霊刻の咎(れいこくのとが)   作:くにゅたろ

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第67話: 裂け目の向こうへ

遺跡の奥へと続く道は、まるで喉を締めつけられるような重圧に満ちていた。

 

壁に刻まれた古い紋様はすでに浸食され、その形を留めていない。

 

足元には黒ずんだ痕跡が散らばり、過去にここで何が行われたのかを無言で物語っている。

 

「この先にあるのね……」

 

私は静かに呟く。

 

目の前には、ひび割れた岩壁の裂け目がぽっかりと口を開けていた。

 

そこからは紫色の光がほのかに漏れ、鈍い脈動を繰り返している。

 

「咎の裂け目……」

 

フローリアが声を潜める。

 

「かつてここで咎霊器を生み出すための儀式が行われた。その代償として、この空間は"咎"そのものに飲み込まれたのよ」

 

リリシアが剣を握る手に力を込めた。

 

「放っておけば、さらに咎狂を生み出す温床になりかねないわね」

 

「そのために来たんだろ?」

 

セラヌスが槍を肩に担ぎながら、前方を見据える。

 

「だが、アルカディアの部隊も同じことを考えているはずだ。やつらにとっては、ここは"理想郷"への扉ってわけだ」

 

その言葉に、私は唇を噛んだ。

 

アルカディアの目的——それは、この世界を"新たな秩序"へと変えること。

 

彼女は咎の力を完全に受け入れ、都市国家間の不平等や争いを塗り替えようとしている。

 

「なら、やるべきことは決まってる」

 

私はゆっくりと息を吸い込み、前へと歩を進めた。

 

裂け目を通る前に、彼らを止める。

 

 

---

 

薄暗い回廊を進んでいくと、奥から不気味な音が響いてきた。

 

まるで爪で石を削るような、耳障りな音。

 

次の瞬間、影が一つ、ゆっくりと動いた。

 

「来たわね……!」

 

リリシアが即座に前へ出る。

 

その影が完全に視界に入る前に、すでに剣を抜いていた。

 

「迎え撃て!」

 

セラヌスが叫び、槍を構えた。

 

闇の中から現れたのは、人間とは言えない存在だった。

 

黒い肌に縦長の瞳。

 

骨ばった腕は異様に長く、その先端に鋭い爪が光る。

 

「咎狂……いや、それだけじゃない……」

 

私は身構える。

 

この気配は——咎狂だけではない。

 

咎霊器を持った兵士が、闇の奥から現れた。

 

彼らの目には焦点がなく、かすかに紫色の輝きが宿っている。

 

「アルカディアの部隊ね」

 

フローリアが低く呟いた。

 

「彼らは……咎霊器の影響で、咎狂になりかけている」

 

「なら、止めるしかないわね」

 

リリシアが剣を構え、前に出た。

 

 

---

 

「よくここまで来たわね」

 

奥から聞こえてきた声。

 

低く、冷たい。

 

私はその声の持ち主を知っている。

 

闇の中から姿を現したのは、黒と紫を基調とした戦闘服を纏う女——アルカディア。

 

彼女の瞳は紫に輝き、その表情には冷徹な確信が宿っていた。

 

「アリセア。あなたはまた、私の邪魔をするの?」

 

「アルカディア……!」

 

私は剣を構えた。

 

「ここをどうするつもり?」

 

「決まっているでしょう?」

 

彼女は静かに笑う。

 

「この裂け目を完全に開放する。そして、都市国家の"偽りの秩序"を壊すのよ」

 

「そんなことをすれば……!」

 

「すでに、この世界は壊れているわ」

 

アルカディアは足を踏み出した。

 

「私はただ、本来のあるべき形に戻すだけ」

 

彼女の言葉とともに、裂け目の光が一層強くなった。

 

「止めるなら、力を見せて」

 

戦闘が始まる。

 

私は剣を握りしめ、前に出た。

 

ここで負けるわけにはいかない。

 

私たちは、この世界の未来を賭けて戦うのだから。

 

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