遺跡の出口に向かう道は静まり返り、薄暮の光が残された石壁を柔らかく照らしていた。その静寂が、私たちの緊張をさらに際立たせている。先ほどまでの激しい戦闘の余韻が身体に残り、足取りは重い。それでも私は、歩みを止めることは許されないと感じていた。
輝紋の環がまた脈打ち始める。右手から腕全体に広がる鈍い痛みは、まるで内側から何かが私を引き裂こうとしているようだ。それを振り払うように、私は足を進めた。
「リリシア、大丈夫?」
アリセアが隣で囁く。彼女の瞳には心配の色が濃く宿っていた。私は小さく微笑み、力なく頷く。それ以上何かを言うことはできなかった。
「ここまで来られたのは、あなたたちのおかげよ。」
胸の中で呟く。だが、それと同時に、胸に重くのしかかる思いもあった。私が輝紋の環を使い続ける限り、彼らを守る光を与え続ける限り、私自身の光は少しずつ失われていく。それはこの力を授かった瞬間から覚悟していたことだ。それでも、これほどの苦痛と恐怖が伴うとは予想していなかった。
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遺跡の出口に差し掛かったとき、背後から不穏な音が響いた。低くうなるような咎狂の声が、空気を震わせる。それが近づいてくるのが分かった。
「また来たのか……!」
セラヌスが槍を握りしめ、歯を食いしばる。疲労が蓄積している中での戦闘に、仲間たちの動きも鈍い。それでも彼女たちは踏ん張り、武器を構えた。
私は輝紋の環に手を当て、力を引き出す準備をした。だが、指先が震える。目の前が一瞬暗転し、意識が揺れる。光を放つたびに、私の視界が少しずつ霞んでいくのだ。
「やめて!」アリセアが叫び、私の手を掴んだ。彼女の顔には焦りが滲んでいる。
「リリシア、もう十分よ。私たちだけで何とかするから!」
その声に、一瞬、手を止める。しかし、目の前の咎狂が牙を剥き出しにして襲いかかろうとしているのを見て、私は首を横に振った。
「いいえ、アリセア……これが私の役目よ。」
力を放出するたびに、光の波が咎狂を弾き飛ばす。だが、その光が強くなるたびに私の視界は暗闇に飲み込まれていった。痛みが脳を突き抜け、胸の奥から叫びたくなるほどの恐怖が押し寄せる。
「この光が私自身を消し去る代償でも、あなたたちを守れるなら、それでいいの。」
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戦闘が終わる頃には、私は膝をついて地面に崩れ落ちた。瞼を開けても、ぼんやりとした影しか見えない。周囲の声が遠く聞こえる中で、私は思った。自分が光を失うことで、仲間たちの未来が照らされるのなら、それを受け入れようと。
ふいに、誰かがそっと肩に触れた。アリセアだ。彼女の声が震えているのが分かる。
「こんなに自分を犠牲にしないで……リリシア。私たち、あなたがいないとダメなの。」
その言葉が胸を締め付けた。私の存在が彼女たちにとって必要だと言われることが、これほど嬉しい反面、苦しいことだとは思わなかった。
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やがて、リリシアの輝紋の環は淡く光を放ちながらも、その輝きは以前よりも弱まっていた。それでも私は、彼女たちを守ることをやめるつもりはない。この光が消える日まで、私は仲間の盾であり続けるだろう。
出口から差し込む夕陽が私たちを包む中、次なる目的地である霊峰ルナーモへの道が示された。その先に何が待つのかは分からない。それでも、私は歩みを止めることはできない。この光が彼女たちの未来を導くためにあるのだから。