ブルーアーカイブ_メインストーリー_Low%RTA_19時間11分45秒   作:蟻広

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エデン条約編だけじゃなくて、メインストーリー全部のRTAにしたらその分ネタも思いつくかと思ったけど、まったく思いつかないから少し後悔してる


間狂言(インテルメディオ)1 ―― (ほし)の宿りは、(つら)なり、張る

私、道行(みちゆき)モノがその不思議な少女と出会ったのは、まだ桜舞う入学したばかりのころだった。

私は豪勢な廊下を歩みながら教室へと向かう。豪奢な廊下だ。当時の技術の粋を集めて作られたことが一目でわかる。到底学生の学び舎、それも銃に手榴弾など、物騒なものを携えた若者の居場所に相応しいとは思えない。実際何度も破壊されていると云うのに、ティーパーティーは同じことを何度も繰り返す。実に滑稽だ。

 

はあ。

思わずため息が漏れる。先ほどまでの高尚な考えは、目の前の現実を覆い隠すためのイチジクの葉だと自覚したが故のものだ。目の前では、至る所にうじゃうじゃと、蜂のように生徒がいる。そのどれもが誰かしらと喋っていて、一人の者は殆どいない。私はふと何の気なしに隣を見遣る。ぽっかりと空間が開いている。私は前を見る。生徒でぎちぎちに詰まっている。暑くないのか不思議に思うほどだ。再び横を見る。誰かここに入ってきてと主張しているかのように私の周りには空間が開いている。

 

私は頭を振って、嫌われているんじゃないかとの妄想を振り落とす。私はそこまで女々しくなったつもりはない。私は顔を上げ、再び教室へと歩き出す。

 

教室に着いた時、私の顔は完全に下を向いていた。私にとって行き交う人がみんな誰かしらと話しているという光景は少しばかり衝撃的だったのだ。私は些か乱暴に扉を開け、席に着いた。教室の中でも様々な人がくっちゃべっている。

アーメン

私は心の中で天を仰ぎながら祈った。なぜ、神は私のようなものをお造りになったのだろう。神が最初にお造りになった人類の始祖、アダムとか云う男だってエバと云う妻がいたのだ。人は一人では生きていけぬ、二人が必要なのだ。それなのに私は一人だ。神の何らかの意図あっての事だろうか。

 

そんなことをつらつらと考えながら、私は目の前の会話を見る。そのまま、例えば私がその会話に参加していたらどうだろうかと、妄想を膨らます。

…私なら、それにはこう返すな。私なら、答えれるんだけどな。

胸の中には実に虚しい寂寥感が広がる。だが、それを止める事は出来ない。私が思い浮かべる回答は、どれも現実よりも良いものだ。質問に対する答えなら、より正確に、より面白い答えを思い浮かべる。そうでないのなら、私はあくまでわき役に徹し、相手を引き立てる事も出来る。それによって私は、あの喋っている奴よりも凄いのだと、ちっぽけな自尊心を満たすのだ。

 

―――そんなことをしているから、友人も出来んのだ。第一お前はどれ程会話できる?妄想はしょせん妄想だ。お前が会話に実際に参加していたとして、本当にお前は上手く答えれるのか?違うだろう。お前の声は聞き取りづらい。お前の答えは要領を得ん。お前は良くパニックを起こし、人に迷惑をかける。お前が優れている点など、何一つありやしないのに。妄想だけで満たせるとは何とも羨ましい自尊心だ。私もそれくらい謙虚でありたいものだよ。

 

頭の中で、私の中で手厳しい評価が下される。これもまた私の妄想だ。ずいぶん面倒な性格だなと自嘲しながら、私は授業に向けて準備を進める。

 

教科書を出し、ノートを出す。ひたすら下を向き、手の中のペンを握る。

最低限の確認を終わらすと、あとはもう自由時間と云って良い。お気に入りの本を取り出し、読み進める。周囲から音が消える。ほとんど深海に潜ったような静けさだ。それほど深く集中しているのだ。私の脳裏には、活字が泳ぎ、文章が映像となって、音声となって、私の理解を助けてくれる。ぬるぬる動くアニメーションに、毎度のごとく感心を送りながらも、ちらと目に映った他の生徒たちの存在によって、私は一気に現実へと戻らされる。

 

はあ。もう一度ため息をつく。何となくみじめな気分だ。彼女たちが話している内容と云うのは、本当に他愛もないことだ。そんなことをして時間を浪費する彼女たちより、その間も知識を蓄えている私の方が有意義なはずなのに、なぜか空虚さを覚える。

 

はあ。三たびため息をつく。

授業が始まるころだ。私はBD(ブルーレイディスク)を端末に入れ、授業を受ける。

無味乾燥な音声と映像が、私の目と耳を通り抜ける。驚くほどつまらない授業をbgmにしながら、私は教科書と辞書を開いて勉強を進める。

 

基本は教科書を参考にしながら、いまいち納得のいかないところは辞書などを開き、ごくまれにBDなども使いながら、何とか一通り学び終える。その努力が何を意味するかも分からずに。

これをあと何回か繰り返さなければならない。

私はこの無味乾燥とした生活に早くも飽き始めていた。

 

休み時間だ。だがそれも、私にとっては休みとはならない。目の前ではまた生徒たちが好き放題に喋っている。それを横目に、私はただ下を向く。人とは一人では生きていけぬという。では、私はどうやって生き延びているのか。この孤独の海の中で、私は何を頼りに泳ぎ続けているのか。

 

アーメン、私は思う。意味などないのだ。かつて哲学書の中にて見えたvanitas vanitatum et omnia vanitas(虚無は虚無なり、故に全き虚無なり)という言葉が私を支配する。

 

自分でも意味の分からない哲学的問答を、自分の中で行って自尊心を満たす。

また授業が始まった。つまらない。空虚だ。その次にはまた休み時間だ。それが終わるとまた新しい一日が繰り返されるのだ。

嗚呼、くそったれ。

 

私は何とか昼休みまで耐え忍び、お弁当を取り出す。

 

――結局のところ便所飯だとか階段の謎スペースでの食事とかは幻想なのだ。

便所飯…理解できない。なぜそんな汚いところで食べるのか。しかも弁当をもってトイレから出るところを見られたら、私はもう終わりだ。きっと行うものは破滅願望でも持っているのだろう。

階段の謎スペースでの食事だって、幻想に違いない。だって目立つではないか。もし発見されでもしたら、ほとんど確実に話しかけられる。この学校はお節介焼きが多いのだから。

本当のボッチと云うものは、イヤホンを耳にさし、周りの会話から耳と目を逸らしながら、教室の隅っこで目立たないように縮こまって弁当を食べるのだ。

 

私のあまりの情けなさにほろりと涙していると、突然肩を叩かれる。何か提出物に不備でもあったのだろうか。

いやいや振り返ると、そこにいたのは予想に反し、女生徒であった。それも、色々な人と話している(私の中で)有名な人だ。伝言か、そうでないとしたら私とも話したいと云う事なのだろうか。だとしたら、何というか、とてつもなく奇特な人だ。

 

私は「何かご用ですか」と声をかける。主に先生からの指名という形で鍛えられてきた私の喉は、とりあえず普通に声を出してくれた。どもってもいない。素晴らしい。

女生徒は何でもないかのように、「いや、ちょろそうだったから一寸ね」と応える。

 

わお。

何とも素直な事だ、全くもって羨ましい。ここまで素直に思ったことを口に出せると云うのが人気の秘訣だと云のだろうか。

 

女生徒は自分の云った事に気付いたようで、顔を赤くしながら「…あ、違う!」と叫んだ。だが覆水盆に返らず。あたりの空気はまるで凍っているようだ。周囲で喋っていた他の生徒も、私たちの方を見ている。

「い、いや、違うんだよ!?ちょろいじゃなくて...そう!ずっと一人だったし話しかけやすそうだったし、それに、いつも話してる人の方を見てたりするからね、その、ね?」

自分で自分の首を絞めている。

言い訳としてずっと一人でいたからは果たしてどうなのだろうか。

 

「何が違うんです?」私は肩をすくめて云う。

女生徒は手を振り、頭を振り、言葉を探している。口は金魚のごとくパクパクと酸素を求め、手は髪をかきむしる。その様子が妙に滑稽で、私は思わず笑ってしまった。

「取り敢えず、自己紹介しましょう。私は道行モノと云います。よろしく」

女生徒は目を輝かせながら、そうそう、こういうのでいいんだよこういうのでと大仰に呟いてから「私は堀本モエ。普段は萌え~って呼ばれてるよ!ちなみに嘘だよ!」と、勢いだけで喋っているような自己紹介をした。

 

私が無反応なのを、理解していないと判断したのか、モエは「あ、さっきのは私の鉄板ネタだよ!萌え~っていうのは…」と解説しだした。

私は単に理解したうえで返さなかっただけだ。「そうですか」とだけ云うと、彼女の勢いを持て余した私は、再び目の前の弁当に視線を戻し、会話を打ち切る。だがモエは、一向に引く気配を見せない。

 

「……って、そこで終わり!? もうちょっとリアクションしようよ!」

モエは私の顔をじっと覗き込む。その目は、何かを確かめるように鋭い。

 

「御冗談を。いったい何に反応しろと云うのですか?あのつまらないギャグについてですか?」ちょろいと云う言葉の復讐も兼ねて、素直に思ったまでを伝える。彼女はぽかんと口を開けていたが、次の瞬間にはまた笑みを浮かべた。

何となくうすら寒いものを感じる笑みだ。

 

「いいね」

たった一言そう呟くと、いきなり距離を詰めて近くの椅子を引きながら、一緒にご飯食べていいかなと聞いてきた。

 

拒否しても無理やり一緒に食べそうな勢いだ。

嗚呼、だがしかし、やはり私は彼女の言う通りちょろいのだろう。私は今、常識で考えれば拒否すべきだのに、頷きそうになっているのだ。

 

…結局、私はその提案に頷いてしまった。今までボッチだった私は、いかにかっこつけようと友人と二人での食事という憧れのシチュエーションの誘惑には勝てなかったのだ。

アーメン。神よ、私に強い心をください。

とはいえモエとの会話では、気を使う必要が無いのだ。もちろん彼女が最初にとんでもない事を云ったと云うのもあるが、彼女はことある毎に私が気を使わないようにさりげなく配慮してくれるのだ。そのおかげで私は今、声は小さくない。答えも明瞭だ。パニックも起こしていない。

 

まあとどのつまり、陳腐な表現をするなら、彼女は優しいのだ。捻くれた冷笑家である私をそのまま否定しない程。もちろん彼女もトリニティらしく、どろどろとした政治闘争が好きらしい。然し彼女は、書類の上ではどんな虐殺であろうと指示できるが、実際に目の前で行われることに関しては、ちょっとしたいじめであろうと、それがどれほど重大な意味を持っていようと我慢できないと云うような、小市民的な部分を持った人物なのだ。

 

「ちょっとねえ、さっきから聞いてるの?...もういいよ」

おっと、少し上の空になっていた。私は謝罪しながら思っていたことを素直に口に出す。それでどうにか誤魔化せないかと思ってのことだ。

「聞いてましたよ。ただ、モエさんは優しいなと思っていまして」

「ふーん、あっそ。それよりもさ、モノちゃんはいつも本読んでるけど、何読んでるの?」

その目論見は上手くいったらしい。口では興味なさげだが、口角は嬉しそうに上がっている。

私は彼女の問いに、かっこつけて哲学書と返そうかとも思ったが、折角だし彼女の好きそうな漫画を挙げることにした。何というか、この相手を思いやる感じ、陽キャっぽい気がする。少しうれしい。

「あー...ジョジョです。読みます?面白いですよ」

彼女は目を輝かせながらおー!読みたい読みたいと云って、ジョジョ立ちを披露した。

適当な事をべらべらと喋りながら過ごした昼休みは、朝までとは比べようもない程早く過ぎて云った。




アニメとかだと、セリフだけで読者の解釈にゆだねます的なシーンが一番好き。でも小説だとそれやると台本形式になる。一回やってみようかな...
裏話はもう一回書きます。その後はRTA。

あとジョジョを登場させたのは最近ジョジョを読み直したからです。特に意味はありません。
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