ソロ専アルバイター、ダンジョン配信者になる-回収屋バイトのわたしは零細配信会社に見初められる   作:こしこん堂

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わたし、案件を受けます! ②

 ダンジョンの魔物はダンジョンから出られない。

 

 ダンジョンが現れてからずっと信じられ、証明されてきた当たり前だ。

 

 でも、目の前の動画に映っているオークはどう見てもダンジョンの外で暴れている。

 

 これが加工じゃなかったとしたら、何かが起きれば魔物がダンジョンの外に出られることになる。

 

 もしそんなことになったら、一体どれだけの被害が…

 

「姉さん?」

「えっ?あぁっ、うん。大丈夫…」

 

 はる巳が心配そうに顔を覗き込む。多分、すっごい顔してたんだろうな。

 

「オークの群れは一時間以上にわたって暴れ続け、探索者、民間人双方に多大な犠牲を出した」

「最後はどうなったんだい?」

「地元の探索者が討伐したと聞いています。オークの群れがダンジョンの外に出る前、ダンジョン内で紫の光を見たという目撃証言がありました。憶測の域を出ないのですが…そのオーク達は円獄から出てきた魔物なのではないかと」

「つまりこういうことかい?円獄から出てきた魔物はダンジョンの外に出られると?」

「その可能性はあります」

 

 あら汰さんの言葉を受け、背中から冷や汗が伝う。あら汰さんがあんなに焦ってたのも、調査団がわたしを捕まえようとしたのも、それを知ってたからだったんだ。

 

「とも子…。立川での配信の時、円獄を見たかい?」

「いえっ。見てません…」

 

 問いの意図がわからず首を傾げるも、すぐに思い至る。

 

 そうだ。わたしたちは、ミミという実例を知っている。

 

「クロシゲ。お前さんに話しておきたいことが山とある。少し付き合ってくれるかい?」

「マキ江さんの頼みとあれば…」

「ありがとうよ。とも子、事務所に繋いどくれ」

「はいっ!」

 

 席を立ってみんなから距離を取り、アフラトスクを呼び出す。

 

「この剣、漂界剣アフラトスクで空を裂けば次元の裂け目を開くことができます。この時、行きたい場所を思い浮かべながら開くと…」

 

 説明しながら実演し、会議室に事務所に続く裂け目を開ける。事務所には誰もおらず、閑散とした空気が漂っていた。

 

「なぁっ!?」

「次元を切り裂いて違う場所同士を接続する、だと?凄まじい力だ…」

 

 流石の大臣もこれには驚いたようで、観察するような視線を裂け目に向けている。

 

「それは、望めば世界中どこにでも行けるのですか?」

「いえっ。行ったことがある場所にしか行けません。…少々お待ちください」

 

 オフィスの近くにある小さな部屋、仮眠室のドアをノックする。

 

「よう華ちゃーん、カヤさーん。いますかー?」

「どうぞっ」

『ミュイッ!』

 

 カヤさんの声だ。部屋に入ると、ベッドに寝てるよう華ちゃんとその傍に椅子を持ってきて座っているカヤさん、そしてカヤさんの頭の上に乗っているミミがいた。

 

「ただいまー」

「おかえりー…って!そのスーツどうしたの!?」

「ちょっとね。具合はどう?」

「カヤちゃんの薬のおかげでちょっと持ち直せたわ。…あれっ?おばあちゃんとはる巳ちゃんは一緒じゃないの?」

「一緒なんだけど、今はお客さんの相手をしてるの…」

「お客さん?」

「どうも。お邪魔しています」

「っっ!?」

 

 声に振り返ると、背後に大臣が立っていた。

 

 杖がないと歩けないはずなのに、音も気配も感じられなかった!?

 

「やぁっ。君がお客さんかい?」

「あ、あれれ〜?熱が出すぎて夢でも見てるのかしら?とも子ちゃんの後ろに黒平大臣が見えるんだけどぉ…」

「お初にお目にかかります。私、迷宮省の黒平しげると申します」

「  」

 

 あっ、死んだ…

 

 

 

「マリョクフエールー。これを飲めば一時的に魔力を引き上げることができるよ」

「ありがとう!これならいけそうだわ」

 

 カヤさんがくれたなんとも怪しげな薬を一気飲みし、よう華ちゃんは自分の胸に手を当てる。

 

祓毒(アンチドート)

 

 手から放たれた光が全身を包み、しばらくしてそれが消える。

 

 すると、熱で赤みがかっていた顔が元通りになっていた。

 

「療癒」

 

 次に治癒の聖術。それを自分にかけたよう華ちゃんは体を動かして具合を確認し、力強く頷いた。

 

「よしっ!ふっかーーつ!!」

「すっ、すごい…」

迷宮省(うち)に欲しい逸材だ…」

「では改めて…。有瀬よう華と申します。お会いできて光栄です」

「ボクは夷流布カヤだ。よろしくね」

 

 大臣が二人と握手を交わしたところで、大臣の注目はよう華ちゃんの肩に移動したミミに移る。

 

「それは…、立川にいた魔物の子供…!」

「あぁっ!えっと、これは、そのぉ…」

「大丈夫だよ。今から全部話そうとしてたところだから」

 

 

 

 

 着替えたよう華ちゃんとカヤさん、ミミを会議室に連れていき、わたしたちはよう華ちゃんたちに今日起きた出来事とさっき見た動画の話、そして大臣たちにアフラトスクの本当の力とわたしが異世界人であること以外の秘密を全て話した。

 

「事情はわかりました。まさかそんなことが起きていようとは…」

「アタシも驚きっぱなしだよ。老後くらいゆっくりさせとくれってんだ」

 

 ここ最近色んなことが起きすぎて感覚が麻痺してたけど、改めて考えるとすごいことしか起きてなかった。

 

 あら汰さんなんて開いた口が塞がらなくなってるし。

 

「一応聞くがこの話は…」

「もちろん、公表するつもりはありません。円獄同様、下手に公表するとパニックになりかねませんからね」

「助かるよ」

「一ツ橋君。くれぐれも…」

「心得ています。上司には空間を移動する力を持った神器だったと報告致します」

 

 大人たちが今後の方針を話し合っている一方で、よう華ちゃんは机に突っ伏して頭を抱えていた。

 

「色んなこと起きすぎでしょ…。世界のスピードについていけないわぁ」

「私もです。情報の洪水を浴びせられて困惑しています」

「全然そうは見えないわよぉ…」

 

 カヤさんはのん気にお茶菓子を食べているけど、わたしたちはとてもそういう気分にはなれなかった。

 

「皆様…」

 

 大臣たちの話し合いが終わり、大臣がみんなに向き直る。

 

 その表情はとても真剣なもので、わたしも思わず背筋が伸びた。

 

「今からお話することは命令ではなく依頼です。受けるも断るも皆様の自由です」

 

 そう前置きして立ち上がり、わたしたちに向けて頭を下げた。

 

「どうか、円獄の調査に協力していただきたい…!もちろんタダでとは言いません。報酬は都度お支払いします。皆様の秘密もこの場の話に留め、他者に話さざるおえない場合は事前にご相談致します」

 

 厳かな沈黙が流れる中、わたしたちは顔を見合わせる。

 

 社長とはる巳は即決、よう華ちゃんは少し考えておずおずと頷く。

 

 カヤさんは…この状況でお茶菓子のおかわりを要求している。

 

 嫌なら断るだろうし、多分受けてくれるだろう。

 

 そうなれば…答えは一つだ。

 

「分かった。その案件、受けさせてもらうよ」

 

 社長がそう答えると、大臣の表情がわずかに綻んだ。

 

「ありがとうございます。…早速で恐縮なのですが、皆様の秘密を共有したい機関があります。彼らならきっと皆様の力になってくれるはずです」

「機関?どんな所だい?」

 

 

 

「迷宮技術開発局です」

 

 

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