ソロ専アルバイター、ダンジョン配信者になる-回収屋バイトのわたしは零細配信会社に見初められる   作:こしこん堂

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第三話 わたし、初仕事します!
わたし、初仕事します! ①


「本当に立川なのね…」

 

 裂け目を抜けたよう華さんがキョロキョロと辺りを見回す。

 

 駅周辺の大型商業ビルに立川のシンボルともいえるモノレール。

 

 東京のそれとは違う街並みは間違いなく何度か来たことがある立川のもの。

 

「ちゃんと着けた…」

 

 うまくいったことに胸を撫で下ろし、アフラトスクを事務所に戻す。

 

 手元に呼ぶことができるんだから戻すこともできる。

 

「交通費と時間が浮いちゃった。ありがとねっ、とも子ちゃん」

「どういたしまして。これなら、わたしが先乗りして後で合流するという方法も使えそうですね」

「名案だわ!その時はお願いね」

「はいっ」

 

 スマホで時間を確認する。移動時間を短縮できたから配信開始まで1時間近く余裕がある。

 

「時間、余っちゃいましたね。どうしましょうか?」

「それなら服を買いに行きましょう!」

「いいですね。では、わたしは外で待…」

「何言ってるの!とも子ちゃんのに決まってるじゃない!」

「…へっ?」

 

 わたしの…?

 

「服なら着てますけど…」

「それよそれ!!」

 

 ビシっと指差した先はわたしの服装。

 

 今回のテーマは初心者のダンジョンデビュー

 。

 

 装備も凝ったものや高価なものでなく、被弾しやすい部分にだけ装甲をつけた動きやすく汎用性の高いものになっている。

 

 対するよう華さんの装備も今回のテーマに合わせた魔法使いの汎用装備。

 

 白いローブをメインに据え、指輪やネックレスでアクセントをつけたそれは魔法使いというよりゲームやマンガに出てくる聖女様のよう。

 

「配信なのよ!?もっとこう…コーデを大事にしなきゃ!」

「コーデ…」

 

 社長もそんなこと言ってたっけ?

 

 ただ攻略するだけならなんでもいい。けど、配信はその姿の美しさをも魅せるもの。

 

 だから使いやすさと美しさを両立したコーデを目指すのも大事だって。

 

「コーデはまだ勉強していないので…どうすればいいか」

 

 その言葉を言った瞬間、背筋にゾクリと怖気が走った。

 

「っっ!?」

 

 だって、よう華さんの目が…新しいおもちゃを見つけた子供みたいにギラついてたんだもん。

 

「とも子ちゃん!!」

 

 よう華さんの両手がわたしの両肩を掴む。力つよっ!?

 

「一緒におしゃれコーデを目指しましょう!!」

 

 バジリスクに睨まれたトードって、こういう気分なんだろうなぁ…。

 

 有無を言う間もなく襟首を掴まれ、よう華さんに半ば引きずられながら立川駅近くの商業ビルへと向かった。

 

 

 

「これなんてどうかしら!?」

「ろ、露出が多すぎます…!」

「じゃあこれは?」

「フリフリだらけで動きにくいです…」

「これならどう!?」

「水着じゃないですか!?…って!装備を見るんじゃなかったんですか!?」

「だってぇ…とも子ちゃんかわいいし、スタイルいいからコーデし甲斐があるんですものぉ」

「かっ、かわ…!?」

 

 言われ慣れてない褒め言葉に思わずたじろぐ。

 

 ほぼ同年代の、しかもこんなに綺麗な人に言われるのはすっごくドキドキする。

 

「じゃあ次はランジェリーショップに行きましょう!配信者たるもの、見えない部分にも気を遣わなきゃダメよ」

「あのっ、もうほとんど時間ないんですけど…」

「えっ?…あぁっ!?」

 

 腕時計を確認したよう華さんが驚きの声を上げる。それだけわたしという着せ替え人形に熱中していたらしい。

 

「どうしよう!?これじゃ装備のコーデができないわ!」

「えっと、それはまた次の機会にということで…」

「そうよねぇ…。あっ!そうだわっ!!」

 

 妙案を得た!と言わんばかりに手をうったよう華さんは右手の指にはめていた指輪を外し、わたしの左手の中指にはめた。

 

「これでペアルックってことにならないかしら?」

「お揃いですか…。いいですね」

 

 左手にはめられたのは、わたしの瞳と同じ青い水晶が施されたシンプルな指輪。

 

 これなら戦闘中でも邪魔にならず、簡素な装備に花を添えるさりげないアクセントになりそう。

 

「ありがとうございます。配信、がんばりましょう!」

 

 店を出て立川ダンジョンへと向かう道中、わたしはよう華さんに軽く拳を突き出した。

 

 社長曰くやる気と根性を注入する儀式…なんだとか。

 

「えぇっ!!」

 

 意図を組んだよう華さんが自分の拳をわたしのに軽くぶつける。儀式が効いてきたのか、出発前に感じていた不安や緊張はいつの間にかなくなっていた。

 

 

「こんちゃーっす!リンクトーカーのよう華でーす!!みんなひさしぶりーー!!」

 

 立川ダンジョンに入ってすぐ、よう華さんがドローンを立ち上げて配信を開始する。

 

 ほどなくして、動画にコメントがずらりと並ぶ。

 

 

 ”こんちゃーす”

 ”ちゃーす”

 ”チーッス!”

 ”よう華ちゃん久しぶりー!試験どうだった?”

 ”学生にそれ聞くの禁句だろ”

 ”えっ!?魔法使い装備!?もしかして探索するの!?”

 

 

 よう華さんの装備に気付いたのか、コメントも少しざわつき始めた。

 

 今まで探索したことがないって本当だったんだと改めて実感する。

 

「お気づきの方もいると思いますが、今日の私は一味違います。なんとっ!…探索者デビュー、しちゃいまっす!!」

 

 

 ”ええええええええええっっ!?!?”

 ”神回確定”

 ”有瀬、ダンジョンやるってよ”

 ”装備的に魔法使いかな?ソロは厳しくね?”

 ”誰かいい仲間見つかったんじゃね?”

 ”男なら○す”

 

 

「みなさんも私一人じゃ心配ですよね?ですがご安心ください!なんと今日から…新しい社員が配信に参加することになりましたーー!!」

 

 嬉しそうに拍手をするよう華さん。

 

 

 ”はああああああああっっ!?”

 ”まさかの新人!?”

 ”えっ?誰?ねぇ誰なの!?”

 ”wktk”

 ”男?女?”

 ”男なら殺○”

 ”あんたそればっかぁっ!!”

 

 

「では、早速呼んでみたいと思います!おーい!」

 

 よう華さんがわたしに視線を向ける。ついに出番が来たようだ。

 

「はーい…」

 

 よう華さんの隣に立ち、ドローンの向こう側にいる人たちにゆっくりと挨拶する。

 

「えっと、初めましての方は初めまして。この度、リンクトーカーでダンジョン配信者としてデビューしました辻吹とも子です。その…よろしく、お願いします…」

 

 軽く頭を下げ、コメントを確認すると…

 

 

 ”えええええええええええええっっ!?!?”

 ”はああああああああああっっ!?”

 ”ちょっ、ちょちょちょちょ待てよ!?”

 ”と、とも子ってあのとも子ちゃん!?”

 ”うっそだろおいっ!!”

 ”酒場で仲間募集したら魔王きたレベルの暴挙”

 ”むしろ魔物がかわいそうになる”

 "勝ったな。風呂入ってくる"

 

 

 サプライズは大成功。コメントは大騒ぎになっていた。

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