ソロ専アルバイター、ダンジョン配信者になる-回収屋バイトのわたしは零細配信会社に見初められる   作:こしこん堂

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わたし、転職します ⑥

 わたしがリンクトーカーに入社して1週間。

 

 ついに初仕事の日がやってきた。

 

「…」

 

 社長から仕事の概要を聞き、現地に向かう準備をしているわたしの心はここにあらず。

 

 心臓がバクバクする。気持ちがブレブレで全然落ち着かない。

 

 多分わたしは今…

 

「緊張してる?」

「ひゅいっ!?」

 

 よう華さんに話しかけられて思わず飛び上がりそうになる。

 

「あんなにかっこよく配信できたんだから大丈夫よ!」

「あの時は配信してるなんて思わなかったので…」

「緊張感をもって仕事してくれるなら嬉しい限りさ。さっ、そろそろ出発しな。立川は遠いからね」

 

 今日の配信先は立川ダンジョン。

 

 そして配信内容が…

 

「よう華さん…」

「何?」

「わたし、がんばってよう華さんを守ります。探索者デビュー、絶対成功させましょう」

「ありがとう。一緒に頑張りましょうね」

「はいっ」

 

 よう華さんの探索者デビューだ。

 

「社長」

「なんだい?」

「よう華さんが免許を取ったのって1年前なんですよね?なんで今まで探索してなかったんですか?」

 

 社長曰く、よう華さんは免許を取ってから一度も探索をしたことがないらしい。

 

 この前八王子ダンジョンでやってたみたいに上層の方で他の探索者にインタビューしたり軽く散策する程度だったんだとか。

 

「理由は2つさ。1つは基盤が整うまで聖術のことは隠しておきたかったから。バレたら攫われちまうかもしれないからね」

 

 聖術は扱える人が少ないから詳しいことがほとんど分かってない。

 

 わたしが知ってるのもケガや病気を癒したり

 、攻撃を防ぐバリアを張れるということくらい。

 

 ダンジョンの外でもものすごく役に立つから病院とかで優遇される反面、悪い人にも狙われやすいんだとか。

 

「もう1つはこれという相手がいなかったから。見込んだ奴に声をかけたんだが、どいつもこいつも下心見え見えのスケベ小僧だったんでね。全員お引き取り願ったよ」

「いきなり男の人と組むのは緊張するから、とも子ちゃんみたいな人に出会えて本当によかったわ」

「き、恐縮…です」

 

 これは責任重大だ…。よう華さんのデビュー、絶対に成功させなきゃ!

 

「わたしも、よう華さんみたいに綺麗で優しい人とパーティーを組めてすごく嬉しいです」

「っっ!?」

「ははっ!言うねぇ」

 

 目をまん丸にして顔を赤らめるよう華さん。

 

 何かまずいこと言っちゃったかな?

 

「おしゃべりはここまでだ!そろそろ行きな!」

「はいっ!行きましょう!とも子ちゃん」

「あのっ、待って下さい」

 

 出発に待ったをかけると、二人は不思議そうな視線を向けてきた。

 

 この一週間、一緒に過ごしてやっと決心がついた。

 

 この人たちになら神器の力を話してもいいと。

 

「それなら今すぐ行けます。立川には行ったことがあるので…」

「何の話だい?」

「わたしが手に入れた神器のことは知ってますよね?」

「えぇ。剣が鞘になってる剣よね?」

「見た目はそうなんですけど、そもそもあれは剣じゃないんです」

 

 

 

「あれは…門と鍵なんです」

 

 

「門と…」

「鍵ぃ?」

 

 2人は揃って首をひねる。それだけ言われてもわかんないよね。

 

「見たらわかると思います」

 

 右手を開き、頭の中で強く念じる。

 

「来い」と。

 

「えぇっ!?」

「剣が現れたぁっ!?」

 

 握った手に伝わる確かな手応え。右手には家に置いてあるはずの神器が握られていた。

 

「漂界剣アフラトスク。その力は漂界」

「ひょうかい?」

 

 疑問符を浮かべるよう華さんの前で虚空に向かって剣を構え、

 

「…っ!」

 

 軽く振り下ろす。

 

 頭の中で自分の部屋を思い浮かべながら。

 

「なぁっ!?…こりゃたまげた」

 

 切り裂いたのは何もない虚空。にも関わらず、そこには縦に走った亀裂のようなものが。

 

 亀裂は瞬く間に開き、その先にある場所と事務所を繋げる。

 

 思い浮かべたわたしの部屋に。

 

「うちととも子ちゃんのおうちが繋がったってこと?」

「はいっ。次元の裂け目を作って今いる場所とわたしが行ったことがある場所を繋ぐことができるんです。これならすぐにでも立川にいけます」

「タヌえもんのどこでも障子みたいね」

「これが神器の…。いいのかい?アタシらが喋っちまったら二度とまともには暮らせないよ」

「わかっています…」

 

 アフラトスクの力を理解した瞬間からわかっていた。

 

 この力は【この世界】で使うだけでも途轍もないものだと。

 

 もしこの力が誰かに知られたら、わたしは一生世界中の人たちに追われ続けることになるだろう。

 

【本当の力】を解放すれば逃げることはできる。けど、わたしが育った施設も、家族も、この世界にしかいない。

 

 だからわたしはこの力を誰にも話すつもりはなかった。

 

「お二人はいい人だし、配信をする上で便利だと思ったからお話しました。誰にも言わないでもらえると嬉しいんですけど…」

「もちろんよっ!!」

「ひゃうっ!?」

 

 突然急接近してくるよう華さん。

 

 肌が白くてきめ細かい…甘いお菓子みたいないい匂いがする。

 

「私たちを信じて話してくれたんですもの!絶対誰にも言わないわ!」

「アタシも言わないよ。面倒事はご免だからね」

「ありがとうございます。では、立川に行きましょう」

「えぇっ!」

 

 次元の裂け目を作り、ここと立川の人通りが少ない路地を繋ぐ。

 

 ここなら人目につかないだろう。

 

「じゃあ行ってくるね。おばあちゃん」

「気をつけるんだよ」

「えぇっ!」

「はいっ…」

 

 手を振る社長に手を振り返し、わたしたちは次元の裂け目を抜けて立川へと向かった。

 




本作は女の子同士の愛と絆を描きつつ、ダンジョン配信を通してダンジョンという不思議な世界を描くお話です

百合が好き!ダンジョン配信ものが好き!という方には特におすすめです

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