ソロ専アルバイター、ダンジョン配信者になる-回収屋バイトのわたしは零細配信会社に見初められる   作:こしこん堂

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わたし、初仕事します! ④

「何か来ます。それなりに大きいです」

「もうツッコまないわ…」

 

 わたしが剣を抜き、よう華さんが杖を構えたところでそれが曲がり角から飛び出してきた。

 

『ピギャアアアアッッ!!!』

 

 さっきのスライムの5倍はあろうかという巨大なスライム、ジャンボスライムが。

 

「大きいスライム!?」

 

 

 "で、出たーーっっ!!?"

 "ジャンボスライム!?"

 "Cランク相当の敵だぞ!大丈夫かジャンボスライム!?"

 "モンスターが心配されてて草"

 "キングゴブリンとSランク級の騎士倒した子が相手じゃねぇ…"

 

 

 ジャンボスライムはスライム同士が合体して巨大化したもの。

 

 ここからどんどん進化して最終的に討伐ランクAのマジェスティスライムにまで成長する可能性がある。

 

 第二形態のエンペラーだと厳しいけど、ジャンボのうちならよう華さんが大活躍できるかも。

 

「よう華さん!相手の体を硬くするってできますか!?」

「えぇ!」

「わたしが仕掛けるのでそれをかけてください!」

「わかったわ!」

 

 ポケットから杖を出して構えたのを見届け、ジャンボスライムに一歩で肉薄する。

 

『ギュギュッ!?』

 

 対応が遅れたジャンボスライムの体に剣を振るい、可能な限り細切れにする。

 

 

 "はやっ!?"

 "剣閃が見えねぇ!"

 "もうとも子ちゃんだけでよくね?"

 "ジャンボスライムって初心者が出くわしたら詰みレベルの強敵なんですが…"

 

 

 バラバラになった肉体があちこちに飛び散り、一見すると倒したかのように見える。

 

 けど、

 

「再生しようとしてる!?」

 

 飛び散った肉体が一箇所に集まって元の形に戻ろうとしていた。

 

「ジャンボスライムは複数のスライムが合体してるので、全ての核を破壊しないと倒せません。真正面から打ち合うととても厄介な相手ですが、今回はとても簡単に倒せます。…よう華さん!」

剛皮付与(スキンシールド)!」

 

 よう華さんが再生しようとするジャンボスライムに杖を向けて詠唱する。

 

 杖の先から放たれた光がジャンボスライムを包み、変化はすぐに訪れた。

 

『ピギュッ!?ピギュギュッッ!?!?』

「再生しなくなった!?」

 

 集まろうとしていた肉体が何かに阻まれているように一体化できなくなったのだ。

 

「ジャンボスライムの弱点は核が複数あることと、一つ一つがスライムと同じくらいの強さしかないということ。なので氷魔法などで肉体を凍らせたりすると元に戻れなくなります」

 

 

 "その発想はなかった"

 "そもそも飛び散らせるのが無理なんですが…"

 "魔法使いなんてほとんど在野にいねーよ!"

 "ってか今の魔法何?氷じゃないよね?"

 "まさか…聖術か!?リンクトーカーはどれだけすさまじい人材を抱えてるんだ!?"

 "スカウトニキ大興奮"

 "えぇっ!?聖術ってあの傷とか病気を治せるっていうレアなやつ!?"

 

 

 元に戻ろうと必死で体当たりを繰り返すも、よう華さんが付与したバリアに阻まれて元に戻れない。

 

 こうなってしまえば後は普通のスライムだ。

 

「合図したら一つずつ解除してください」

「えぇっ!」

 

 よう華さんに合図を送ってバリアを解き、

 

「ふっ!」

 

 ブロードソードで叩き斬って核を壊す。

 

 解除して斬る、解除して斬る…

 

 それを5回も繰り返すとジャンボスライムの核が全て破壊され、活動を停止した。

 

 

 "絵面が地味すぎる…"

 "せこい…"

 "見た目は地味だけど合理的で無駄がない戦法だった"

 "ジャンボスライムって、こんな簡単に倒せるんだ…"

 "簡単に見えるのはこの2人がおかしいからだぞ"

 "よう華さん!是非うちのギルドに入って欲しい!!"

 

 

「ジャンボスライムに…勝った?」

「はいっ。2人の勝利です」

 

 飛び散ったスライムの残骸を密閉瓶にしまい、いっぱいになったそれを水筒のカップに注ぐ。

 

 とろりとした液体で満たされたカップをよう華さんに差し出した。

 

「えっ?何?」

「祝杯です。よう華さんのダンジョンデビュー兼討伐記念に一献傾けましょう」

「えっ、えぇ…」

 

 よう華さんが引きつった笑みを浮かべながらカップを見る。毒もないしまずくないんだけど、いきなり飲むのはハードル高かったかな?

 

「…。ほらっ、大丈夫ですよ」

 

 一口煽って安全性をアピールする。回収屋の仕事に没頭しすぎて飲み水がなくなった時によく飲んでたから慣れっこだ。

 

「飲むゼリーみたいな喉越しでおいしいですよ」

「うぅ…」

 

 

 "よう華ちゃんカワイソス"

 "なんで平然と飲んでるのこの子?"

 "覚悟キメすぎだろ"

 "俺も飲んでみたいな…"

 "やめとけ"

 

 

 一緒に討伐した報酬は山分けする。その思いを込めて分けたんだけど、やっぱり魔物を飲むのは抵抗があるんだろう。

 

「…すみません。これはなかったことに…」

「っっ!!」

 

 よう華さんの手がカップを下げようとしたわたしの手を掴み、手ごと口元まで持っていく。

 

 そして目をかっと見開いたまま、スライムを一息で飲み干した。

 

「はぁっ、はぁっ…!」

「よ、よう華…さん?」

「喉越しプルプルで…おいしいわね!!」

 

 

 "よう華、魔物沼に落ちたってよ"

 "魔物イーター誕生"

 "ダンジョンと魔物食デビュー配信だった"

 "えっ?マジでうまいの?俺今度飲んでみようかな?"

 "魔力が低いと体に異常をきたすって研究あったからやめとけ"

 

 

 肩で息をしながら親指を立てるよう華さん。いつもはかわいくて綺麗だけど、今はなんだかかっこいい。

 

「これで私たちは同じパーティーの仲間、パートナーね」

「っっ!?はいっ!」

 

 パートナー。

 

 探索者を初めてから一度もそんなことを言われたことがなかったから嬉しさが込み上げてくる。

 

 わたしを仲間だって思ってくれる人ができるなんて夢にも思わなかった…!

 

「仲間なら、畏まるのは違うんじゃないかしら?」

「はいっ?」

「スライムおかわり!さんと敬語抜きで!!」

 

 ずいっとカップを突き出すよう華さん。最初は意味がわからなかったけど、その意図がだんだんわかってきた。

 

「はっ…うんっ!いっぱいあるからたくさん飲もうね…よう華ちゃん!」

「よろしい!」

 

 

 "呼び方変更イベキターー!!"

 "絆が深まったって感じするよな"

 "心なしかとも子ちゃんの顔が晴れやかになったな"

 "ようとも尊い"

 "ともよう定期"

 

 

 初めての仲間に酔いしれたわたしたちはしばし配信を忘れ、スライムで祝杯をあげながらダンジョンデビューの成功を称え合った。

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