夜風が冷たく頬を撫でる中、私は崩れた星見台の端に立っていた。上空に広がる満天の星々はどこか遠く、冷たい光だけを放ち、この身を覆う咎の影を照らすことはない。星火の刃を手に、私は仲間たちの少し先を歩いていた。その刃先から微かに漏れる光が、私自身の影を乱雑に刻む。仲間と同じ場所にいながら、私はどこか別の世界にいるような感覚を拭えなかった。
過去の失敗――いや、あの選択が間違いだったのかどうか、未だに答えは見つからない。星火の刃は私の手にありながら、いつも問いかけてくる。この力は本当に私のものなのか、と。
「アストリス、少し休んでは?」後ろからリリシアの声が聞こえる。彼女の声は暖かく、けれど同時にどこか母鳥のように心配する響きを帯びていた。
「大丈夫だ。私は、疲れてなんかいない。」
そう言いながらも、刃を握る手がわずかに震えるのを自覚していた。星火の刃を使うたび、力が体を削り取るような感覚がある。それでも、この力がなければ、私はただの過去の亡霊にすぎない。
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星見台の跡地に足を踏み入れた瞬間、異様な気配が辺りを覆った。空気が重く淀み、まるで私たちを押し潰そうとしているかのようだ。咎の嵐が近い――いや、もうすでにその中心にいるのかもしれない。
「何か来るわ。」セラヌスが槍を構え、低く言った。
私は星火の刃を構え直し、仲間たちの前に出る。嵐の中心から、黒い影がうごめく。咎狂たちが姿を現した。歪んだ人型の肉体が、ねじれた爪を突き出してこちらに迫る。
「ここは私が――」声を張り上げた瞬間、刃の光が一際強く輝いた。
力が、溢れる。いや、私が溢れさせているのだ。この感覚を知っている。制御が効かなくなる寸前の、あの不安定な瞬間だ。それでも、手を止めるわけにはいかない。私は――何かを成し遂げなくてはならないのだから。
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星火の刃から迸る光は、まるで嵐そのものを切り裂くようだった。咎狂たちの一群を焼き尽くし、辺りの空気を震わせる。だが、その力は制御を失い、私の周囲にまで余波を及ぼしていた。嵐の風圧が強まり、仲間たちの声が遠くなる。
「アストリス、やめなさい!」アリセアの声がかすかに届く。
だが、やめるわけにはいかなかった。この力を手放したら、私はまた何も守れない存在になってしまう。過去に守れなかった仲間の顔が、刃の光の中で浮かび上がる。
その時、アリセアが私の側に駆け寄ってきた。彼女の手が私の肩を掴む。その手は小さく、だが確かに強い。
「アストリス、このままだとあなた自身が壊れる!」彼女の声は悲痛だった。だが、そこには怒りではなく、何か別の感情が込められていた。
「私は……私は、何も失いたくないんだ。」言葉が震えた。星火の刃が輝きを弱める。その刃先が私の内なる弱さを映し出す鏡のように感じられた。
「だからこそ、力だけに頼らないで。」アリセアの目が私を見つめる。その瞳の奥には、私が失ったものが確かに映っていた。
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嵐が次第に収まり、咎狂たちは静寂の中へと消え去った。私は膝をつき、手の中の刃が鈍く光を失うのを見つめていた。これが私の選択だったのだろうか――力に頼ることでしか前に進めない自分。それでも、アリセアの言葉が心に残っていた。
「頼るものが力しかなかった。でも、君がいるなら、何かが変わるのかもしれない。」私は小さく呟き、冷たい地面に視線を落とした。
彼女はただ微笑んだ。その笑顔はまるで、一筋の星明かりのようだった。