ソロ専アルバイター、ダンジョン配信者になる-回収屋バイトのわたしは零細配信会社に見初められる 作:こしこん堂
「おっほぉ!すっげぇ!!キングゴブリンにハイゴブリンまでいやがる!」
「誰かの狩り残しか?しばらく遊んで暮らせるな!」
チャラさん?の仲間たちがわたしが倒したゴブリンたちを物色する。
わたしはその様子をチャラさんに剣を突きつけられた状態で見ていた。
「さっきのメーワク料だ。こんくらいは当然だよなぁ?」
「まぁ、それで気が済むんでしたら…」
さっきは人助けだったから手を出したけど今回は違う。
獲物を横取りされるのは悔しいけど、探索者との間に遺恨が残ったら社長に怒られちゃう。
"チャラてめぇーーっっ!!"
"
"絵に描いたようなハイエナ"
"プライドねぇのかよ!?"
"きったねぇぞ!!"
「いいんですか?」
「あぁっ?」
「配信者さんなんでしょう?こんなところ見られたら炎上?すると思いますよ」
「今はオフ。何してようが俺の勝手だ」
けらけらとせせら笑うチャラさん。その証拠にさっきまで飛んでたドローンがどこにもない。
「ドローンを止めろ」
「あれは会社への報告用のものなので配信はしていません」
「そうかよ。なら後で壊しゃいいか」
"配信されてるんだなぁこれがぁっ!!"
"お前の悪事はずっと見ているぞ。…よくもやってくれたな探索者の恥晒しめ"
"やっぱ配信されてることに気づいてないなこれ"
"どうして私はアメリカにいるの!?早く、早く帰らないと…!!"
"うぉっ!?どうした急に?"
「けっ!しけてやがんな…」
奪ったカバンからわたしの財布を取り出して中身を改めるチャラさん。
普段から使う分だけしか入れてなくてよかった。
「…社員証か?よーし、どんなモブ面かおが…」
財布を漁って社員証を見つけたチャラさんがそれを見る。
次の瞬間、歓喜に満ちた声を上げた。
「おっほぉ!めっちゃかわいい!!」
「どしたんすかチャラさん?」
「見ろよ!大当たりだべ!」
「うおぉっ!すっげ!!」
わたしの社員証で盛り上がる2人。流石に手を出されたらこっちも正当防衛せざるおえない。
「蒐集会社明井嘱託蒐集員、辻吹とも子18歳、ねぇ…」
"実名ktkr"
"不可抗力とはいえ聞いちまったー!?"
"ダメだ。やっぱりそんな子いない"
"辻吹!?…いやまさかね"
"珍しい名前だけど、そんな偶然あるわけないよな…"
"あんだけ強いんだから絶対はる巳さんの身内だって!!"
「君、お姉さんとかいるの?」
女の子と知るやいなや、いきなり口調が柔らかくなった。
「いえっ。姉はいません」
「こんな名字が被るもんかねぇ。まぁいいや。ちょっと顔見せてよ」
チャラさんがわたしの帽子とマスクに手をかけ、乱暴に剥がす。
「うぉっ!予想以上!!」
「予定変更っすねチャラさん!」
「だなっ!…ねぇねぇとも子ちゃーん。俺ってばちょーやさしーからさぁ、ここの戦利品全部けんじょーして一緒に飯食いに行ってくれたら許してあげようと思うわけ。…どう?」
"だが断る"
"組合の人ーー!早く来てくれーー!!"
"とも子ちゃん!そんなやつぶっ飛ばせ!"
"キングに比べたらこんなもん余裕だろ!?"
"回収屋は探索者と揉め事起こすなって言われてるからなぁ。ソースは元バイトの俺"
お金と戦利品だけならまだいいけど、この人たちと付き合うなんてまっぴらごめんだ。
絶対ご飯だけで終わるわけがない。
「…」
そろそろやるか?
相手は3人。
遺恨が残っても正当防衛だから大目に見てくれるだろう。
油断しきっているチャラさんに一撃入れるべく地面を踏みしめた…その時だ。
「うおおおっっ!!チャラさん!見て下さいよこれぇっ!!」
宝物庫を漁っていた仲間の一人が声を上げた。
「Doしたミッチー?」
「なんかすっげぇ高そうな剣見つけました!これ『神器』じゃないですかね!?」
「なにぃっ!?」
「…っ!?」
全員の視線がそっちに注がれる。ミッチーと呼ばれた男性の手には刀身がぶ厚く、刃だけでも1メートルはありそうな巨大な両刃剣があった。
"神器!?"
"…ってなんぞや?"
"簡単に言うとダンジョンでしか見つからないめっちゃ強い武器とか防具。日本でも所有者が10人もいない激レア"
"宝くじ特等当てるより見つけるのがむずいって言われてる"
"マジかよ!?もし神器ならとんでもなく貴重な映像じゃん!"
「マッ!?やるじゃねぇのミッチー!!」
「これで俺らもA…いや、SSの仲間入りだべ!!」
強い武器を持ってたって意味ないと思うけどなぁ。
はしゃぐ3人を視界に納めながらゆっくり後ずさっていると、突然剣が青白く光り始めた。
「うぉあっ!?」
「なんだなんだぁっ!?」
"うぉっ!まぶしっ!?"
"閃光弾を食らった!"
"まさか神器が主を認めたとか?"
"ハイエナ選ぶ神器とか嫌すぎる"
光は剣から離れて光球となり、ふよふよと漂いながら地面に落ちる。
そこで光が2つに分かれて大きくなり、またたく間に剣を持った鎧姿の騎士と地面に突き立った剣に変わった。
「何、これ…?」
鎧の騎士はわたしたちを一瞥すると、くぐもった声で話しかけてきた。
『我を欲するものよ。その剣をもって力を示せ』
騎士が指さすのは地面に刺さった剣。これを使って戦えということだろう。
「んじゃっ、俺からいきますか」
「はぁっ!?俺に決まってんだろ!?」
「見つけたのは俺だ!」
ミッチーさんが剣に手をかける。
「…っ!あのっ、待ってく…」
わたしが止めるより早くミッチーさんが剣を抜いて構えた…次の瞬間。
『笑止』
騎士は既にミッチーさんの後ろにいて
「あろっ?」
縦半分に真っ二つにされた肉塊が鮮血を撒き散らしながら崩れ落ちた。
"ひぃっ!?"
"えっ、し、死ん…"
"うわああああああ!!!"
"無理無理無理!!次元が違うぞこいつ!"
"魔物ならA…いや、S以上だ!!"
「み、ミッチー…?」
「あっ、あぁ…ああああああああああああああああああっっっ!!!!!」
事切れた仲間だったものを見下ろし、声にならない悲鳴を上げるチャラさん。
騎士が手を振るとミッチーさんが握っていた剣が消え、新しい剣が地面に突き立った。
『次は誰そ?』