ソロ専アルバイター、ダンジョン配信者になる-回収屋バイトのわたしは零細配信会社に見初められる   作:こしこん堂

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わたし、配信者デビューします! ⑥

「わあああああっっっ!!!」

「チャラさん!置いてかないで下さいよぉおおおっっ!!」

 

 恐慌状態に陥ったチャラさんたちは我先にと逃走する。けど、騎士は追撃するどころか一瞥をくれる様子もない。

 

「なるほど…。剣を抜かないと攻撃してこないのね」

『然り』

 

 ひとり言が聞こえたらしく、騎士が小さく頷いた。

 

『我が求むは闘争に非ず。力を示さぬなら去るがいい』

「逃げれば見逃してくれると?」

『然り。命を粗末にすべきではない』

 

 

 ”騎士さん紳士的すぎる”

 ”人間より話わかる化け物って…”

 ”ここで逃げれば助かる、ってコト!?”

 ”逃げてくれとも子ちゃん!!”

 

 

「…2つ確認します。あなたを倒せばその剣をもらえるんですか?」

『然り』

「武器はそれしか使っちゃダメなんですか?」

『然り。その剣以外は効かぬ』

 

 こんな危険そうな相手が見逃してくれると言ってるのだ。

 

 普通なら逃げの一択だろう。

 

 けど…

 

「もう一つだけ聞かせて下さい。…他の人がその剣を拾ったらどうするんですか?」

「無論、力を示すかを問う」

 

 脳裏をよぎるのは楽しそうに配信していたよう華さんや、今の職に就いてからなにかと良くしてくれたパートのおばさんたちの姿。

 

 何も知らない人が剣を拾って、間違ってあれに挑んだら…何の罪もない人たちが死ぬことになる。

 

 鉄臭い匂いを漂わせる肉塊になったこの人のように。

 

「…」

 

 

 ”ちょっ!”

 ”おいいいいいっっ!!!”

 ”やめろやめろおおおっ”

 ”逃げるんだぁ…!勝てるわけないよぉっ…!!”

 

 

 剣に近づき、柄に手をかける。

 

『後戻りはできぬぞ?』

「手合わせ…お願いします」

 

 力をかけて剣を引き抜き、即座に後ろへと飛ぶ。その刹那、わたしがついさっきまでいた場所に騎士が出現。

 

『参る!!』

 

 剣を大きく薙いだ軌道がわたしの数ミリ手前を通過した。

 

 ぼーっとしてたらさっきの人みたいに真っ二つにされてただろう。

 

 

 ”はやっ!?”

 ”はっ!?全然見えないんですけど!?”

 ”あんな速度で斬られたらそりゃ真っ二つだわ”

 

 

『ほぅ。見事也』

「なるほど…。素晴らしい手品ですね」

 

 剣を構え、いつでも対応できるよう注視しながら言葉を続ける。

 

 ミッチーさんを斬った時の動きと今の一閃でカラクリはなんとなくわかった。

 

「…瞬間移動、してますね?」

『見破ったのは汝が初めてだ』

 

 

 ”瞬間移動!?”

 ”それなら一瞬で背後に回ったのも説明がつく”

 ”いやなんでわかるんだよ!?”

 ”この騎士も化け物だけど、とも子ちゃんもそっち側じゃねーか!”

 

 

『何故わかった?』

「高速で動いているなら地面に足跡がつくはずです。でも、あなたが動いても足跡がつかない。鎧に泥がついてないのも不自然です。だから、速いんじゃなくて消えてるんじゃないかと思いました」

『然り。だが、理解は勝利を意味しない!』

 

 姿が消え、再び懐に現れる。

 

 一合、二合、三合。

 

 恐るべき速さで振るわれる剣を捌いて距離を取っても、また瞬間移動で懐に潜り込まれる。

 

 速さと膂力もかなりのもの。小細工なしでも十分強い。

 

『そこだっ!』

「くぅっ!」

 

 上段斬りをいなした瞬間に姿を消し、背後から斬りかかってきた凶刃を身を捻ってかわす。

 

 左足を軸に半回転して切り返すも姿はなく、真下から伸びてきた突き上げを体を大きくのけぞらせて回避。

 

「強いっ…!!」

 

 この瞬間移動、思った以上に厄介だ。

 

 まるで魔物の大群と真正面から戦っているかのように四方八方から攻撃が飛んでくる。

 

 攻めに転じても瞬間移動で攻撃が空振りに終わるだけでなく、そこからカウンターに転じてくるからまるで隙がない。

 

 その結果、防戦一方を強いられていた。

 

 

 ”ぜ、全然見えねぇ!!”

 ”あれ全部捌いてんのすげぇよ”

 ”防いでるだけじゃ勝てねぇぞとも子ちゃーん!!”

 ”本人も強い上に瞬間移動持ちってクソチートじゃねーか!!勝てるわけねぇよ!!”

 "ソロでやり合う敵じゃねぇ!!"

 "仲間が多ければ多いほど犠牲者が増えます。あの剣しか効かない以上ソロが最適解かと"

 

 

 もう何合打ち合っただろうか?相手の勢いは一切衰えない。

 

 普通ならこのままジリ貧になって負けるだろう。

 

「…読めてきた」

 

 普通なら。

 

『ほぅっ?』

 

 騎士が感嘆の声を上げながら斬りかかる。わたしはそれを何度目になるかわからないバックステップで避ける。

 

 当然相手は消えて懐に潜り込んできた。

 

 相手が現れて剣を振るそのわずかな時間に打って出る。

 

「ふっ!」

 

 地面を蹴り込み、刃同士をぶつけるような形で抑え込みながら体当たりをお見舞いした。

 

『ぬぅっ!?』

 

 やっぱり、人間の姿をしてるから動きも人間と同じだ。

 

 攻撃の威力は様々な要素を合算して決まる。

 

 武器の強さ、筋力、体重、技量、重心移動などなど。

 

 瞬間移動する都合上、この騎士には体重を乗せる斬り方ができない。その場に一瞬で現れるから手と腰だけで振り回すしかできないからだ。

 

 だから初動がとても非力なものになる。

 

『がっ!?』

 

 騎士が体勢を崩して転倒する。その隙に剣を刺そうと刃を真下に向けた。

 

『甘いっ!!』

 

 倒れた騎士が一瞬で消える。

 

 この時を待っていた!!

 

 それを見届けたわたしはすぐに真下に向けていた刃を反転させて自分の腹に向け…

 

「せいっ!!」

 

 お腹のすぐ横の空間目掛けて思いっきり突き刺した。

 

 

 ”えええええええええええええっ!?!?”

 ”は、ハラキリ!?”

 ”女性も腹を切るんだね!(英語)”

 ”ついに外国人ニキまできた”

 ”いや切ってないから”

 

 

『グホォッ!?』

 

 空を刺したはずの刃に手ごたえが乗り、背後で騎士の苦しそうなうめき声が響く。

 

 予想通り、瞬間移動で真後ろに回り込んだ騎士の胸に剣が深々と突き刺さっていた。

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