森を抜けた高台は、遮るもののない星空に満ちていた。空気は冷たく澄んでいて、耳には森のざわめきがかすかに聞こえるだけだった。私は咎霊器「星火の刃」を手に、ぼんやりとその輝きを眺めていた。光の粒が刃先を包むように瞬いている。それは、星々が私だけに囁いているかのようだった。
仲間たちは休息の準備をしていたが、私は距離を取って一人で空を見上げていた。私にとって、星々は逃げ場でもあり、導きでもあった。けれど、この刃を握るたびに、それが呪いであることを思い知らされる。
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「アストリス、また一人で考え事か?」
セラヌスの声が背後から聞こえた。彼女は槍を軽く肩に乗せ、いつものように堂々とした立ち姿だった。
「ええ、少しだけ星を眺めていただけ。」
私は冷静を装って答えたが、内心は揺れていた。彼女に気取られるわけにはいかない。
「星火の刃を手放せる気はないのか?」
彼女の問いに、私は少しだけ苛立ちを覚えた。
「これが私にとっての力だから。」
短く答えると、セラヌスは肩をすくめて去っていった。彼女が何を思ったのか、私には分からない。
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その時、遠くで咎狂の気配がした。冷たい風が吹き、空気が一瞬で張り詰める。仲間たちが一斉に武器を構え、戦闘の準備を始めた。
「来るわ。」
リリシアが静かに告げる。その目には疲労の色が見えたが、決意は揺るがない。
咎狂の姿が森の影から現れる。その異形の体は歪み、まるで憎悪そのものが形を成したようだった。私は星火の刃を強く握りしめた。
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「任せて。」
私は静かにそう告げると、仲間たちを制して前に出た。星火の刃が白く輝き、周囲を照らす。
「アストリス、一人で無理するな!」
アリセアの声が耳に届いたが、私は振り返らなかった。これは私自身の問題。誰にも介入させたくない。
星火の刃が放つ光がさらに強まり、私はその力を敵に向けて解き放った。刃が敵の体を切り裂き、光の閃きが咎狂の黒い影を飲み込んでいく。悲鳴のような音が響き、咎狂は一瞬で消滅した。
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「見たか、私の力を。」
そう呟いた瞬間、視界が揺れ、体が重たく感じた。星火の刃が私の体力を奪い、足元がふらつく。
「アストリス!」
リリシアが駆け寄り、私の体を支えてくれた。けれど、その手の温かさが痛いほど感じられる。
「大丈夫よ。」
私は弱々しく答えたが、自分が大丈夫でないことは分かっていた。
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仲間たちの視線が私に集まる中、私は星火の刃を見つめた。この力が私を強くするはずなのに、なぜだろう。心が重く沈む。
その時、ふと遠くの影に気付いた。森の端で誰かが私たちを見ている。紫の瞳が夜闇の中で冷たく輝いているのが分かった。
「……アルカディア?」
私はその名を口にしたが、気配はすぐに消えた。幻覚かもしれない。それでも、彼女が私たちを監視していることに違いない。
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夜が深まり、星々の輝きが一層増していた。私は再び星火の刃を手に取り、その刃先に映る自分の顔を見つめた。
「この力は、私のすべてを奪うつもりなのか。」
小さく呟くと、冷たい風が吹き抜けた。私の問いに答える者は、星火の刃ですらいない。