ありふれた天才錬金術師は世界をビルドする   作:仮面大佐

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第3話 オルクス大迷宮と仲間との別離

 ハジメと香織、壮馬と雫のやり取りの翌日、一行はオルクス大迷宮へと向かう。

 オルクス大迷宮の正面入り口は、まるで博物館の入場ゲートのようなしっかりした入口があり、受付窓口まであった。

 制服を着たお姉さんが笑顔で迷宮への出入りをチェックしている。

 ここでステータスプレートをチェックし出入りを記録することで死亡者数を正確に把握する為だ。

 戦争を控え、多大な死者を出さない措置だ。

 入口付近の広場には露店なども所狭しと並び建っており、それぞれの店の店主がしのぎを削っており、まるでお祭り騒ぎのようだった。

 浅い階層の迷宮は良い稼ぎ場所として人気があるようで人も自然と集まる。

 馬鹿騒ぎした者が勢いで迷宮に挑み命を散らしたり、裏路地宜しく迷宮を犯罪の拠点とする人間も多くいたようで、戦争を控えながら、国内に問題を抱えたくないと冒険者ギルドと協力して王国が設立したようだ。

 入場ゲート脇の窓口でも素材の売買はしてくれるので、迷宮に潜る者は重宝しているらしい。

 そんな中、壮馬達はオルクス大迷宮へと入っていく。

 オルクス大迷宮の中は、外と打って変わって、縦横五メートル以上ある通路は明かりもないのに薄ぼんやり発光しており、松明や明かりの魔法具がなくてもある程度視認が可能だ。

 緑光石という特殊な鉱物が多数埋まっているらしく、【オルクス大迷宮】は、この巨大な緑光石の鉱脈を掘って出来ているようだ。

 一行は隊列を組みながらゾロゾロと進む。

 

『…………やっぱり、知識を確認しておいてよかったな。ある程度の前情報は必要だろうし』

 

 壮馬はそんな風に思っていた。

 オルクス大迷宮に向かう前に、色々と確認していたのだ。

 しばらく何事もなく進んでいると広間に出た。

 ドーム状の大きな場所で天井の高さは七、八メートル位はあった。

 その時、物珍しげに辺りを見渡している一行の前に、壁の隙間という隙間から灰色の毛玉が湧き出てきた。

 それを見たメルド団長が口を開く。

 

「よし、光輝達が前に出ろ。他は下がれ!交代で前に出てもらうからな、準備しておけ!あれはラットマンという魔物だ。すばしっこいが、たいした敵じゃない。冷静に行け!」

 

 メルド団長はそう指示する。

 ラットマンとは、灰色の体毛に赤黒い目が不気味に光っていて、ラットマンという名称に相応しく外見はねずみっぽいが、二足歩行で上半身がムキムキだった。

 八つに割れた腹筋と膨れあがった胸筋の部分だけ、まるで見せびらかすかのように、毛がない。

 それを見た女性陣は顔を顰めた。

 ラットマンに対して、光輝、雫、龍太郎の三人で迎撃する。

 その間に、香織、恵里、鈴が詠唱を開始して、魔法を発動する準備に入る。

 訓練通りの堅実なフォーメーションだ。

 

「ハァァァァァ!」

 

 光輝は、王国が管理するアーティファクトの一つである聖剣を振るって、倒していく。 

 それは、光属性の性質が付与されており、光源に入る敵を弱体化させると同時に自身の身体能力を自動で強化してくれるという代物だった。

 

「ふっ!おらっ!」

 

 龍太郎は、天職が拳士というのもあり、籠手と脛当てを付けている。

 これもアーティファクトの一種で、衝撃波を出すことができ、また決して壊れないのだという。

 

「ふっ!はっ!」

 

 雫は、手に持っている刀を振るい、一瞬でラットマンを倒していく。

 

「「「暗き炎渦巻いて、敵の尽く焼き払わん、灰となりて大地へ帰れ――〝螺炎〟」」」

 

 そこに、香織達が発動した魔法によって、ラットマンは倒されていく。

 いつの間にか、ラットマンは全滅していた。

 

「ああ~…………うん、よくやったぞ!次はお前等にもやってもらうからな、気を緩めるなよ!」

 

 それを見たメルド団長は、苦笑しながらそんな風に言う。

 すると、香織達に話しかける。

 

「それとな……今回は訓練だからいいが、魔石の回収も念頭に置いておけよ。明らかにオーバーキルだからな?」

 

 メルド団長の言葉に、香織達魔法支援組は、やりすぎを自覚して、思わず頬を赤らめるのだった。

 それを見ていた壮馬は。

 

『…………今の所、順調か。何が起こるか分からないから、気をつけないとな』

 

 そんな風に警戒をしていた。

 そんな感じに進んでいき、一行は一流の冒険者か否かを分けると言われている二十階層にたどり着いた。

 

「よし!今度は、南雲と桐生が前へ出ろ!今回の魔物は少し強いぞ!」

「「はい!」」

 

 メルドは、ハジメと壮馬にそう話しかける。

 ハジメはナイフを、壮馬はドリルクラッシャーを持つ。

 2人に向かって、魔物が向かってくると。

 

「はっ!ハアッ!」

「ふっ!はっ!」

 

 ハジメは錬成で魔物の身動きを止めつつ、ナイフで仕留めていく。

 壮馬は、ドリルクラッシャーを手に、ブレードモードとガンモードを的確に使い分けて、魔物を倒していく。

 それを見ていたメルド団長は、2人に話しかける。

 

「やるじゃないか、2人とも」

「いえ。光輝や壮馬に、色々と教えてもらったりしてるので」

「ああ。俺や光輝が色々と教えてるさ」

「そうか。2人共、ご苦労だった!一旦列に戻れ」

 

 メルド団長がそう話しかけると、ハジメと壮馬はそんな風に答える。

 メルド団長に言われて、2人は列に戻る。

 

「お疲れ様!二人ともすごいかっこよかったよ!」

「えへへ。ありがとう」

「よくやったな。流石は俺の親友達だ!」

「だろ?」

「調子に乗らないの」

「やれやれ……………」

 

 壮馬とハジメが列に戻ると、香織、光輝、雫、恵里とそんな風に話す。

 そんな和やかな雰囲気の中、檜山は。

 

「ちっ!無能のくせに…………」

 

 面白くなさそうに、小声でそう呟く。

 そして、一行は先へと進んでいく。

 しばらく進むと。

 

「……あれ、何かな? キラキラしてる……」

 

 香織はそんな風に言い、香織の言葉に、全員が香織の指差す方へ目を向けた。

 そこには、青白く発光する鉱物が花咲くように壁から生えていた。

 まるでインディコライトが内包された水晶のようである。

 香織を含め女子達は夢見るように、その美しい姿にうっとりした表情になっていた。

 

「ほぉ~、あれはグランツ鉱石だな。大きさも中々だ。珍しい」

 

 それを見たメルド団長はそんな風に言う。

 グランツ鉱石とは、言わば宝石の原石のような物だ。

 特に何か効能があるわけではないが、その涼やかで煌びやかな輝きが貴族のご婦人ご令嬢方に大人気であり、加工して指輪、イヤリング、ペンダントなどにして贈ると大変喜ばれるらしい。

 求婚の際に選ばれる宝石としてもトップ三に入るとか。

 

「素敵…………」

「本当…………」

「ええ」

 

 香織、恵里、雫の3人は、メルドの簡単な説明を聞いて頬を染めながら更にうっとりとする。

 そして、誰にも気づかれない程度にチラリとそれぞれの愛している人に視線を向けた。

 それを見ていたハジメ、光輝、壮馬は。

 

「なあ、なんか怪しくないか?」

「確かに…………あんな物が剥き出しだなんて…………」

「なんか、嫌な予感がするな」

 

 そんな風に話していた。

 グランツ鉱石という物が、なかなかの大きさで、しかも剥き出しになっているというのが、怪しさを出していたのだ。

 すると。

 

「だったら、俺らで回収しようぜ!」

 

 そんな風に言いながら、檜山はグランツ鉱石に向けて、ヒョイヒョイと崩れた壁を登っていく。

 

「こら!勝手なことをするな!安全確認もまだなんだぞ!」

 

 メルド団長は止めようとするが、檜山は無視して、グランツ鉱石に向かっていく。

 すると、騎士団員の1人が、罠を見破るフェアスコープでグランツ鉱石の周囲を見ると。

 

「団長!トラップです!」

「ッ!?」

「バカ!今すぐ戻れ!」

「早く戻るんだ!」

「あ?」

 

 騎士団員がそう言い、メルド団長が驚くと、壮馬と光輝はすぐにそう叫ぶ。

 だが、時すでに遅く、檜山はグランツ鉱石に手を触れてしまった。

 すると、グランツ鉱石は光りだし、魔法陣が部屋全体に広がっていく。

 

「くっ、撤退だ! 早くこの部屋から出ろ!」

 

 メルド団長の言葉に生徒達が急いで部屋の外に向かうが、間に合わなかった。

 部屋の中に光が満ち、壮馬達の視界を白一色に染めると同時に一瞬の浮遊感に包まれる。

 ハジメ達は空気が変わったのを感じた。

 次いで、ドスンという音と共に地面に叩きつけられた。

 メルド団長を始めとする人たちは、立ち上がって、周囲を警戒する。

 檜山が触れたのは、転移させる魔法陣が仕込まれていたトラップだった。

 一行が転移した場所は、巨大な石造りの橋の上だった。

 ざっと百メートルはあり、天井も高く二十メートルはあった。

 橋の下は川などなく、全く何も見えない深淵の如き闇が広がっていた。

 まさに落ちれば奈落の底といった様子だ。

 橋の横幅は十メートルくらいありそうだが、手すりどころか縁石すらなく、足を滑らせれば掴むものもなく真っ逆さまだ。

 一行はその巨大な橋の中間にいた。

 橋の両サイドにはそれぞれ、奥へと続く通路と上階への階段が見える。

 それを確認したメルド団長は。

 

「お前達、直ぐに立ち上がって、あの階段の場所まで行け。急げ!」

 

 そんな風に叫んで、生徒達は階段へと向かって走っていく。

 だが、現実は非情だった。

 階段側の入り口に魔法陣が現れて、そこからトラウムソルジャーと呼ばれる骸骨兵が多数現れる。

 しかも、その数は更に増えていった。

 そして、反対側の通路にも魔法陣が現れ、何かが現れる。

 現れたのは、体長十メートル級の四足で頭部に兜のような物を取り付けた魔物だった。

 それを見たメルド団長は。

 

「まさか………ベヒモスなのか…………!?」

 

 そんな風に呟いた。

 すると、そのベヒモスは咆哮する。

 それを見た光輝は。

 

「…………メルド団長!皆を頼みます!」

「待て!?今のお前達では…………!?」

 

 光輝はすぐにベヒモスの方へと向かっていってしまう。

 メルドは止めようとしたが、後ろの生徒達がトラウムソルジャーに襲われそうになっているのを見て、叫んだ。

 

「アラン!生徒達を率いてトラウムソルジャーを突破しろ!」

「メルド団長。俺たちがベヒモスを足止めします。なんとか光輝を連れていくんで、撤退の指示をお願いします」

「いや、これ以上、勝手な事は………!?」

「お願いします!」

 

 メルドはそんな風に指示を飛ばす。

 すると、壮馬がそんな風に声をかける。

 メルドは渋ったが、ハジメはそう叫ぶ。

 メルドは苦渋の決断の末、口を開いた。

 

「…………分かった。頼んだぞ」

「了解!」

 

 メルドはそう言い、壮馬とハジメは、光輝の方へと向かう。

 すると、壮馬はビルドドライバーを装着する。

 

「変身するの?」

「そうでもしなきゃ、突破出来ないだろ!さあ、実験を始めようか!」

 

 ハジメがそう聞くと、壮馬はそう叫んで、フルボトルを振り、ビルドドライバーに装填する。

 

ラビット!タンク!

ベストマッチ!

 

 その音声が鳴ると、壮馬はビルドドライバーのボルテックレバーを回転される。

 すると、壮馬の周りにスナップライドビルダーが出現して、トランジェルソリッドが注入されて、アーマーの形になる。

 すると。

 

Are(アー) You(ユー) Ready(レディ)

 

「変身!」

 

 そんな音声が鳴ると、壮馬は走りながらそう叫ぶ。

 すると、アーマーが壮馬に挟まり、姿が変わる。

 

鋼のムーンサルト!ラビットタンク!

イェーイ!

 

 壮馬は仮面ライダービルド・ラビットタンクフォームに変身する。

 一方、光輝は。

 

「ぐっ…………!?強い…………!!」

 

 光輝はベヒモスを抑えようとしたが、劣勢に追い込まれていた。

 そして、光輝は後方に気づいた。

 皆がトラウムソルジャーに襲われている事に。

 

「皆!くっ!?」

 

 光輝がそう叫ぶが、光輝の周りにもトラウムソルジャーが現れる。

 すると。

 

「ハァァァァァ!」

「はっ!」

 

 ハジメと壮馬が、トラウムソルジャーを蹴散らしながら、やってきた。

 その際、錬成で壁を作って、ベヒモスの足止めをした。

 

「ハジメ、壮馬!どうしてここに!?」

「話は後だよ!とにかく、光輝もメルドさんの所に!」

「で、でも!?」

「トラウムソルジャーが現れて、皆がパニックになりかけてる!それをどうにか出来るのは、お前だけだろ!」

「っ!」

 

 光輝が戸惑うと、ハジメはそう言う。

 光輝はそう言いかけるが、壮馬はそう諭す。

 それを聞いた光輝は、己の頬を叩くと、立ち上がる。

 

「…………分かった。その代わり、2人もちゃんと戻ってくるんだ」

「分かってる。ハジメも絶対に連れていくさ。撤退が完了したら、合図を送ってくれ」

「ああ!」

 

 光輝は己のやるべきことをやる為に、そんな風に言う。

 壮馬がそう言うと、光輝は皆の方に向かっていく。

 すると、ベヒモスが壁を破壊して、咆哮する。

 

「よし。俺が引きつける。ハジメは援護を頼む!」

「ああ!」

 

 2人はそう話すと、ベヒモスへと向かっていく。

 光輝は無事に辿り着くと。

 

「ハァァァァァ!」

 

 すぐに、トラウムソルジャーを倒す。

 

「光輝!2人は!?」

「何とか、ベヒモスを抑えてる!俺たちは2人の為にも、早く離脱しよう!メルドさん、頼みます!」

「お、おお!あの2人のためにも、早く離脱するぞ!」

 

 雫がそう聞くと、光輝はそう叫び、メルド団長もそう叫ぶ。

 光輝やメルド団長達がトラウムソルジャーを倒していき、すぐに階段の方へと向かっていく。

 ハジメと壮馬は。

 

「はっ!壮馬!」

「サンキュー!ハアッ!」

 

 ハジメは錬成でベヒモスの気を引くと、壮馬はドリルクラッシャーで銃撃をしていく。

 2人はヒットアンドアウェイの要領で、ベヒモスの動きを止めていた。

 そんな風にしていると。

 

「万翔羽ばたき、天へと至れ――〝天翔閃〟!」

 

 そんな叫び声と共に、斬撃波が飛んできて、ベヒモスが大きく怯む。

 

「今だ!早く戻ってきてくれ!」

「急いで!」

「おう!ハジメ、戻るぞ!」

「分かった!」

 

 光輝と雫はそんな風に叫ぶ。

 既にトラウムソルジャーは全滅しており、階段の方に戻る事が出来ていた。

 それを見た壮馬は、ハジメの手を掴み、走っていく。

 生身のハジメと変身している壮馬では、走力に差があるからだ。

 すると、ベヒモスは憤怒の気配が入った咆哮をして、壮馬達を追いかける。

 

「あの2人を援護する!準備は良いか!?」

「はい!」

 

 メルド団長がそう言うと、生徒達は魔法を放っていく。

 ベヒモスは、それを受けて怯む。

 2人が走っていると。

 

「ハジメ君!壮馬君!」

「香織、待って!」

 

 我慢できないと言わんがばかりに、香織は2人の元に走っていく。

 

「おい、何してんだ!?早く戻…………!?」

 

 それを見た壮馬は走りつつも、そう叫ぶ。

 だが、それでは終わらなかった。

 何故なら、ベヒモスに向かっていたはずの火球の一つが、向きを変えて、壮馬達の方へと向かっていたのだ。

 

『マジかよ!?くっ!?対処しきれない………!?』

 

 壮馬はそんな風に思う。

 ただでさえ、香織が向かってきているのにも関わらず、突如飛んできた魔法に、壮馬は動揺してしまった。

 香織が着くと同時に、魔法は3人にぶつかる。

 

「「うわっ!?」」

「きゃっ!?」

 

 それがぶつかり、3人はベヒモスの方へと飛ばされてしまう。

 さらに、これまでの激闘の影響か、橋にはヒビが走っており、それが決壊した。

 

「うわぁぁぁぁぁぁ!?」

「嘘だろっ!?」

「キャアアアア!?」

「香織!南雲君!壮馬!!」

 

 橋の決壊に巻き込まれ、壮馬、ハジメ、香織、ベヒモスは奈落に落ちていき、雫はそんな風に叫んだ。

 そんな中、壮馬はある事に気づいていた。

 

『…………あいつ、笑ってる………?それに、奴だけやけに蒼白になってんな…………』

 

 それは、皆が唖然となる中、たった1人、邪悪な笑みを浮かべていた男がいた事と、皆よりも顔面蒼白になっている男がいた事だ。

 雫の絶叫が響く中、壮馬達は奈落へと落ちていく。




今回はここまでです。
今回は、奈落に落ちるまでです。
そして、壮馬がビルドに初変身しました。
ベヒモスを抑える事に成功するも、南雲、香織と共に、奈落へと落ちていく。
そんな中、顔面蒼白になる男と、邪悪な笑みを浮かべていた男がいた。
果たして、何者なのか。
次回は、奈落に落ちた壮馬達の話です。
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