ソロ専アルバイター、ダンジョン配信者になる-回収屋バイトのわたしは零細配信会社に見初められる   作:こしこん堂

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わたし、初仕事します! ⑤

 ひとしきり飲んで気が済んだところでよう華ちゃんに相談する。

 

「ジャンボスライムを倒したけど、ここからどうする?」

「お宝を探すわ!私たちならもっと先に行ける!でしょう?」

「うんっ!わたしも、よう華ちゃんが一緒なら心強いよ」

 

 祝杯の後始末を済ませ、わたしたちは立ち上がる。

 

 まだ見ぬダンジョンのその先を目指して。

 

「行きましょう!ダンジョンが私たちを呼んでいるわ!」

「うんっ!」

 

 吹っ切れてやる気満々になったよう華ちゃんを背に、わたしたちは更なる冒険を求めてダンジョンの奥地へと進んでいく。

 

 

 "流れ変わったな"

 "よう華ちゃん、こんなアグレッシヴな子だったんだ"

 "本当は冒険したくて仕方なかったのかもな"

 "姫と騎士から相棒になった感じがしていいな"

 

 

「お宝よ!」

 

 道を阻む魔物を倒しながら進んでいると、よう華ちゃんが宝箱を発見した。

 

 ダンジョンといえば宝箱。

誰が何のために置いてるかわからないけど、ダンジョンではたまに見つかる。

 

 中身を抜かれた宝箱はいつの間にか消滅し、また別の場所に出現するというのだから不思議だ。

 

「早速明けてみましょう!」

「待って!」

 

 開けようとするよう華ちゃんを慌てて止める。

 

「ミミックかもしれないから気をつけて」

「ミミック?」

 

 本当は知ってるけど首をかしげるよう華ちゃん。

 

 事前の台本で決めていたやり取りだ。宝箱を見つけたら初心者がミミックに引っかからないようにするための寸劇をやろうという手筈になっていた。

 

 「ミミックは人の欲望につけ込むずる賢い魔物で、宝箱に擬態して開けた人を襲おうとするの」

「それは怖いわね。見分ける方法ってないのかしら?」

「あるよ」

 

 カバンから取り出したのはミミック対策にコンビニで買っておいたサラミ。

 

 それに釣り糸を巻き付け、少し離れてから宝箱の前に放り投げる。

 

「閉じてるミミックは目が見えないから音と匂い、宝箱を開ける感触に反応して襲ってくるの。だからこうやっておいしそうなものを置いておくと…」

 

 予感は的中。

 

 じっとしたまま動かなかった宝箱がわずかに震え、ひとりでにガバっと開く。

 

 開いた宝箱の縁には無数の鋭い牙、そしてその奥には妖しく光る2つの目とぬらぬらとした唾液を纏った舌があった。

 

 

 "うおぉっ!?"

 "マジでミミックだった!?"

 "こんな簡単な見分け方あるのか"

 "俺だったら横取りされるかもって焦って開けてたかも"

 "昔、近所の池でザリガニ釣りしたの思い出したわ"

 

 

「ミミックだわ!」

「ミミックはとても頑丈で物理も魔法もほとんど効かないよ。弱点は…」

 

 ここでさっきも使ったゴブリンの牙の出番。

 

 サラミの匂いを嗅ぎつけ、ごちそうにありつこうと大口を開けたところで…釣り糸を引く。

 

『ギャウッ!?』

 

 突然獲物が動いて驚いた隙を突いて…

 

「っっ!!」

 

 牙を射出。牙は完全に油断していたミミックの舌に深々と突き刺さった。

 

『――――――!?!?!?』

 

 激痛にのたうち回るミミックに足音を殺して駆け寄り、ブロードソードを開いたままの口に突き刺す。

 

「口の中!!」

 

 刺さった傷口から黒い霧のようなものが噴き出し、それに伴ってミミックの力もどんどん抜けていく。

 

 やがて動きが止まり、抜け落ちたミミックの牙と開いた宝箱だけが残されていた。

 

「ミミックは倒すと宝箱になるよ。だから、ミミックは生き物じゃなくて宝箱に取り憑く幽霊なんじゃないかって説もあるね」

「取り憑くだけであぁなるなんてすごいお化けね」

 

 

 "さらっと倒してるけど、ガチでやり合うとかなり強いぞ"

 "倒したら宝箱に戻るからあきらめきれないんだよな"

 "長い手足が生えてて肉弾戦かましてくる個体もいるらしい"

 "なにそれキッショ!?"

 

 

「「さぁっ!気になる中身は…!!」」

 

 よう華ちゃんとセリフを合わせ、宝箱を覗き込む。

 

 ダンジョンの宝箱は何が入ってるかわからない。

 

 薬草だったりダンジョンでしか見つからない謎のコイン、【ギド】だったり…。

 

 たまに武器とか防具みたいな当たりも入ってる。

 

 期待と興奮に心を躍らせながら覗いた先には…

 

『ミュイッ!』

 

 手のひらサイズのミミックが入っていた。

 

「「はっ…はいいいいいっっっ!?!?」」

 

 

 "ミミックの中にミミックぅーーっ!?!?"

 "最悪のマトリョシカだな"

 "とも子ちゃんマトリョシカ運高くない?"

 "これってミミックの幼体か!?"

 "魔物の幼体なんて聞いたことねーぞ!"

 "また貴重な映像きた!?"

 "かわいいーーーー!!!"  

 

 

 コメントも驚き一色だ。こんなものが出てきたんだから無理もない。

 

「魔物の子供なんて初めて見たわ!」

「わたしも…」

 

 世界中にダンジョンが現れて80年近く経ってるけど、魔物の子供を見たという情報はほとんどない。

 

 ダンジョンの奥底で育てている、成体になったものだけがダンジョンに現れる。

 

 色んな説や噂があるけど、未だにはっきりしたことがわかってないのが実状だ。

 

 そんな魔物の子供が今、目の前に…

 

「もしかしたらこの子の親だったのかもしれないわね」

「でも、さっきのと全然違うよ?」

 

 つぶらな瞳でわたしたちを見上げるミミックはさっき倒したのとは見た目が違う。

 

 まず、宝箱に擬態してるんじゃなくて宝箱に入っている。

 

 黒いスライムのようなゼリー状の塊につぶらな瞳と口がついたようなそれにはミミックのような長い舌も牙もない。

 

 ちょこんと伸びた八重歯はある。

 

 それがガチャポンのカプセルのような丸い形の宝箱に収まっていて、蓋の部分を帽子のように被っている。

 

 こんなミミック今まで見たことがない。

 

 向こうもこちらを認識してるはずなのに、襲ってくる様子もない。凶暴なミミックではありえない反応だ。

 

「どうしよう…?」

「決まってるわ!!」

 

 力いっぱいに宣言したよう華ちゃんは宝箱に手を入れてミミックを拾い上げた。

 

「うちで育てましょう!こんなところにいたら他の魔物に食べられちゃうわ!」

 

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