ソロ専アルバイター、ダンジョン配信者になる-回収屋バイトのわたしは零細配信会社に見初められる   作:こしこん堂

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わたし、妹がいます! ④

 ”こんちゃーっす”

 ”こん茶”

 ”えっ?ここどこ?ダンジョンじゃないよね?”

 ”おぉっ!とも子ちゃんと…はる巳ちゃん!?”

 ”リンクトーカーに入ったって本当だったんだ!”

 

 

「なんの真似ですか?」

「証人は多い方がいいでしょ?許可ならおばあちゃんが取ったから安心して」

 

 いい宣伝になるって、こういうことだったんだ。

 

 流石社長。抜け目ないなぁ…。

 

「今日私たちは…泰征学園に来ていまーーっす!!」

「こ、こんちゃー。とも子でーす」

「初めまして。この度リンクトーカーに入社した辻吹はる巳です」

 

 

 ”とも子ちゃんこん茶”

 ”表情一つ変えない塩挨拶…。沁みるぅ~!”

 ”マジでリンクトーカーに入社してたんだ…”

 ”聖術士に神器保有者にAランク探索者…。戦争でもおっぱじめる気か?”

 ”ギルドのスカウト垂涎ものの光景だな”

 

 

 はる巳がリンクトーカーの一員として初登場したことでコメントは大盛り上がり。

 

 同接とコメント数がすごい勢いで跳ね上がっていく。

 

「今回はなんと!泰征学園から案件を受け、とも子ちゃんとこちらの生徒、えみ里ちゃんが親善試合を行なうことになりましたーー!!」

 

 

 ”イェーーーーー!!!”

 ”フゥーーーー!!”

 ”ふぁっ!?泰征の生徒と試合!?”

 ”泰征って探索者の東大ってくらいのエリート校だろ?流石のとも子ちゃんでも厳しくね?”

 ”はる巳ちゃんは卒業までにドラゴン倒したらしいぞ。そんなのの後輩とか絶対強いじゃん”

 

 

 よう華ちゃんうまい…!!

 

 はる巳の進退をかけた決闘なんて言ったら最悪炎上してうちと泰征双方が被害を受ける危険性がある。

 

 それを回避しつつ多くの証人と視聴者を集めた手法に舌を巻いていると、えみ里さんがさっさと背を向けてどこかに行こうとしていた。

 

「着替えが済み次第勝負を開始します。その証人が吉報を証明することを祈っていますよ」

 

 

 

「それではこれより、辻吹とも子選手とえみ里選手の親善試合を始めたいと思います!」

 

 防具に着替え、訓練場の真ん中で相対するわたしたち。えみ里ちゃんも気合十分なようで、湧き上がる闘志が防具越しに伝わってくる。

 

「ルールは簡単!相手を戦闘不能にするか降参させた方が勝ちです!双方、異論はありませんね?」

 

 レフェリーのよう華ちゃんにわたしたちはほぼ同時に頷く。

 

「姉さーーん!がんばってーー!!」

 

 

 ”声たかっ!?”

 ”今の声誰っ!?”

 ”えっ!?今のはる巳ちゃん!?”

 ”3オクターブくらい声高くなってんだけど!?”

 ”隠しきれないお姉ちゃん愛”

 ”禁断のとも×はる”

 

 

 はる巳の声援に片手を挙げて応える。

 

 見ててねはる巳。お姉ちゃん、絶対勝つから…!

 

「防具と魔力の防護があるとはいえ、まともに当たればただでは済みません。骨の一本、二本はお覚悟を…」

「手合わせ、よろしくお願いします」

 

 死力を尽くして戦う相手に一礼し、木剣を構える。

 

 この前の配信で使った初心者用のブロードソードがそのまま木になったようなそれは鉄の剣よりも軽くて振りやすい。

 

「…」

 

 一瞬のようで永遠にも思える刹那の中、わたしたちは睨み合ってその時を待つ。

 

 よう華ちゃんが片手を大きく掲げ、それを勢いよく振り下ろした。

 

「始めっ!!」

 

 開始宣言と共に頭を押さえながら逃げるよう華ちゃんを目で追っているうちに、えみ里さんはわたしに肉薄していた。

 

「せいっ!」

 

 駆けた勢いと全身のバネを加算した重厚な横薙ぎが後ろに跳んだわたしの防具を掠める。

 

 

 ”はやっ!?”

 ”とも子ちゃんも早いけどえみ里ちゃん?も相当なスピードだぞ!”

 ”目で追いきれねぇ…”

 ”桂ぁっ!今何回剣振った!?”

 ”どっちもわからん。それだけだ”

 

 

 その細身のどこにそんな力があるのかと思うほど早く重い斬撃を次々と繰り出すえみ里さん。

 

 この前戦った神器の騎士と違って一合一合にきちんと体重が乗っていて重い。まともに受け続けたら手が痺れちゃうかも。

 

「どうしました!?守ってばかりでは勝てませんよ!!」

 

 闘争で昂ぶっているのか、吠えるような絶叫が訓練場に響く。

 

「どんなものかと思っていましたが、期待外れもいいところです!」

 

言わせておけば…!

 

 鍔迫り合いになり、力を込めて体ごと押し込んでくるえみ里さん。

 

 その最中、ドローンに拾われない程度の小さな声で囁いてきた。

 

「あなただってわかっているのでしょう?」

「…?」

「先輩とあなたとでは最早住む世界が違うのです。姉であるならば、妹のために身を引くべきではありませんか?」

 

 はる巳の将来や今後の暮らし向きのことを考えるなら、うちをやめてもっと稼ぎがいい安定したギルドに入った方がよほどためになる。

 

 わたしがそう言えば、多分はる巳はそうするだろう。

 

 でも、どういうわけだかこれっぽっちも…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 はる巳がわたしから離れたくないとリンクトーカーに入社してきたように、わたしも住む世界が変わってもなお、わたしを慕ってくれる彼女と離れたくないらしい。

 

 よう華ちゃんたちはわたしを解き放ってくれたのに、当のわたしはためにならないとわかっていながら私欲のために黙認している。

 

「二人みたいにはなれないなぁ…」

「はいっ?」

 

 この選択が間違いで、はる巳と一緒にいることが不正解だったとしても…()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「これ、無駄口を競う勝負でしたっけ?」

「っっっ!!!」

 

 えみ里さんの攻撃がより重く苛烈になり、どれだけ距離を取ってもすぐに詰めて斬撃の雨を浴びせてくる。

 

 なるほど…。

 

 技量と実力はかなりのものだけど、心の方はまだまだ発展途上と見た。

 

 それならもっと…()()()()()

 

「らぁっ!!」

 

 重い上段斬りを受け止め、鍔迫り合いの格好に持ち込む。

 

 こっちだって内緒話しちゃうもんね。

 

「初めて会った時から、わたしのこと敵視してましたよね?憧れの先輩を取られた気になってたんですか?まぁ、最初からわたしのはる巳なんですが…」

「…」

「はる巳がわたしを応援した時、すっごく嫌そうな顔してましたよね?」

「…めろっ」

「はる巳はそんな風に接してくれなかったんですか?あぁっ、そうだった。あの子、わたし以外にはずっとあんな調…」

「黙れえええええっっ!!!」

 

 ついに敬語が消え、怒り狂った野獣の如き殺意が牙を剥く。でも、わたしからすればさっきまでのえみ里さんの方がよほど怖い。

 

 【挑発】

 

 魔物にも人間にも効く魔力を使わない魔法だ。

 

 相手の勘所を逆撫でして逆上させ、正確な判断能力を奪う。

 

 口にすればせせこましい小細工。けど、そういうのが一秒の油断で命を落とす戦闘で役に立つ。

 

 現に今、えみ里さんは怒りのあまり体力の温存を考えられなくなっている。

 

 狭まった視野では単調な攻撃しかできず、それをかわすのは実に容易い。

 

 

 ”こえぇっ…”

 ”さっきよりスピード上がってんじゃん…”

 ”めちゃくちゃキレてんぞあれ”

 ”なんでとも子ちゃん平然と避けてんの?”

 ”Harumi,えみ里さんは今、勝ちを急いて視野が狭まっています。そのせいで単調な攻撃しかできず、それを容易くかわされてますます怒るという悪循環に陥っているものと思われます”

 ”解説助かる”

 ”って!この解説最初の配信でちょいちょい出てたやつじゃん!あれはる巳ちゃんだったの!?”

 

 

 ただ勝つだけなら挑発なんて必要はない。じゃあなんでやったのか?

 

 自分でも不思議だったけど、ついさっき答えが出た。

 

 わたしは多分…()()()()()()()()()()()

 

 折角再会できたはる巳を引き離そうとするこの人たちに。

 

 なのに、思考は沸騰するどころか目の奥が痛いくらい冷えている。どうやら自分はブチ切れたら冷静になっていく人間だったらしい。

 

「はああああああああっっっ!!!」

 

 わざと晒した隙に瞬時に反応し、木剣を腰だめに構えて突きを繰り出すえみ里さん。

 

 既に疲れが溜まっているのか、剣にキレがなく随分遅い。

 

「…そこっ」

 

 迫る突きを完全に見切って最小限の動きでかわし、手の甲に木剣を振り下ろす。

 

「くぅっ!」

 

 手を打たれた痛みで木剣を握る手が緩む。その一瞬の隙をついて木剣を引き抜いて奪い取り…

 

「…っ!」

 

 奪い取った木剣を反回転させて柄を握り、一刀を首筋に、もう一刀を心臓に突きつけた。

 

「続けますか?」

 

 武器を奪われ、急所に剣を突きつけられたことでようやく冷静さを取り戻したんだろう。

 

 そのせいで体力の限界に気付いたのか、次第に息が荒くなり、力が抜けたように訓練場の床にへたり込んだ。

 

「ま、参り…ました」

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