瓦礫の街に夜が訪れると、風の音だけが虚しく響く。私は壊れかけた屋内に腰を下ろし、槍を手にしたままじっと目を閉じていた。瞼の裏に浮かぶのは、かつての光景だ。あの時も、自分の力を抑えきれず、仲間を失った――その記憶が、今でも私の胸をえぐり続けている。
「セラヌス、もう少し休んだら?」リリシアの穏やかな声が静寂を破った。
「休む必要はない。警戒を怠るわけにはいかないだろう。」私はそう答えながら、槍を握る手に力を込めた。
リリシアは少しだけ眉をひそめたが、何も言わずに奥の部屋へ戻っていった。その後ろ姿には疲労の色が濃く滲んでいる。刻印の代償だ――分かっている。だが、あえて言葉にはしなかった。
室内に残るのは私と、微かに聞こえる仲間たちの寝息だけだった。
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突然、冷たい風が隙間から入り込み、蝋燭の炎を揺らした。その瞬間、何かが背後にいる気配を感じた。私は振り返り、槍を構える。
「誰だ!」低く吠えるように問いかけたが、答えはない。代わりに、壁の向こうから足音が響き渡った。それは明らかに普通の人間のものではなかった。重量感のあるその音は、まるで生き物そのものが金属でできているかのようだ。
「みんな、起きろ!」私は叫び、全員を叩き起こした。
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仲間たちが次々に駆けつけた時、現れたのは咎狂に似た異形の存在だった。ただ、これまでの咎狂とは何かが違う。瞳には理性の光があり、その動きには冷静な目的性が感じられた。
「何者だ……?」アストリスが静かに呟いた。
「アルカディアの手の者だろうな。」私は答えながら槍を握り直す。その名前を出しただけで、胸の奥に苛立ちが湧き上がった。
咎狂に似たその存在は、私たちを冷たい目で見下ろすと、何かを呟いた。その声はかすかで聞き取れなかったが、次の瞬間、異形が突進してきた。
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私は雷霆の裁きを発動し、雷を纏わせた槍を振り下ろした。激しい轟音が屋内を震わせ、雷光が暗闇を裂いた。その一撃で敵は怯んだが、次の瞬間、周囲の瓦礫が激しく崩れ落ちた。
「セラヌス、制御しろ!」リリシアが叫ぶ。
しかし、私は止められなかった。手の中で力が暴れ、全身を駆け巡る感覚に襲われる。意識が霞み、耳には仲間の声が遠く響く。
「またか……。」自分の呟きが聞こえた。
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「セラヌス!」アリセアの声が意識を引き戻した。彼女は右手の刻印を掲げ、紫色の光で私を包み込むように立っていた。その瞳には、怯えではなく信頼が宿っている。
「あなたは一人じゃない。」彼女の声が、私の心の奥底に響いた。
その一言が、暴走を食い止めた。雷霆の裁きが静まり、私はようやく槍を収めることができた。敵は再び突進してきたが、今度は仲間たちと協力してこれを迎え撃った。
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戦いが終わると、私たちは倒れた異形の残骸を調べた。そこにあったのは、ボロボロになった地図の切れ端だった。
「これ……次の場所を示しているの?」フローリアが呟いた。
だが、地図は部分的にしか残っておらず、何かを伝えるには情報が足りない。
「アルカディアが動いているのは確実だ。」私はそう言いながら、残骸を蹴飛ばした。
仲間たちが肩を落とす中、アリセアが静かに言った。「この地図が示す場所を探さないと……。」
私は槍を握り直し、胸に決意を抱いた。暴走の恐怖は消えない。だが、それに負けるつもりはない――二度と同じ過ちを繰り返さないために。