ソロ専アルバイター、ダンジョン配信者になる-回収屋バイトのわたしは零細配信会社に見初められる 作:こしこん堂
【迷宮組合 監査課オフィス】
辻吹とも子
5月21日生まれ 18歳
赤ん坊の頃にダンジョンで保護され、辻 吹モン次が経営する児童福祉施設【流星園】で育つ
15歳で蒐集会社明井に就職。以降は三年ほどそこに勤務し、現在はダンジョン配信者として有限会社リンクトーカーに所属
「見れば見るほどわからんな…」
穴が空くほど見てきた「監査対象」のプロフィールを改めて見返しても新情報は舞い込んでこない。
「わかったのは明井の横領と免許取得の年齢詐称くらい」
明井の件は先日ガサ入れして社長に横領、脱税等の容疑ありと報告した。
その件で手柄を立てられたのは良かったもが、肝心の辻吹とも子の情報はほとんど見当たらなかった。
神器を手に入れたのが退職の前日だというのだから無理もないが。
「年頃の娘は本当に分からん…」
うちの娘を想像して一人ごちる。妻は乙女心がわからないからだと言っていたが、そんな男に引っかかった自分はどうなんだと言いかけたのをグッと堪えたのは偉かったぞ俺。
「この経歴で何故Sランク相当の守護者を倒せた?あの神器の力は何だ?」
彼女の神器の力を明らかにする。それが今課せられている業務の一つだ。
そんなもん黒スーツの諜報員でも派遣して直接聞けばいいじゃないかって?それができないのがこの国の欠点であり…美徳だ。
「神器所有者にはその取得と能力を報告する義務がある、なんて法があれば楽なんだけどなぁ」
「そんなレアケースを想定した法律なんてありませんよ」
独り言に言葉が返る。振り返ると二つ分の紙コップを持った若い男性、後輩の瀬尾くんが立っていた。
「お疲れ様です。一ツ橋先輩」
「サンキュー。そっちはなんかわかった?」
「参考になるかは分かりませんが、不可解なデータがありました」
そう言って渡してきた資料にはICカードの使用履歴が。
「ふぅん。…はっ?なにこれ?」
「自分も驚きました」
その資料からはどう見ても片道、最悪の場合交通機関を全く使用せず遠方に移動した経歴が読み取れた。
最近は磁気定期がなくなってICで統一されたおかげで足取りの追跡が楽になった。
少し前からは考えられない進歩だ。
「わざわざ切符で移動したってことはないよなぁ…。車は?」
「これらの時間帯に駐車場から動いた形跡は一切ありません」
「となると…遠方への移動が神器の力か?」
「なっ!?もしそうであれば、一個人が持っていい力ではありません!」
「これ、他の奴に見せた?」
「今のところは調査した職員達と先輩だけです」
「ナイスッ」
迷宮組合、ならびにその親組織である迷宮省も一枚岩じゃない。
彼女の力に他の人間が気付いたら、排除したり利用するために強硬手段に出る可能性もある。
私情になるが、娘ほどの歳の子をそんな目に遭わせたくはない。
「そんじゃ、もう一歩踏み込んでみますか」