ソロ専アルバイター、ダンジョン配信者になる-回収屋バイトのわたしは零細配信会社に見初められる   作:こしこん堂

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第四話 わたし、妹がいます!
わたし、妹がいます! ①


「それでは、よう華のダンジョンデビューととも子の初仕事の成功を祝して…かんぱーーい!!」

「かんぱーい!!」

「かんぱーい…」

「…乾杯」

 

 アフラトスクで事務所に戻ったわたしたちは今、社長が用意してくれたおでんを囲んで細やかな祝杯をあげている。

 

「はむっ。…おいしいです」

「そりゃよかった」

『ミー!』

「ミミちゃんも気に入ったみたいね!」

 

 はる巳とよう華ちゃんがミミと名付けたミミックも一緒に。

 

「そのミミック…!今日の配信に出てきた魔物の子供ですよね?」

「はる巳さんも見てくれてたの!?」

「もちろん。姉さんが出る配信は初めての時からずっと追っています」

「最初から!?」

 

 あの時から見てたんだ…。コメントとか全然見てなかったから気づかなかった。

 

「ミミちゃんのこと、できれば秘密にしてもらえないかしら?ダンジョンから魔物が出たって知られたらパニックになっちゃうかもしれないし、この子が危険な目に遭うかもしれないから…」

「神器の力も秘密にしてくれると嬉しいな」

「うん。約束する」

「ありがとう!」

 

 安心したらお腹減ってきちゃった。

 

「んむんむ…。お、美味しい…!!」

 

 よう華ちゃんが楽しみだというだけあって社長のおでんはまさに絶品。

 

 色んな具材の出汁が溶け込んでるのに雑味がない澄んだ出汁、その出汁をいっぱい吸って茶色く染まってるのに中は半熟トロリな玉子、ホロホロになるまで煮込まれた旨味たっぷりのスジ肉…。

 

 どれを食べてもおいしくてついつい箸が進んじゃう!

 

「色々と言いたいことはあるが…まずはダンジョンデビューお疲れさん。2人のおかげで登録者とフォロワーもうなぎ登りだ」

「本当!?大成功ねっ!とも子ちゃん!」

「うんっ。うまくいってよかったよ」

「…で?なんだって泰征の主席様がここにいるんだい?」

「姉さんの妹だからです」

 

 淡々と答えながら、出汁がシミシミの大根を割って食べるはる巳。

 

 わたしと院長先生以外には敬語なの変わってないなぁ。

 

「妹ぉっ?」

「はいっ。といっても、血は繋がってないんですが…」

「私達は同じ施設で育ち、義理の姉妹となりました。血の繋がりはなくとも、私は姉さんを実の姉だと思っています」

「わたしもだよっ」

「姉さんっ!」

 

 抱きついてきたはる巳を受け止める。

 

 泰征に通っててほとんど会えなかったからか、昔より甘えん坊になってる気がする。

 

「お前さんら、やっぱり辻吹モン次のとこの子かい?」

「…っ!?院長先生を知ってるんですか!?」

「よーーく知ってるよ。モン次はアタシの仲間だったからね」

「えぇっ!?院長先生ってそんなにすごい人だったんですか!?」

 

 昔は探索者をやってたって言ってたけど、まさかSランクの社長とパーティーを組んでたとは思わなかった。

 

「知らなかったのかい?」

「院長先生はあんまり自分のことは話さないので…」

「そうかい。それにしてもあのジジイ、子供らにどんな教育してんだい?」

「Sランク相当の実力者と、飛び級でAランクになった泰征の首席卒業生が一緒の施設育ちだなんて奇跡みたいな話よね」

「…飛び級?」

 

 わたしが首を傾げると、はる巳はポケットからパスケースを取り出してわたしに見せてくれた。

 

「卒業前に試験を受けたの」

 

 はる巳が見せてきたのは自分の探索者免許。そこには確かにAランクと書かれている。

 

「はっ…ええええええええっっっ!?!?」

『ミミィッ!?』

「ご、ごめん…。はる巳Aランクになったの!?」

「うんっ。先生に薦められてね」

「でも、はる巳ってわたしと同い年でしょ?免許って18歳からじゃなかったっけ?」

 

 詐称してたわたしが言うのもなんだけど。

 

「探索者養成学校では条件つきでダンジョンに立ち入れる仮免許がもらえるの。それで実績を積んで試験に合格すれば高ランクからスタートできるんだよっ」

「そ、そうなんだ…。すごいねはる巳」

「すごいなんてものじゃないわっ!Aランクへの飛び級なんて世界的に見てもとんでもない偉業よ!」

「はぇー…」

 

 探索者養成学校の最高峰、泰征学園に入学しただけでもすごいのに首席卒業でAランクに飛び級って…。まるでマンガの主人公だ。

 

 はる巳は、わたしの妹は想像以上に遠くに行ってしまったらしい。

 

「本当においしい…。日本食は久しぶりなので、こんなにおいしいおでんが食べられてとても嬉しいです」

「久しぶりって…、はる巳さんどこかに行ってたの?」

「つい数日前まで卒業旅行でアメリカに行っていました。といっても、現地のダンジョンを巡るだけでほとんど観光はしていませんが」

「アメリカ!?いいわねっ!」

「それ体よく使われただけじゃないのかい?」

 

 アメリカかぁ…。生まれてこの方日本を出たことがないわたしにはとんと縁のない国だ。

 

 お金が貯まったら見聞を広めるために海外旅行、なんてのもいいかもしれない。

 

 その時はリンクトーカーと施設のみんなとも一緒に行きたいなぁ。 

 

『ミミィーッ!』

「ミミちゃんは玉子と練り物が好きみたいね。でも、野菜も食べなきゃだめよ?」

『ミイィ…』

「大根も気に入ったみたいね」

 

 そこで会話が途切れ、しばらく鍋をつついていると不意に社長が口を開いた。

 

「お前さん、これからどうするんだい?」

「どう、とは?」

「ラブレターはもらってるんだろう?」

「はいっ。卒業が決まってからは様々なギルドの人たちが代わる代わる押し寄せてきました。政府筋のギルドや海外からも声がかかりましたね」

「はる巳さんみたいな人が入ったら百人力だものね」

「ですが、私の就職先は既に決まっています」

 

 はる巳、就職するんだ…。飛び級でAランクになったんだからそれを活かさない手はないよね。

 

「私は…」

 

 そこで言葉を切ったはる巳の両手が私の腰に回る。そして、社長をまっすぐ見据えて堂々と宣言した。

 

「私は姉さんがいるこの会社に就職します!!」

「…はっ、はいいいいいっっっ!?!?」

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