ソロ専アルバイター、ダンジョン配信者になる-回収屋バイトのわたしは零細配信会社に見初められる 作:こしこん堂
翌日
みんなでやって来たのは都内にあるレンタルキッチン。
そこはキッチンというにはあまりにも広く、椅子やテーブルも揃っていてまるでレストランのよう。
「うわぁっ!広い…!」
「ここなら思う存分やれそうね!」
「設備も機材も申し分ありません」
「ほぅっ。こんなに広い厨房は久しぶりだ。家の厨房を思い出すよ」
そういえば、カヤさんってお姫様なんだっけ?
お城の厨房ってどんなだったんだろ?
「私は配信の準備をするから、道具とかの準備はよろしくねっ」
「うんっ」
キッチンに監視カメラがないことを確認し、裂け目を開いて事務所に接続。
社長のデスクの上でパンを食べているミミに声をかける。
「ミミ。フレアドラゴンの骨とこの前入れたクーラーボックス出して」
『ミュイッ!ンンンーーー…ミィーーーーッッ!!!』
ミミが口を開けて叫ぶと、口の中からどんどんとフレアドラゴンの骨とクーラーボックスが出てきた。
この小さな体のどこにこんなものが入るのか…本当に謎だ。
「ありがとっ」
はる巳が骨を担いでキッチンに運ぶ間にクーラーボックスの中身を確認。
中にはこの前手に入れたフレアドラゴンの肉が入れた時と同じ状態で納まっていた。
「ちゃんと残ってます!」
「思った通りだね」
ミミが食べちゃうから食べ物は収納できない。
それなら食べ物と分からないように入れれば入るんじゃないか?
そう考えた社長が思いついたのがこの方法。食べ物を一つの入れ物に納めて入れ物ごと収納してもらうというものだ。
「ありがとねっ。ミミ」
アフラトスクでフレアドラゴンの肉を少し切ってミミにあげる。
ミミはそれにかぶりつき、ほぼ一口で食べきってしまった。
『ンミィ…』
「お気に召したようだね」
「では、行ってきます」
「あぁっ。気をつけるんだよ」
クーラーボックスを担いでキッチンに戻り、みんなに保存していた肉を見せる。
「まぁっ!おいしそう!」
「これがフレアドラゴンだったなんて思えないね」
「見事なものだ。これならいいチャーシューになりそうだね」
みんなからも大好評。
キッチンを見ると既に準備は整っていて、料理に使う鍋や包丁などが綺麗に並べられていた。
「いつでも始められるわ。早速始めましょう!」
「うんっ!」
「はいっ」
よう華ちゃんがドローンを起動する前に裂け目を閉じる。
事務所では社長がパソコンとにらめっこしていて、ミミはもうデスクの上にいなかった。
いつもみたいに仮眠室で寝てるのかな?
「ドローン起動!3.2.1…」
「「「「こんちゃーーーーっす!!」」」」
"こんちゃー!"
"コン茶"
"タジマハ"
"おぉっ!とも子ちゃんとはる巳ちゃんいる!"
"あの後どうなったか心配だったんだよな"
"どこだここ?キッチン?"
"まさかまさかのラーメン回か!?"
"よう華ちゃん元気になってる!よかったぁ…"
「どーもー!リンクトーカーでーす!この前は心配かけてごめんね。もう元気いっぱい!バリバリ配信できちゃいまーす!」
よう華ちゃんの元気な姿にコメントも大盛り上がり。
その中にはわたしとはる巳を心配するコメントもいくつかあった。
あんな形で配信終わってたら無理もない。
「ちょっと色々ありましたけど、わたしもはる巳もこの通り無事です!」
「ご心配をおかけしました…」
"その色々についてkwsk"
"大臣の車に乗ってたって聞いたけど、なにしてきたん?"
"結局あの神器なんだったんですか?"
"あのワームホールみたいなのは?"
少しずつコメントが脱線してきた。
答えたいのは山々だけど、大臣の案件や研究開発局の話は機密事項だから話せない。
どうしたものかと頭を抱えていると、カヤさんがフレアドラゴンの骨を魔法で宙に浮かせ始めた。
「ウィンドスラッシュ」
杖をかざして呪文を唱える。目に見えない真空の刃が宙で暴れ回り、フレアドラゴンの骨を細かく切り刻んでいく。
大きくて太かった骨があっという間に小さくなり、お店に売ってるような出汁取り用の骨みたいな形に仕上がった。
"うおおおっ!すげぇーー!!"
""魔導ギルドが血涙流しながら見てそう"
"汎用性高すぎだろ…。一家に一人カヤえもんってか?"
"カヤえもーん!魔法教えてー!"
「それはできない相談だ。これは夷流布の御留流《おとめりゅう》だからね」
口元に人差し指を当てて流し目を送るカヤさん。
思わずドキッとする仕草にファンも大喜びだ。
おかげで話題を逸らすことに成功。盛り上がってきたところでよう華ちゃんが進行する。
「今日は先日告知したラーメン作りをやっていこうと思います!みんなはラーメン作ったことある?」
「ありません」
「袋麺なら…」
普通に生きてたら作る機会なんてないよね。
「だよねー。というわけで、初めてのラーメン作り、やっていきたいと思います!」
「でも、ラーメンって作るのにすごく時間かかるんじゃないの?」
「普通にやったら半日近くかかるらしいわ。でも!これがあれば4時間でできます!」
そう言ってキッチンの収納から取り出したのは圧力鍋。
"宣伝ktkr"
"これでできるなら買っちゃおうかな?"
"手軽にスープが作れるなんて夢みたい"
"材料が全くお手軽じゃない件"
"この骨、あの恐ろしいドラゴンだったんだよな…"
「まずは圧力鍋に骨を入れて水を張り、沸騰させていきます!」
「できたよ」
「はやっ!?」
カヤさんの手元には沸騰する水の球が浮かんでいて、その中にはさっき割った骨が入っていた。
"できたよ、じゃないんだが"
"沸騰の手間すらいらないってすげー"
"水をお湯に変えた、ってコト!?"
"さっきから黒いものが球から出てきてるけど、これってもしかして灰汁?"
"うちの店に来てほしい"
"本職ニキいた"
カヤさんが手を振ると、水の球は圧力鍋にすっぽりと収まった。
その間も灰汁を取り続けているのでほぼフリータイム状態。
なので…
「スープを仕込んでいる間に麺とトッピングも作っちゃいましょう!とも子ちゃん、はる巳ちゃん!」
「はいっ」
「任せて」
ここで取り出したるはさっきミミから取り出したフレアドラゴンの肉と、昨日採取したエノジダケ、そしてグラスヴェノムの肉。
「付け合わせは2種類のチャーシューとエノジダケを使っていきたいと思いますっ」
「私は麺を作ります。とんこつのようなスープなのでコシの強いストレート麺を作っていきます」
"こっちも楽しみ!"
"これがフレアドラゴンとグラスヴェノムの肉…。肉だけ見たらうまそうだな"
"どんな風になるんだろ?楽しみ"
"はる巳ちゃんが打った麺とかコシありすぎて歯折れそう"
"バリカタ(物理)"
こうして、みんなで力を合わせてのラーメン作りが始まった。