ソロ専アルバイター、ダンジョン配信者になる-回収屋バイトのわたしは零細配信会社に見初められる   作:こしこん堂

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わたし、転職します ②

「なるほど。そういうことか…」

 

 マキ江さんの車で会社まで送ってもらい、出社一番に昨日の経緯を社長に包み隠さず説明する。

 

 スカウトの人たちには事情を説明して帰ってもらった。居座られると戸締まりできないからだ。

 

「君は高価な素材をたくさん拾ってきてくれたし、これまで嘘をついたこともない。だから、あれが操作ミスだったことは信じよう」

「ありがとうございます…」

「しかし、今回の件でうちは多大な損害を被った。金銭的なものではなく、信用や風評といった面でね」

「すみません…」

「昨日は本当に大変だったよ。色んなギルドから君の素性を教えてほしいという電話がひっきりなしにかかってきてね」

 

 ここに来る前にパートのおばさんたちから昨日のあらましは大体聞いている。

 

 マスコミやスカウトの人がここにも押しかけてきたんだとか。

 

「君のおかげでうちの知名度が上がったのも事実だ。しかし、会社の利益や信頼を著しく損なう行為は罰則、あるいは解雇の対象となると社則で定められている」

「っっ!?」

 

 解雇の二文字にさっと血の気が引く。

 

 中学を卒業してから3年間、それなりに居心地よくやってきた会社をこんな形で辞めることになるなんて…!

 

「だが、今回は利益も大きかった。故に、君が昨日回収した神器を違約金という形で会社に譲渡することでこの話を終わらせたいと思ってる」

「…」

 

 売ってお金にしたい気持ちもあったけど、これで失職せずに済むなら長い目で見れば安いものかもしれない。

 

「わかりました…」

 

 刃にタオルを巻いて持ってきた神器を社長に渡そうとした…その時だ。

 

「そいつぁ無理ですよ」

 

 社長室の扉が開き、マキ江さんと胸にいくつかのファイルを抱えたよう華さんが入ってきた。

 

「なんだね君たちは!?アポなしとは非常識じゃないかね!」

「失礼。我々はこういう者です」

 

 マキ江さんとよう華さんが社長に名刺を渡す。

 

 わたしとすれ違う最中、よう華さんは流し目でウィンクを送ってきた。

 

「リンクトーカー?配信会社が何の用だね?」

「それを話す前にこちらをご覧ください」

 

 そう言ってマキ江さんは神器に手を伸ばす。その手が神器に触れかけた瞬間、剣から青い光が放たれてその手を弾いた。

 

「っ!?」

「この通り、神器は主と認めた者にしか触れることができません」

「なにっ!?」

 

 し、知らなかった…。

 

「では、契約の名義を移せば…」

「フリーになればもう一度試練をクリアする必要があります。配信をご覧になったならその強さもわかるはず」

「ぐぅっ…!」

 

 あの騎士は本当に強かった。体感的にはドラゴン以上。

 

 不意打ちで勝てたようなものだから、もう一度勝つなんて無理だ。

 

「…」

 

 この力はわたしには荷が重い。だから売って手放そうと思ってたけど考えが変わった。

 

 あの騎士がまた誰かに戦いを挑んだり、これが悪い人の手に渡るくらいならわたしがずっと持ってる方がいいのかも。

 

「そうなると、彼女を許す理由がなくなってしまいますね」

「…っ?何を言っているのかね?」

「神器を譲渡すれば許すという条件を満たせないなら解雇するしかない、ということです」

「なぁっ!?」

 

 マキ江さんの言葉に社長は目を白黒させる。

 

 えっ?結局クビになっちゃうの?

 

「彼女は高ランクの魔物も倒せる優秀な回収屋だ!みすみす手放せるわけがないだろう!」

 

 そんな状況じゃないのはわかってるけど、社長に褒められてちょっと誇らしくなる。

 

「そんな優秀な社員が何故、御社の社員名簿に載っていないのですか?」

「…っ!?」

「よう華」

 

 名前を呼ばれたよう華さんは服のポケットから木の枝のようなものを取り出した。

 

「杖!?」

 

 魔法使いの適性がある探索者が使う魔法の杖だ。

 

 ダンジョンが現れてからしばらくの月日が流れ、人間はダンジョンに適応するように進化した。

 

 自らを高め、人智を超えた力を振るうことができる力、魔力に目覚める人間が現れたのだ。

 

 わたしたち探索者は体内に多量の魔力を持った人間で、ほとんどはそれを肉体や武器の強化に使っている。

 

 けど、稀に火の玉を飛ばしたり大きなツララを作ったりするような魔法を使える探索者もいる。

 

 魔法使いはとても貴重だから、今日のわたしみたいにスカウトが殺到するんだとか。

 

粛声結界(サイレントウォール)

「っっ!?」

 

 よう華さんが杖を振って呪文を唱える。それは魔法じゃなかった。

 

聖術(しょうじゅつ)!?」

「よく知ってるわね」

「すっ、すごいです!初めて見ました…」

「大人のお話中だ。後にしな」

 

 わたしを嗜めたマキ江さんが社長に向き直る。

 

「外部に音が漏れないよう結界を張りました。これで話を聞かれることはありません」

「何を話そうと言うのだね?」

 

 マキ江さんがよう華さんに目配せする。頷いたよう華さんが社長が座るデスクに近づき、その上に持ってきたファイルを開いて置いた。

 

「とも子ちゃんがこれまで納品してきたアイテムのリストとその買取金額、それと…とも子ちゃんの給与明細です」

「なっ!?どこでこんなものを!?」

「事務のおばさまに見せて、とお願いしたら見せてもらえました」

 

 流石よう華さん。こんなにかわいに子にお願いされたらわたしだって見せちゃう。

 

「ご存知とは思いますが、アイテムの正規販売金額は迷宮基本法によって定められています。このリストにあるアイテムの総額をざっと計算すると…こうなります」

「こ、こんなに…!?」

 

 よう華さんが叩いた電卓に映し出されているのは見たこともないような大金。

 

 神器を売らなくても施設の建て替えとかできる額だ。

 

「なのに当の本人はボロアパート住まい。とてもではないが、適切な報酬が支払われているようには見えない」

「販売額のいくらかは会社の取り分だ。満額を支払うわけがないだろう」

「取り分を差し引いても、適正な給与を支給しているとは言えませんねぇ」

「ぐっ…!」

 

 マキ江さんの追及に社長もタジタジだ。

 

「それなりに高級素材を仕入れているにも関わらず、ここ数年の御社の売上にはさほど変化はない。彼女が仕入れたアイテムはどこに流れ、その売り上げはどこに消えているのやら」

「…」

 

 マキ江さんもデスクに近づき、デスクに手を置いて社長に顔を近づける。

 

「昨日の配信でとも子さんは18歳だと茶羅之助が言っていました。しかし、探索者免許は通常18歳にならないと交付されません。それなら、3年前から納品の記録があることと矛盾しますよねぇ?」

「何が言いたい…?」

 

 

 

「お前さん…()()()()()、やってるね?」

 

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