霊刻の咎(れいこくのとが)   作:くにゅたろ

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第62話: 崩壊する封印

轟音が響いた。

 

神殿が崩れ始めている。

 

私の手の中で、鍵はすでに光を失っていた。封印されたのだ。それなのに——

 

「なぜ……こんなことに?」

 

足元が揺れる。壁に刻まれた古代の紋様が崩れ、紫の光が脈打つ。

 

「封印が……崩壊している!?」

 

リリシアの叫びに、私は息をのんだ。

 

封印の維持には、咎の力が必要だった。

だが私は、その力を封じる決断をした。

 

その結果——神殿の構造そのものが、耐えられなくなったのだ。

 

「走れ!」

 

セラヌスが叫ぶ。

 

「長くは持たねえ!全員、外へ出るぞ!」

 

私は頭を振り、出口へと駆け出した。

 

 

---

 

崩壊の神殿

 

壁が砕け、石の瓦礫が降り注ぐ。

 

神殿の通路はすでに歪んでいた。私たちは、崩れかけた床を踏みしめながら走る。

 

「もう少しで——!」

 

リリシアが先を走る。だが、そのとき——

 

「——危ない!!」

 

天井が崩れる。

 

私は立ち止まる間もなく、衝撃で後ろへ飛ばされた。

 

視界が揺れる。

 

——その瞬間、強い腕が私を引き寄せた。

 

「アリセア!」

 

セラヌスだった。

 

彼は私を庇い、崩れた石の破片を受けながら地面に転がる。

 

「——っ!!」

 

「セラヌス!!」

 

私はすぐに起き上がった。

 

セラヌスの背中に、血が滲んでいた。

 

「大丈夫か!?」

 

「……クソッ、少し、やられたな……!」

 

彼は息を荒げながら、なんとか立ち上がる。

 

私はすぐにリリシアを振り返った。

 

「リリシア、治療を——!」

 

「後だ!」

 

セラヌスが強く言う。

 

「ここで止まれば、全員死ぬぞ!」

 

「……!」

 

私は唇を噛む。

 

彼の言う通りだった。

 

今は、ここから脱出するのが最優先だ。

 

 

---

 

フローリアの選択

 

「こっちよ!」

 

通路の先で、フローリアが私たちを手招きしていた。

 

彼女の腕には、古びた書物が抱えられている。

 

「フローリア、それ……!?」

 

「神殿に残されていた記録よ!まだ読んでいないけど……おそらく、咎の浄化に関するもの!」

 

「そんなもの、持ってきたのか!?」セラヌスが驚く。

 

「当然よ!」フローリアは息を切らしながら答える。「これが、咎の力に関する唯一の手がかりなら、絶対に失うわけにはいかない!」

 

彼女の瞳は強い意志に満ちていた。

 

私は彼女を見つめ、すぐに頷く。

 

「分かった。とにかく、外へ——!」

 

 

---

 

崩れゆく神殿

 

神殿の出口は、もう目前だった。

 

だが、その瞬間——

 

「……っ!」

 

再び、激しい揺れ。

 

「屋根が——崩れるぞ!」

 

セラヌスが叫ぶ。

 

私はすぐにリリシアとフローリアを抱え、全力で出口へと飛び込んだ。

 

「っ!!」

 

次の瞬間——

 

崩落。

 

灰色の塵が舞い上がり、轟音が神殿全体を覆った。

 

 

---

 

静寂の中で

 

——しばらく、何も聞こえなかった。

 

私はゆっくりと目を開ける。

 

空が見えた。

 

「……助かった?」

 

「……ああ。」

 

セラヌスが息を吐く。

 

彼も、私たちと一緒に間一髪で外へ飛び出していた。

 

「危なかった……!」

 

リリシアが胸を押さえる。

 

フローリアは、震える手で抱えていた古文書を見つめていた。

 

「……間に合ったわ。」

 

彼女の瞳には、確かな安堵が宿っていた。

 

私は、神殿を振り返る。

 

そこには——

 

完全に崩れた、瓦礫の山があった。

 

封印は、崩壊した。

そして、神殿はもう、戻らない。

 

私は、拳を握る。

 

「……次は?」

 

リリシアが、私の隣でそっと聞いた。

 

私は、目を閉じる。

 

封印を破ったことで、都市国家間の緊張はさらに高まるだろう。

咎の力を巡る争いも、まだ終わらない。

 

——けれど、私はこのまま引き下がるつもりはない。

 

「……私たちの戦いは、まだ終わらない。」

 

私は、静かに言った。

 

遠く、都市の灯りが揺れていた。

 

新たな戦いの幕開けを告げるように——

 

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