星観測台跡に足を踏み入れた瞬間、空気が変わった。崩れた壁には星座が描かれた古びた彫刻が施され、瓦礫の中から覗く天球儀は長い時間の流れを語っていた。
私はその場に立ち尽くし、無意識に星火の刃を握りしめた。その刃は微かな光を放ち、私の手の中で脈動しているようだった。
「ここは、静かね……。」
フローリアの声が響いた。彼女の目は瓦礫の間から覗く夜空に向けられていた。その視線を追うように見上げると、天井のない観測台から無数の星々が瞬いているのが見えた。
「星の力……それがすべてを変えるはずだ。」
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「アストリス。」
アリセアが私に近づいてきた。その小柄な彼女が星火の刃を見つめる視線には、純粋な疑問とわずかな警戒が混じっているように感じた。
「どうして、そんなにその刃にこだわるの?」
その質問に、胸の奥がざわつく。
「力がなければ、守れないものがある。」
私は短く答えたが、その声には自分でも分かるほどの苛立ちが滲んでいた。
「守る……それは大切なことだと思う。でも、力だけでそれが叶うの?」
アリセアの言葉に、何かが胸を突き刺した。
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私は過去を思い出していた。
星火の刃を手に入れる前、私は無力だった。仲間を守ると誓いながらも、自分の力不足のせいで多くを失った。その記憶が、今でも私を支配している。
「あの時、俺にこの刃があれば……」
その執着が私を突き動かしている。それが分かっているからこそ、アリセアの言葉が胸に響いた。
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突然、廃墟の奥から低い音が響いた。振り向くと、暗闇の中から咎狂が姿を現した。その異形化した体は歪み、虚ろな目は星火の刃に向けられている。
「来るぞ!」
セラヌスが槍を構え、前に出る。
私はそれを制し、星火の刃を構えた。
「ここは俺がやる。」
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咎狂が突進してくる。その瞬間、私は星火の刃を振りかざした。刃から放たれた光が咎狂を貫き、周囲を眩く照らす。
「アストリス! 一人で無茶しないで!」
リリシアの声が聞こえたが、私は耳を貸さなかった。
「これで終わらせる!」
再び刃を振るい、咎狂を追い詰める。その姿は圧倒的で、他の仲間が口を挟む余地すらないように見えた。
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しかし、刃を振るうたびに体力が消耗し、視界が揺れる。星火の刃の力は強大だが、その代償は私自身を蝕んでいく。
咎狂が最後の力を振り絞って突進してきたとき、足が一瞬動かなくなった。
「アストリス!」
アリセアの声が響き、紫の炎が咎狂を包み込んだ。その隙にセラヌスが雷をまとった槍を放ち、咎狂を撃退した。
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「無茶しすぎだ。」
セラヌスが私を睨みつける。その目には苛立ちと心配が入り混じっているのが分かった。
「俺が何をしようと勝手だ。」
そう言い返したが、その言葉には自信がなかった。
「勝手なことを言わないで。」
アリセアが静かに言った。その瞳には怒りではなく、悲しみが浮かんでいた。
「あなたがいなくなったら、誰があなたの代わりをするの?」
その言葉に、胸が締め付けられるようだった。
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咎狂が消え去り、再び静けさが訪れる。星火の刃を見つめながら、私は深く息を吐いた。
「この力は必要なんだ。でも……俺が力に飲まれたら、何の意味もない。」
その言葉に、アリセアは微かに微笑んだ。
「気付いてくれてよかった。」
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夜空に広がる星々が、観測台を穏やかに照らしている。私は星火の刃を握り直し、心の中で決意を固めた。
「この力を正しく使う。それが俺の願いだ。」