遺跡の奥へと続く道は、まるで喉を締めつけられるような重圧に満ちていた。
壁に刻まれた古い紋様はすでに浸食され、その形を留めていない。
足元には黒ずんだ痕跡が散らばり、過去にここで何が行われたのかを無言で物語っている。
「この先にあるのね……」
私は静かに呟く。
目の前には、ひび割れた岩壁の裂け目がぽっかりと口を開けていた。
そこからは紫色の光がほのかに漏れ、鈍い脈動を繰り返している。
「咎の裂け目……」
フローリアが声を潜める。
「かつてここで咎霊器を生み出すための儀式が行われた。その代償として、この空間は"咎"そのものに飲み込まれたのよ」
リリシアが剣を握る手に力を込めた。
「放っておけば、さらに咎狂を生み出す温床になりかねないわね」
「そのために来たんだろ?」
セラヌスが槍を肩に担ぎながら、前方を見据える。
「だが、アルカディアの部隊も同じことを考えているはずだ。やつらにとっては、ここは"理想郷"への扉ってわけだ」
その言葉に、私は唇を噛んだ。
アルカディアの目的——それは、この世界を"新たな秩序"へと変えること。
彼女は咎の力を完全に受け入れ、都市国家間の不平等や争いを塗り替えようとしている。
「なら、やるべきことは決まってる」
私はゆっくりと息を吸い込み、前へと歩を進めた。
裂け目を通る前に、彼らを止める。
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薄暗い回廊を進んでいくと、奥から不気味な音が響いてきた。
まるで爪で石を削るような、耳障りな音。
次の瞬間、影が一つ、ゆっくりと動いた。
「来たわね……!」
リリシアが即座に前へ出る。
その影が完全に視界に入る前に、すでに剣を抜いていた。
「迎え撃て!」
セラヌスが叫び、槍を構えた。
闇の中から現れたのは、人間とは言えない存在だった。
黒い肌に縦長の瞳。
骨ばった腕は異様に長く、その先端に鋭い爪が光る。
「咎狂……いや、それだけじゃない……」
私は身構える。
この気配は——咎狂だけではない。
咎霊器を持った兵士が、闇の奥から現れた。
彼らの目には焦点がなく、かすかに紫色の輝きが宿っている。
「アルカディアの部隊ね」
フローリアが低く呟いた。
「彼らは……咎霊器の影響で、咎狂になりかけている」
「なら、止めるしかないわね」
リリシアが剣を構え、前に出た。
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「よくここまで来たわね」
奥から聞こえてきた声。
低く、冷たい。
私はその声の持ち主を知っている。
闇の中から姿を現したのは、黒と紫を基調とした戦闘服を纏う女——アルカディア。
彼女の瞳は紫に輝き、その表情には冷徹な確信が宿っていた。
「アリセア。あなたはまた、私の邪魔をするの?」
「アルカディア……!」
私は剣を構えた。
「ここをどうするつもり?」
「決まっているでしょう?」
彼女は静かに笑う。
「この裂け目を完全に開放する。そして、都市国家の"偽りの秩序"を壊すのよ」
「そんなことをすれば……!」
「すでに、この世界は壊れているわ」
アルカディアは足を踏み出した。
「私はただ、本来のあるべき形に戻すだけ」
彼女の言葉とともに、裂け目の光が一層強くなった。
「止めるなら、力を見せて」
戦闘が始まる。
私は剣を握りしめ、前に出た。
ここで負けるわけにはいかない。
私たちは、この世界の未来を賭けて戦うのだから。