夕陽が沈みかけ、森の中の遺跡跡に長い影を落としていた。倒れた柱や苔むした石像が静かに横たわり、そこに漂う空気には何か重いものが含まれているようだった。
私たちは疲れ切っていた。この日何度目かの咎狂との戦闘を終え、崩れた壁の陰で短い休息を取っていた。
「ここで少し休むわ。」
リリシアの柔らかい声が響く。彼女が用意した光の結界が、私たちを外界の危険から守ってくれている。その光の中で、私はそっと左腕を見た。
蔦がゆっくりと動いている。その動きは自分の意思で制御しているはずなのに、どこか不安定だった。
「暴走しないで……お願い。」
心の中で呟きながら、私はそっとその動きを抑えた。
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「コンヴァリア、まだ大丈夫?」
アリセアが私に近づき、小さな声で尋ねた。彼女の瞳には心配の色が浮かんでいる。
「ええ、平気よ。」
そう答えたものの、その声には自信がなかった。
再生の蔦は便利な力だ。傷を癒し、仲間を守るための盾にもなる。だが、その力が暴走するとき、私は自分自身をコントロールできなくなる。
「もし暴走したら……私はどうなるの?」
頭の片隅に浮かぶその疑問が、心の奥を冷たく締め付けた。
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休息の時間が終わりに近づいたころ、突然、遺跡の奥から異様な音が響いてきた。
「また来たみたいね。」
セラヌスが槍を構え、険しい表情で声を上げる。
遺跡の陰から現れたのは、ひときわ大きな咎狂だった。異形化が進んだその姿は、人間の面影を完全に失っている。体中から瘴気が立ち上り、その目は虚ろな光を放っていた。
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「ここで止めるしかない!」
リリシアが光の結界を強化し、仲間たちに指示を飛ばす。
私は咄嗟に再生の蔦を展開し、咎狂の足元を絡め取った。だが、その力を解放する瞬間、左腕に鋭い痛みが走った。
「……っ!」
蔦が暴走を始めた。私の意思を無視して、まるで自らの欲望を解放するかのように広がり始めた。
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「コンヴァリア、下がれ!」
セラヌスの叫びが響くが、私は動けなかった。蔦が私の体を縛り、逃げ道を塞いでしまったのだ。
咎狂が吠えながらこちらに向かって突進してくる。私は恐怖で硬直しながら、それでも蔦を抑え込もうと必死だった。
「誰か……助けて……!」
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その瞬間、アリセアの声が響いた。
「私がやる!」
紫の炎が彼女の右手から放たれ、咎狂の進路を遮った。その炎は咎の瘴気を焼き払い、咎狂の動きを一瞬だけ止めた。
続いて、セラヌスが槍を振りかざし、雷の力を帯びた一撃を放つ。雷が咎狂の体に直撃し、その巨体を激しく揺るがした。
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「コンヴァリア、大丈夫!?」
アリセアが私のもとに駆け寄り、蔦を抑え込もうとする。彼女の手から放たれる浄化の力が、暴走する蔦を少しずつ沈静化させていく。
「もう少し……!離れないで……!」
私の声に応えるように、彼女はさらに力を注ぎ込んだ。
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やがて蔦の動きが静まり、私の左腕に戻っていった。その瞬間、私は地面に崩れ落ち、息を荒げながら涙をこぼしていた。
「ありがとう……ごめんなさい……。」
震える声で呟く私を、アリセアはそっと抱きしめた。その温かさが胸の奥に沁みた。
「コンヴァリア、あなたがいなかったら、私たちは危なかった。」
彼女の言葉には一片の疑いもなく、それがかえって私の心を締め付けた。
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セラヌスが槍を肩に担ぎながら言った。
「お前の力が危険なのは分かってる。でも、それを使わなければ俺たちは生き残れない。」
その不器用な言葉に、私は少しだけ救われた気がした。
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日が沈み、夜の静けさが遺跡を包み込む。私は自分の力に対する恐怖を再び感じながら、それでも仲間たちがそばにいることに救われていた。
「私は……もっと強くならなくちゃ。」
その決意を胸に、私は夜空に浮かぶ星を見上げた。