荒涼とした灰の砂漠の外縁に立つと、冷たい風が肌を刺すように吹き付けた。日中の焼け付く熱が嘘のように冷え込み、夜の砂漠は一層の静寂に包まれている。しかし、遠くで低い音を伴う稲妻のような光が何度も走り、その度に地面が微かに震えた。あの光と轟音こそが、咎の嵐の前触れだ。
「風が変わってきた……嵐が来るぞ。」
誰に言うでもなく口にしたその言葉に、リリシアが立ち止まった。淡い金髪が風に揺れるのを横目で見ながら、彼女の視線が私に向くのを感じる。彼女の目には、私を気遣う暖かさが滲んでいたが、それが余計に重くのしかかる。
「セラヌス、大丈夫?」
優しい声に反発したい気持ちを抑え、私はただ無言で頷いた。
一方で、コンヴァリアが周囲の砂地を警戒するように視線を巡らせていた。彼女の蔦が微かに揺れ、咎の匂いを敏感に感じ取っているようだった。「嵐が来る前に進むべきか、それともここで耐えるべきか……」彼女の独り言のような声が風に溶ける。
その時だった。突然、視界の隅で黒い影が揺れる。咎狂だ。砂嵐に紛れるように、咎に侵された異形が現れた。やはり奴らが嵐を呼び寄せている。
「やるしかないな。」
私は槍を手に取り、前へと踏み出した。
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咎狂がこちらに向かって突進してくる。砂塵を巻き上げながらのその動きは、獣とも人ともつかない異様なものだ。私は雷霆の裁きを放つ準備を整えた。槍先に電流が走り、青白い光が暗闇を裂く。
「セラヌス、待って!」
リリシアの声が私を止めた。彼女が盾を展開し、咎狂の攻撃を防ぐ。だが、その盾に罅が入るのが見えた。
「一撃で仕留める。それしかない。」
そう言って、私は雷霆の裁きを発動した。雷鳴が轟き、咎狂の胴体を貫いた。奴は砂に崩れ落ちるが、同時に周囲の空気が不穏に震え始める。咎の嵐が、本格的に巻き起こり始めた。
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「このままでは全員飲み込まれる!」
アストリスが叫ぶ。彼女の星火の刃が煌めき、嵐の中心に切り込もうとするも、暴風がそれを押し返す。
「くそっ……!」
私は再び力を集中させた。雷霆の裁きを嵐そのものにぶつけるしかない。この嵐を押し返すには、それしかない。
「セラヌス、やめて!」
アリセアの声が耳に届いた。彼女は霊契の印を押さえながら、必死に私に近づこうとしている。
「俺がやらなきゃ、全員終わりだ!」
私は振り返ることなく力を放つ。だが、その瞬間、頭の中に過去の記憶がフラッシュバックした。
咎狂との戦いの中で仲間を失った瞬間。私が守り切れなかったその光景が、目の前の嵐と重なる。足元が揺れ、意識が遠のきそうになる。
「セラヌス!」
リリシアの声が雷鳴を裂くように響いた。彼女が私の手に触れ、そこから温かさが伝わってくる。その瞬間、暴走しかけていた力が収まり、私は崩れ落ちた。
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嵐が静まったのは、ほんの数分後だった。嵐の中心にあった異常な咎の気配が消え、辺りに静寂が訪れる。
「助かったのは、君たちのおかげだ。」
私は言葉を絞り出しながら立ち上がる。リリシアが肩を貸してくれるのを断ろうとしたが、彼女はそのまま私を支え続けた。
「セラヌス、一人で抱え込まないで。私たちは一緒に戦う仲間なんだから。」
その言葉に何も返せなかった。ただ、雷霆の裁きが自分の中でどれほど暴走しやすいかを思い知り、自分の弱さに打ちのめされていた。
その時、遠くから微かな気配を感じた。闇の中に浮かび上がる黒い影。アルカディアの部下が咎霊器の手がかりを持ち去ったのだろう。私たちは再びその背中を追いかけることになる。