ソロ専アルバイター、ダンジョン配信者になる-回収屋バイトのわたしは零細配信会社に見初められる   作:こしこん堂

17 / 48
わたし、初仕事します! ③

 ”音量最大にしたら聞こえた”

 ”なんで聞こえるんだよぉ…”

 ”とも子イヤーは地獄耳”

 

 

 よう華さんから離れて初心者用のブロードソードを抜き、よう華さんを背に隠しながら音の方へと向かう。

 

 道を抜け、開けた場所に出たわたしたちの前に現れたのは…ゴブリンの群れと戦う探索者たちだった。

 

『ギャギャーーーッッ!!』

「ふんっ!!」

「こっちに来るぞ!」

「当たれぇっ!」

 

 数は3人。全員それなりの年の男性だ。

 

 1人は剣士、1人は大きな盾と鎧で後衛を守る防衛士、最後の1人はその影から矢を撃って剣士を援護する射手。

 

 構成は無難だけど、息ぴったりで隙のない完成された布陣だ。

 

 多分長年ダンジョンに潜り続けているベテランだろう。

 

『グギャーーッッ!!』

 

 数の利はゴブリンの方にあるものの、3人はそれを経験と連携で埋めているようだった。

 

 敵陣に斬り込んで敵を撹乱させる剣士、動きを止めたゴブリンから正確に仕留める射手、飛んでくる弓や投石から射手を守る防衛士の連係でゴブリンは徐々に数を減らしていく。

 

『ギャ…ギイィヤァーーーッッ!!!』

 

 その数が半数以上減ったところで、ゴブリンたちは武器を捨てて逃げて行った。

 

「やったなガク!」

「お前たちのおかげだ!」

 

 手を取り合い、勝利を分かち合う3人。その姿はまさに勇猛果敢な探索者。

 

「かっこいい…」

 

 敵ではないと判断し、剣を納める。それと同時によう華さんが3人へと駆け出した。

 

「よう華さん!?」

「いやぁー、お強いですねぇ!思わず見惚れちゃいました!」

 

 3人がほぼ一斉に振り返る。その表情は歓迎しているとは言いがたく、どちらかというと疎んでるように見えた。

 

 よう華さんだってわかってるはずだ。それでも話しかけるんだからすごい。

 

「先ほどの戦闘、見させていただきました!あっ、私こういう者です」

「有限会社リンクトーカー…」

「私たちは今、ここで配信をしているんです。もしよろしければお話を…」

 

 よう華さんが言いかけたところでリーダーらしき剣士の人がそれを手で制す。

 

「行くぞ…」

 

 名刺を丁寧に名刺入れにしまい、よう華さんに背を向ける。

 

「あのっ!」

「ここは魔境だ。危機感のない浮ついた子供はさっさと帰れ…」

 

 とりつく島もない、とはこういうことを言うんだろう。

 

 2人はよう華さんに目もくれずゴブリンを解体し始める。

 

 見張りについた防衛士の人がわたしたちに険しい視線を送る。

 

 立ち去れ、と言ってるんだろう。

 

「くだらん。ダンジョンをなんだと思っている…」

 

 剣士の人が誰にいうでもなく呟いた独り言が聞こえてきた。

 

「あははっ、怒られちゃった」

 

 よう華さんの手を取ると、その手はかすかに震えていた。

 

「行きましょう」

 

 わたしはよう華さんの手を引いて来た道を引き返した。

 

 

 "なんだよあいつら感じ悪っ!"

 "古参マウントうぜー"

 "いるよなあぁいうおっさん"

 "ゴブリン狩りくらいでえらそうにすんなよな"

 "はぁ〜、ガン萎えだわぁ"

 

 

 みんなも嫌な目に遭ったと思ったのか、コメントも攻撃的なものが増えてきた。

 

「やっぱり、急に話しかけたのはダメだったわね」

「…」

「ダンジョンに潜る理由は人それぞれ。だからあの人たちを悪く言わないでくれると嬉しいです」

 

 よう華さんがリスナーさんたちを宥める中、わたしは彼らに対して思ったことを口にする。

 

 これも多分、初心者のダンジョンデビューに必要なものだから。

 

「言い方はどうかと思いましたが、あの人たちの言う通りです」

 

 

 "はっ?"

 "なぬ?"

 "バカにされて悔しくねーのかよ!?"

 "言いたいことはわかったけど、もうちょい優しく言えんもんかねぇ"

 

 

「ダンジョンはとても危険な場所です。魔物の素材や多くのお宝が眠っている反面、とても強い魔物や悪い探索者もたくさんいます」

 

 あの人たちは多分、ダンジョンが今よりも危険だった時代を知ってる人たちなんだろう。

 

「あの人たちにとって、ダンジョン配信は危険なダンジョンを面白おかしく配信して見世物にする腹立たしい行為なんだと思います。そう思う人も少なくないですしね」

 

 配信について勉強していたわたしは配信をよく思わない層の存在を知った。

 

 大抵はダンジョンで絡んできて迷惑だとかうるさいっていう理由だけど、あの人たちは覚悟のない子供は帰れと言っていた。

 

 多分、あの人たちなりにわたしたちを気遣ってくれたんだろう。

 

「毎年多くの人が免許を取ってダンジョンに来ていますが、多くの人は怖くなって二度とダンジョンに行かなくなったり、大怪我を負って引退しています。中には帰らない人もいます。だから…」

「だから、動画を見て自分でもやれると安易に思わないで下さい。私だって、1人で潜るのは怖かったんですから」

 

 よう華さんが話をしめる。言いたかったことをほぼそのまま言ってくれるなんて思わなかった。

 

「ごめんね。しめを取っちゃって」

「こちらこそ、1人で長々とすみません…」

 

 

 "深い…"

 "配信で当たり前になってたけど、ダンジョンって怖いところなんだよな"

 "俺のじいちゃん、ダンジョンで片腕なくしたって言ってたな"

 "これはいい初心者向け配信"

 "確かにいるよな。動画見ただけで俺でもできる!って思っちゃうやつ"

 "俺が若い頃、探索者なんてのは仕事にありつけず食い詰めたやつがやるもんだった。ほとんどのやつが帰ってこなかったよ"

 "今って、本当に恵まれてるんだな…"

 

 

 方向転換が功を奏したのか、さっきまでのギスギスした雰囲気は次第に和らいでいった。

 

 そんな折、ついによう華さんのデビューに相応しい瞬間がやってきた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。