜め込む感覚が身体を蝕む。
「早く……。」アリセアが低く呟くと、刻印の光が一層強まる。
フローリアはその様子をちらりと見て、静かに囁いた。「無理しないで。あなたの力は、時に諸刃の剣になる。」
「分かってる……でも、守らないと。」
フローリアは一瞬目を伏せたが、すぐに自分の咎霊器を掲げた。その刃が星の光を集めるように輝き、次の攻撃の準備を整える。
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セラヌスの槍が咎狂の体を深く貫いた。しかし、その異形はすぐさま再生を始め、唸り声を上げながら暴れる。
「しぶとい……!」セラヌスが苛立ちを隠さずに言う。
その時、リリシアの結界が光を放ち、咎狂の動きを一瞬止める。
「今よ!」リリシアが叫ぶと同時に、フローリアの咎霊器が放った光の刃が咎狂を切り裂いた。
アリセアもすかさず魔法を発動させる。刻印の疼きが最高潮に達し、彼女の魔法が咎狂を最後の一撃で貫いた。
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戦いが終わり、静寂が戻った。セラヌスは槍を肩に担いで吐息を漏らした。
「派手なことをしてくれるな。」
アリセアは震える右手を握りしめながら答えた。「でも、これでしばらくは安全ね。」
リリシアは仲間たちの傷を確認しながら、「安全なんて言葉、この世界では通用しないわよ。」と呟いた。
夜空の下、星の光が静かに彼らを照らしていた。