ソロ専アルバイター、ダンジョン配信者になる-回収屋バイトのわたしは零細配信会社に見初められる   作:こしこん堂

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わたし、配信者デビューします! ⑦

 ”ええええええっ!?!?”

 ”はっ?倒した?どうやって?”

 ”解説キボン”

 ”姉さんは恐らく何度も打ち合ううちに騎士の行動パターンを掴んだのでしょう。体重が乗っていない攻撃を初動で止めつつ押し倒し、そこから瞬間移動で逃げられた場合の出現コースを予測して真後ろを突き刺した。ということだと思います”

 ”解説助かる”

 ”だからなんでわかるんだよぉ”

 

 

『見事…!!』

 

 剣が刺さった胸から青白い光を放つ騎士。その声にはもう敵意はなく、どこか晴れやかな声と共に自分の剣を消した。

 

『我が剣、よくぞ破った』

「一撃が運よく決まっただけですよ。もう一度やれと言われたら絶対無理です」

『勝ちは揺るがぬ。汝を認めよう』

 

 言い終えたところで全身から青白い光が漏れ出てくる。それがどんどん激しくなり、全身を覆った次の瞬間…!

 

「…っ!」

 

 激しい光を伴って爆発した。

 

 

 "す、すすすすげぇーーっっ!!"

 "なんなんだこの回収屋っ!?"

 "回収屋とバカにされるわたしだけど実は最強です"

 "書籍化決定"

 "アニメ化はよっ"

 

 

 光が収まり、薄暗いゴブリンの王国が戻ってくる。

 

 騎士が立っていた場所には青白く光る剣が突き立っていた。

 

「…」

 

 犠牲者に黙祷を捧げ、剣に向き直る。

 

 ゆっくり近づいて柄を握ると、光がより一層強まった。

 

「ぐぅっ!!」

 

 それと同時に頭に流れ込んでくるのは多分この剣の記憶。

 

 頭がズキズキと痛む中、情報の波が容赦なく押し寄せる。

 

 その名前も、使い方も、知らないはずなのにどんどん理解できていく。

 

【我が名を呼べ。さすれば契約は結ばれる】

 

 痛みが引き、少しずつ冷静になってきた頭にあの騎士の声が響く。

 

 深く息を吸い…その名を呼ぶ。

 

 

 

漂界剣(ひょうかいけん)…アフラトスク!!』

 

 その名を叫びながら剣を引き抜いた瞬間、青白い光の玉が剣から放たれる。

 

 それはわたしの胸の中に入り込み、完全に呑まれたところで異変が起きた。

 

「軽いっ!?」

 

 さっきまで見た目通りの重さだった剣がまるで羽が生えたように軽くなったのだ。

 

 何度か素振りをし、改めて剣を眺める。

 

 長さは162cmあるわたしよりは若干小さい。全長は大体150cmくらいだろう。

 

 大きくてぶ厚い刀身を持った大剣には凝った飾りも意匠もない。まさに戦うための武器といった見た目だ。

 

 けど、それは見た目だけの話。配信ごっこに戻ってドローンに話しかける。

 

「この神器、こんなこともできるんですよ!」

 

 柄を持ち、頭の中で念じる。

 

【外れろ】

 

 すると大剣の根元から金属が打ち合う音がした。

 

 その状態で柄を引くと、刀身の中から細くて刃渡りも短めな剣がもう一本出てきた。

 

「実はこれ、鞘なんです!」

 

 

 "ええええええっっ!?"

 "剣の中から剣が出てきた!?"

 "なにこの物騒なマトリョシカ"

 "もう1本くらい出てきそう"

 "パワーがほしい時は大剣、普段は剣と使い分けできて便利だな"

 "神器すげぇ!!"

 "一つの武器に複数の機能を持たせた武器を研究してるって噂は聞いたことあるけど、もしかしたらこの神器から着想を得てるのかも"

 

 

 流れ込んできた情報が本当なら、この剣には世界を変えるほどの力がある。

 

 わたし個人では手に余るほどの恐ろしい力だ。

 

 だから手に入れておいてなんだけど、売って手放したいと思ってるわたしもいる。

 

「これ、売ったらいくらくらいになるんだろ?」

 

 

 "はっ?"

 "ふぁっ!?"

 "今売ると申したか?"

 "第一話、神器売るよ!!"

 "それを売るなんてとんでもない!!"

 

 

 滅多にお目にかかれないすごく貴重な武器だから、きっと途轍もない値段がつくだろう。

 

 それだけあれば古くなってきた施設を建て直したり院長先生たちと旅行にだって行けるかも。

 

 はる巳もそろそろ卒業だから卒業祝いも買おう。

 

 将来的に入ってくるであろう大金の使い道に思いを馳せていると、不意にスマホが振動し始めた。

 

「社長?」

 

 電話の相手は社長。向こうからかけてくるなんて何かあったのかな?

 

「はいっ。辻ぶ…」

『辻吹くん!!なんてことをしてくれたんだ!?』

「うひゃあっ!?」

 

 突然の怒号に思わずスマホを落としそうになる。

 

「な、何の話ですか?」

『とぼけないでくれ!なんだこれは!?テロか!?新手のバイトテロかね!?』

「はいっ?」

『君の配信のせいで会社の電話が鳴りっぱなしなんだ!』

「配信…?」

 

 確かに、配信ごっこなら今している。でも、まだ提出してない業務記録のことをなんで知ってるの?

 

『話は明日聞くから、早く配信を切りなさい』

「切るも何も、配信なんて…」

 

 ドローンの設定を見たわたしの時間が文字通り止まった。

 

 ドローンのモニターに踊る配信中の文字。そして、

 

 

 "あっ、やっと気づいた"

 "姉さん久しぶり!すっごく強くてびっくりしちゃった"

 "とても楽しかったよ。やっぱり人間は面白い"

 "神器を手に入れる貴重な映像見せてくれてありがとうございます!"

 "さっきはありがとう!また会いましょうね!とも子ちゃん"

 "シャッチョさんおこだったね。また配信するなら教えてねー"

 

 

 続々と流れていくコメントの数々。その数は軽く1000を越えている。

 

「はっ?えっ?」

 

 衝撃の事実に殴られて真っ白になった頭が状況を整理する。

 

 もしかして、ドローンの操作を間違えて録画が配信になってた?

 

 じゃあ、わたしが神器を手に入れたのも、チャラさんに実名読まれたのも、配信ごっこしてたことも全部…世界中に拡散されてた、ってコト!?

 

「えっ?…ええええええええっっっ!?!?」

 

 




これにて第一話は終わりです

本作は女の子同士の愛と絆を描きつつ、ダンジョン配信を通してダンジョンという不思議な世界を描くお話です

百合が好き!ダンジョン配信ものが好き!という方には特におすすめです

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