ソロ専アルバイター、ダンジョン配信者になる-回収屋バイトのわたしは零細配信会社に見初められる   作:こしこん堂

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わたし、狙われています! ⑦

 アステリオス

 

 見た目と大きさはミノタウロスとそう変わらない。けど、アステリオスが最強のミノタウロスと呼ばれる所以は…()()()()()()()()()()()

 

 スピード、膂力が普通のミノタウロスと比べて遥かに高く、見た目が似てるからミノタウロスが相手と油断して壊滅するパーティーも少なくない。

 

 

 "アステリオスだぁーーっ!!"

 "Aランクの化け物がなんでここに!?"

 "あの変な光から出てきたように見えたぞ"

 "二子玉にアステリオスが出るなんて聞いてねーぞ!!"

 "アステリオスどころかブルバイソンすらいねーよ!"

 "おっさんはほーるって言ってたな。なんか知ってんのか?"

 

 

「フレアゴーレムとかじゃなくて良かった…」

 

 脅威なのには変わらないけど、地形そのものを変えてしまうような極悪な魔物じゃない。

 

 げん也さんのこととか異世界の門に似た穴のこととか気になることはいっぱいあるけど、今はそんなこと気にしてる場合じゃない!

 

「はる巳!」

 

 アフラトスクで空間を軽く裂き、装備を保管してる家の物置きへと接続。はる巳がいつも使ってる大剣を持ってこようとした…んだけどぉっ!

 

「お、重ぉっ!?」

 

 ものすっごく重い!はる巳こんなもの振り回してたの!?

 

「貸して!」

 

 奮戦するわたしに駆け寄ったはる巳が裂け目に手を入れ、片手で大剣を取り出した。我が妹ながらどんな腕力してるの?

 

「時間稼ぎできる!?」

「倒してくる!」

 

 はる巳は大剣を担ぎ、アステリオスへと駆ける。

 

 

 "倒してくる!じゃないが"

 "時間稼ぎできる!?も大分無茶振り"

 "Aランクの魔物ってAランクハンターがソロ狩りできるって意味じゃないんですよぉっ!!"

 "Aランクパーティーでも苦戦する怪物だぞあれ"

 "ってか今何した?どっからあの装備出したの?"

 "アイテムボックスなんてこの世界に実装されてたっけ?"

 

 

『ブオオオオオオオッッッ!!!』

 

 急接近するはる巳に気づいたアステリオスが背中の斧槍を抜きざまに薙ぎ払う。

 

「この程度ッ!!」

 

 はる巳が渾身の一撃を難なく受け止めて弾き、アステリオスの足に袈裟斬りを見舞う。

 

 アステリオスはそれを足を上げて回避し、鋭利な槍で突きを返す。

 

 はる巳はすさまじい速度で放たれた突きを大剣の腹でいなしながら駆け出し、柄の部分に重撃を叩き込んだ。

 

『ブモォッ!?』

 

 柄に加わった重みでバランスを崩したアステリオスの体幹が揺らぐ。

 

「らああっっ!!」

 

 その隙に突貫したはる巳の突きがアステリオスの腹に突き刺さった。

 

「ふっ!」

 

 でも、そこで欲張らないのが飛び級Aランカー。

 

 大剣を引き抜いて距離を取り、人差し指で手招きしてアステリオスを挑発するはる巳。

 

『ブルゥアアアアアアアアアッッッッッ!!!!!』

 

 自分よりも遥かに小さな人間に手傷を負わされて煽られたことがよっぽど屈辱だったのか、顔面に無数の青筋を浮かべたアステリオスは猛り狂ったようにはる巳を攻撃し始めた。

 

 

 "こっわ!"

 "どっちが?"

 "アスニキ顔真っ赤ww"

 "アステリオスくんマジおこじゃん"

 "ミノタウロス種はプライド高いからな。人間に煽られたらビッキビキだわ"

 "これ人間に煽られたにカテゴライズしていいの?"

 

 

 これでアステリオスの注意が完全に逸れた。今のうちに救助を急がないと…!!

 

「自分の足で逃げられる方は自力で避難を!そうでない方は手を挙げて下さい!」

 

 ドローンを使って避難を呼びかけるげん也さん。その効果は絶大で、広い草原のあちこちで手が挙がっている。

 

 でも、距離が開きすぎている。このままじゃ救助に時間がかかっちゃう!

 

「げん也さん!!」

 

 げん也さんに駆け寄ると、ちょうど腰を抜かして立てなくなっていた男性を立たせているところだった。

 

「まだいたのか!?君達も早く逃げ…」

「今から救助が必要な人を連れていきます!げん也さんは避難を手伝ってあげて下さい!」

「…はぁっ?」

 

 言葉を待たずに精神を研ぎ澄まし、遠くで手を挙げている人の頭上に…『移る』。

 

「消えたっ!?」

 

 

 "はっ?とも子ちゃん消えた?"

 "そんくらい速いってこと!?"

 "ドローンのカメラで追いきれないとかある?"

 "この動き、あの騎士に似てない?"

 "まさか、これが神器の本当の力?"

 "あの騎士倒して手に入れたんだから同じようなこともできるか"

 "確かに、これは隠したがるのもわかる。こんなんバレたら色んなとこから狙われそうだもん"

 

 

 コメントでも指摘されているように、この力はあの騎士が使っていた瞬間移動だ。

 

 アフラトスクを持っていれば、わたしの視界に収まっている場所ならどこにでも移動できる。

 

 距離も、高さもまるっと無視して。

 

「大丈夫ですか!?」

「うわっ!?…あぁっ!リンクトーカーのとも子ちゃん!?ほ、本物だぁ…!」

「話は後です!逃げましょう!」

 

 男性の肩に手を触れ、げん也さんの元に戻る。

 

 わたしに触れていれば一緒に移動できるのだ。

 

「この人をお願いします」

「それが神器の…。いや、今はそんなことどうでもいい。協力、感謝する」

「他の人も連れてきます!」

「無理だと思ったらすぐに逃げてくれ!君達も避難するべき市民なのだからな!」

 

 それからはコメントではる巳の様子を窺いながら、瞬間移動を駆使して手を挙げている人をげん也さんのもとに連れて行く。

 

 その間にも二人の戦いは続き、戦況は…

 

『ブ…ブフゥッ…!』

「せぇいっっ!!」

『ブボォッッ!!?』

 

 はる巳の快勝で決まろうとしていた。

 

 武器が折れ、あちこちから血を流しているアステリオスは息も絶え絶えで立っているのがやっとという状況。

 

 対するはる巳の武器も壊れてはいるものの、本人は至って無傷。

 

 三倍以上の体格差をものともしないパンチがあごに決まり、頑強なはずのアステリオスが倒れ伏した。

 

 

 "いや勝ってるんだけど!?"

 "知ってた"

 "知ってた"

 "前々から強かったけど、アステリオスとガチンコで勝てるって何!?"

 "個人の戦力だけで考えたらS、SSランクもありえるぞこれ"

 "こういうのって普通苦戦してるはる巳ちゃんをとも子ちゃんが助けに行って勝つもんじゃないの!?"

 "ハルミー「手加減って、なんだぁ?」"

 "ギュピッ、ギュピッて足音が聞こえるようだ"

 

 

 さっすがはる巳。力勝負ならドラゴンにだって負けないもんね。

 

 剣がないから決め手に欠けるのか、さっきからひたすら顔を殴り続けている。

 

 あんまりやりすぎるとはる巳にもよくないし、アステリオスが可哀想になってくる。

 

 救助が済んで周りに誰もいないし…あれ、使ってみるか。

 

「はる巳!離れて!」

 

 はる巳に声が届く距離に移動して退避を促す。はる巳は即座にアステリオスから距離を取り、攻撃が止んだことに気づいたアステリオスが立ち上がろうとする。

 

 わたしが触れているものも瞬間移動できる。

 

 それなら、剣を振ってできる裂け目にもそれが応用できるんじゃないだろうか?

 

 今までは次元を切り裂いてその場に裂け目を作ってた。

 

 けど、それを手元じゃなくて別の場所に出せたら?

 

 その場所も位置も、瞬間移動のように自由自在だったら?

 

「はぁっっ!!」

 

 その答えが…

 

『ブ…ガァッ…』

 

 アステリオスの首に縦一閃に走る次元の裂け目と、そこに首の一部を取り込まれたことで切り落とされた首だ。

 

 

"はっ?今何した?"

 "とも子ちゃんが神器振ったらアステリオスの首が飛んだように見えたけど"

 "斬撃飛ばしたってこと?"

 "斬撃を瞬間移動させたんじゃね?"

 "そんなもんどうやって避けろってんだよ!?"

 "この神器、めちゃくちゃなぶっ壊れかもしれんぞ"

 "隠そうとしたのも納得だわ"

 

 

「足止めお疲れ様。おいしいとこ取っちゃってごめんね」

「ううん、助かったよ。ありがとう、姉さん」

 

 はる巳が拳を突き出す。はる巳も社長にあれ教わってたのね。

 

 わたしも拳を握ってそれに当てる。

 

 二人で勝利を称え合っていたちょうどその時、二子玉ダンジョンの入り口から軍服のような装備を着込んだ探索者が大勢入ってきた。

 

 迷宮組合の調査団だ。多分異常事態が起きたダンジョンの調査に来たんだろう。

 

 救助した人たちもげん也さんが外に連れて行ってくれたし、後はもう任せても大じょ…

 

「ぶっ?」

「こっちに来てない?」

 

 調査団は武器を構えながらこちらに駆け寄り…瞬く間にわたしたちを包囲した。

 

「神器を置いて手を頭の後ろに組め!」

「はっ、はいぃっ!!」

 

 

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