ソロ専アルバイター、ダンジョン配信者になる-回収屋バイトのわたしは零細配信会社に見初められる   作:こしこん堂

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わたし、謎を解明します! ③

 こちらを品定めするような捕食者の目がわたしたちを捉える。

 

 こっちの鬼と同じく、向こうの鬼も人間を食べるようだ。

 

 この鼻が曲がりそうな悪臭はその犠牲者のものってわけか。

 

『ミィッ…』

「大丈夫よ。ミミちゃん」

 

 怯えたミミがよう華ちゃんのバッグの中に隠れる。最初に拾ったからか、すっかりよう華ちゃんに懐いてるなぁ。

 

『どいつもうまそうだなぁ。兄貴んとこに持ってく前に一匹くらい…』

 

 指一本が丸太くらい太い巨木のような腕をカヤさんに伸ばす。

 

 でも、その手が彼女を掴むことはない。わたしが何もしなくても、先んじて動いた子がいるからだ。

 

『なぁっ!?』

「はる巳ちゃんっ!?」

 

 その指を片手で掴んで止めたのははる巳だった。

 

『ぐっ!このっ!う、動かねぇ…!?どうなってやがる!?』

 

 はる巳の手から逃れようと力を込める鬼。押したり引いたりして頑張ってるみたいだけど、はる巳の拘束は全く揺るがない。

 

「私に任せて。入社してからいいとこ見せてなかったしね」

「いいよ。やっちゃって」

「やっちまいなぁっ!!」

 

 許可を得たはる巳は鬼を睨みつけながら指を握る手にどんどん力を込めていき…指を骨と爪ごと握りつぶした。

 

『があああああああっっっ!?!?』

 

 指を押さえ、痛みに呻く鬼に追撃が入る。

 

「せぇいっ!!」

 

 拳を握って跳躍し、膝の皿に渾身の正拳突きを見舞う。

 

 魔物と戦う際、攻撃を避けた方がいい部位が骨だ。

 

 魔物の骨は人間のそれよりもはるかに硬いことが多く、よく研いだ鉄の剣でも全く歯が立たないからだ。

 

 その骨を正面から、しかも生身の拳でなんて普通なら自殺行為だ。

 

 はる巳の怪力が普通の範疇に納まれば、の話だけどね。

 

『ぐげええええっっ!!!』

 

 一分の狂いもなく放たれた拳は膝の皿の真芯に当たり、お煎餅が割れるような音とともに骨を粉砕した。

 

『あああああっっっ!!!いてぇっ!いてぇよぉ…!!』

 

 膝を砕かれ、立っていられなくなった鬼の頭へと跳躍したはる巳が角の中頃を掴む。

 

「おおおおおっっ!!!」

 

 指が食い込むほどの力で角を握り、踏ん張りがきかないはずの空中で角を頭ごと投げ飛ばした。

 

『がぁっ!!』

 

 鬼が地面に思いっきり頭を打ちつける。着地したはる巳は容赦なく角を両手で掴み、力いっぱい振り回し始めた。

 

「はあああああっっっ!!!」

『おああああああっっ!?!?』

 

 3メートルはあろうかという巨体が地面を離れ、ハンマー投げのハンマーのようにぐるぐると回っている。

 

 はる巳の戦闘スタイルはニュースや雑誌の特集で見て知ってたけど、生で見る迫力は段違いだ。

 

 回転数が増えれば増えるほど鬼を振り回す速度は増していき、

 

「そりゃああああああーーーっっ!!!」

『うわぁーーーーっっ!!』

 

 ついには鬼を門の向こうへと放り投げた。

 

「凄まじいね…。まさに怪力乱神だ」

「むしろ鬼の方が可哀想だったわ…」

『ミィーッ!』

 

 普段の物静かなはる巳からは想像もつかない豪快な戦いっぷりを呆然と見ていたわたしにはる巳の一喝が飛ぶ。

 

「姉さん!!」

「あっ!」

 

 慌てて門を閉じ、アフラトスクをしまう。門が消えたことで竹林は平穏を取り戻した。

 

 悪い夢だったんじゃないかとも思ったけど、はる巳の一方的な蹂躙の巻き添えを食らった竹がなぎ倒されていることがあれを現実だと証明してくれた。

 

「胸がスカっとする戦いっぷりだね!アタシの若い頃を思い出すよ!」

「こんなにかわいくなかっただろ…」

「あんだって!?」

「さっすが【狂腕(きょうわん)のフェアレディ】!かっこよかったよ」

「もぅっ。その呼び方やめてよ」 

 

 はる巳が不満そうに唇を尖らせる。

 

 狂腕のフェアレディとはメディアが名付けたはる巳の二つ名だ。

 

 ハンカチ王◯とか二刀流みたいなの。

 

「もう大丈夫、なのよね?」

「うんっ。門を閉じたからもう来れないはずだよ」

「こんなことになってしまったけど、ボクが住んでいた世界にいつでも帰れることがわかってなによりだ」

 

 カヤさんが門があった場所を見つめながらしみじみと呟く。

 

 カヤさんの世界にしかいない鬼が門を抜けてきたということは、門がカヤさんの世界と繋がっていたことを意味する。

 

 もう一度開けばカヤさんは帰れるというわけだ。

 

「では、気を取り直してもう一度…。カヤさん」

「なんだい?」

「ロク郎さんに言っておくことはありませんか?多分、これが最後になると思います」

 

 カヤさんが元の世界に帰ったら、【カヤさんという道標】を失ってしまう。

 

 そうなったらカヤさんの世界に行ける可能性はとてもとても低くなるだろう。

 

 それこそ、宝くじで5億とか当てる確率よりもずっと低い。

 

「言いたいこと、ねぇ。そうだな…」

 

 あごに手を当てて考え込むカヤさん。しばらくして妙案が浮かんだのか、あっと声を上げて手を叩いた。

 

「特にないかな?だって、トモコがいればいつでも帰れるんだろう?だったら、無理に帰らなくてもいいんじゃないかな?」

「はっ?」

「へっ?」

「…はいっ?」

 

 そ、その発想はなかったぁーーーっっっ!!!

 

 そうだよ!

 

 カヤさんを帰せることがわかったんなら今帰らなくていいんだ!

 

 なんでこんなことに気づかなかったんだろう?

 

「いいよね?ロクロウ」

「お前がいいなら構わんぞ…。異世界が実在するってこともわかったしな」

「でも、それだとここにいられる時間はかなり短くなるな。もっと観光とかしておいた方がいいかも…」

「いつまでいようと思ってるんですか?」

「トモコが死ぬまでだから…大体6〜70年くらいだね。ボヤボヤしてたらあっという間だ」

 

 だからスケール!!

 

 カヤさんにとってのわたしの寿命って、時間がタイトな観光ツアーくらいのものってこと? 

 

「それとマキエ。君にお願いがあるんだ」

「お願いぃっ?」

 

 

 

「ボクを君の会社で雇って欲しい。配信者っていうのをやってみたいんだ」

 

 

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