ベヒモスからの撤退戦で、ハジメ、香織、壮馬の3人が奈落に落ちてしまった。
その後、光輝達は撤退に成功する。
「お前達…………大丈夫か?」
「はい……………」
「シズシズ、大丈夫?」
「……………ええ、何とか」
メルドがそう聞くと、光輝はそう答える。
谷口鈴がそう聞くと、雫はそんな風に答えた。
全員の雰囲気はかなり重くなっていた。
現実を叩きつけられたからだ。
そして、クラスメイトが3人も奈落に落ちてしまった。
すると。
「何故だ……………何故…………!?」
「…………何してるの?」
「い、いや、何でもねぇよ!」
「恵里?」
恵里が顔面が蒼白になって、何かを呟いている檜山に話しかけると、檜山はそう答える。
光輝が首を傾げる中、檜山の姿を見た恵里は、何か確信を得たのか、口を開く。
「……………君だよね?あの3人に向かった魔法を放ったのは」
「えっ…………?」
「な、何の話だよ!?俺は知らない!」
「僕、見てたんだ。君がハジメと壮馬に向かって、魔法を放つところを。香織も巻き込まれることは、想定外みたいだったけどね」
恵里はそんな風に言う。
雫が驚く中、檜山は誤魔化そうとする。
だが、恵里は冷静にそんな風に言う。
檜山が魔法を放つ一部始終を目撃していたのだ。
すると、メルドが口を開く。
「なっ!?それは本当か!?」
「ええ。この目で見たので」
「アンタ……………!何でそんな事をしたのよ!?同じクラスメイトでしょ!?」
メルドがそう聞くと、恵里はそう答える。
他のクラスメイトも驚く中、雫は檜山に詰め寄る。
すると、誤魔化しきれないと判断したのか、檜山が口を開く。
「お、俺のせいじゃねぇ!全部、あの無能どもがカッコつけようとしたからだ!!アイツらがそんな事をしたから、白崎も巻き込まれたんだ!!俺は悪くない!!」
「あなたって人は…………!!」
檜山は壮馬達に責任を転嫁しつつ、自分の正当性を主張した。
それを聞いた雫は激昂して、檜山を殴ろうとすると。
「ふんっ!!」
「ぐわぁぁぁぁ!?」
直前に、光輝が檜山を殴り飛ばす。
檜山が倒れる中、光輝はメルドに話しかける。
「……………メルドさん。檜山の処遇に関しては、お任せします」
「あ、ああ…………。こればかりは見過ごす事は出来ないな」
光輝は、檜山の処遇をメルドに委ねた。
メルドはそう言うと、倒れている檜山を立たせる。
光輝は雫に話しかける。
「雫。あの3人は生きてる。俺たちは生きている事を信じよう」
「……………そうね」
「行こう」
光輝がそう言うと、雫は何とか持ち直し、恵里の声と共に移動を開始する。
それを見ていた海斗は。
『あ〜あ。何の考えもなしに行うからだ。さて、どうしたものかな…………』
海斗はそんな風に考えて、笑みを浮かべていた。
それに気づいたのか、雫は警戒する様な表情を浮かべる。
その頃、壮馬は。
「イテテテ…………ここ、どこだ?」
変身解除しており、そんな呻き声を出しながら起き上がり、周囲を見渡す。
近くに、香織が倒れていた。
「っ!香織、大丈夫か?」
「ううん…………ここは…………?」
「奈落の底だろうな…………」
壮馬が香織に話しかけると、香織は起き上がる。
壮馬がそう言うと、香織は何かを思い出したかのように口を開く。
「壮馬君!ハジメ君は!?」
「…………いない。落ちる最中に、逸れちまった可能性が高い」
「っ!ハジメ君!返事をして!!」
「待て!」
香織がそう聞くと、壮馬は気まずそうにそう言う。
すると、香織はそんな風に叫ぶ。
それを見た壮馬は、すぐに香織の口を塞ぐ。
「大声を出すな!」
「でも、ハジメ君は1人なんだよ!?すぐに行かないと!!」
「気持ちは分かるが、闇雲に探しても見つからないぞ!…………っ!隠れろ!」
壮馬がそう言うと、香織は涙を流しながら、そんな風に叫ぶ。
壮馬は何かに気づいて、すぐに隠れた。
2人が隠れている場所の近くに魔物が居たのだ。
「あれって…………!?」
「確か…………蹴り兎に爪熊!?ベヒモスが可愛く見えるレベルの奴らばっかだな…………!」
香織が驚く中、壮馬はそう言う。
魔物の生態図鑑で色々と確認していたのだ。
しかも、ベヒモスよりも強い気配を漂わせていた。
香織も気づいたのか、息を潜める。
しばらくすると、魔物は去っていった。
バレずに済んだか…………。
「香織。ハジメの事が心配なのは、俺も同じだ。だけど、あんなに強い魔物も居るんだ。なおさら、慎重に動かないといけないんだ。そうしないと、ハジメを助ける前に、俺たちがやられるからな」
「…………分かったわ」
壮馬がそう言うと、香織も冷静さを取り戻したのか、そう言う。
壮馬たちは、隠れつつ移動を開始する。
その頃、ハジメはというと。
『生きてる…………?それとも、もう死んだかな、僕…………暗くて、何も見えない…………うっ…………どうやら、死んではいないらしい』
ハジメはそんな風に思っていた。
周囲を見渡すと、壮馬と香織の姿はなかった。
「『ここ…………どこだろう?オルクス大迷宮をかなり落ちたはず……………誰も到達した事がない最下層…………という事はないよね?』とにかく、香織と壮馬と早く合流して、戻らなきゃ。上に続く階段を探そう」
ハジメはそう判断して、移動を開始する。
『広い…………今までの階層とはまるで違う』
ハジメはそんな風に思いながら、移動していく。
すると、ある存在が目に入る。
それは、兎だった。
「兎?深い階層ほど、魔物は強くなるはずだけど…………」
こんな所に兎がいた事を訝しんだ。
だが、それはすぐに吹き飛んだ。
その兎に向かって、二尾狼が向かってきたが、その兎はあっさり返り討ちにしたのだ。
「『やばい…………!あの兎、滅茶苦茶強い!』うわっ!?」
その兎の強さを見て、ハジメは逃げようとした。
だが、声を出しながら転んでしまい、兎…………蹴り兎に気づかれてしまった。
『見つかった…………!?』
ハジメがそう思うのも束の間、あっという間に距離を詰められてしまった。
すると、蹴り兎は蹴りを放つ。
だが、ハジメは無事だった。
土煙が上がる中、蹴り兎はハジメの上を見る。
ハジメも釣られて上を見ると、そこには巨大な熊がいた。
蹴り兎はすぐに逃げた。
すると、熊…………爪熊が爪を伸ばす。
「っ!」
ハジメが驚く中、爪熊は斬撃波を放ち、逃げていた蹴り兎の頭と胴体をあっさり切断した。
「あぁぁ…………!?あぁぁぁぁぁ…………!?」
ハジメは恐怖した。
格の違いに。
爪熊は、倒した蹴り兎の肉を喰らっていく。
「あぁぁぁぁぁ!!『餌だ…………狩られるだけの獲物なんだ…………!僕も…………!』うわぁぁぁぁ!!」
爪熊が蹴り兎の肉を食べる中、ハジメは現実を嫌というほど実感して、逃走する。
だが、爪熊は逃してはくれず、先程の斬撃波を放つ。
それにより、ハジメの左腕が切断される。
「ごはっ…………!?わぁぁぁ!?僕の左手…………!?」
ハジメが血を吐く中、爪熊はハジメの左手を拾い上げて、そのまま食べていく。
それを見たハジメは恐怖した。
「僕の腕を食べたぁぁぁぁぁ!?」
ハジメがそう叫ぶ中、爪熊は口から血を垂らしながら、ハジメに近寄る。
すると、ハジメは壁に手を触れる。
「錬成!」
錬成を発動して、壁に穴を開けて、その中に入っていく。
爪熊の方には、地面を隆起させて、壁を作った。
「錬成!錬成!錬成!錬成!」
ハジメは死に物狂いで錬成を発動しまくって、壁を作る。
だが、爪熊はその壁すらも破壊していく。
「来るな!来るな!来るなァァァァ!!」
ハジメは必死に逃げていく。
そのまま逃げていくと、爪熊は諦めたのか、そのまま去っていく。
『…………だ、ダメだ。血が止まらない…………。力が抜けていく…………』
ハジメはそう思いながら、意識を失う。
しばらくすると、垂れてくる水の気配に意識を取り戻す。
「『左手が痛い…………』これは…………神結晶?確か…………長い時をかけて、魔力が結晶化した…………伝説の鉱物……………」
ハジメはある物に気づいた。
それは、神結晶がある事だ。
図書館で読み漁った本に、そんな事が書かれていたのだ。
それを思い出すと。
『そう考えると、壮馬は伝説と言われる神結晶から出る液体状の魔力を再現したってことか。相変わらずだよな…………』
ハジメは苦笑する。
親友の規格外っぷりに。
すると、すぐに現実に引き戻される。
『あんなの…………無理だよ。ベヒモスより強いじゃないか…………!大迷宮なんかに来なきゃ良かった…………!誰か、助けて…………!』
ハジメはそう思う。
だが、誰も助けには来ず、左手が痛みだす。
それと同時に、ある事を思った。
『どうして…………どうして…………どうして、どうして!もういっそ、早く死ね…………!死ね…………!死にたくない…………。死ね…………!嫌だ…………死にたくない………』
ハジメはそんな問答を繰り返していた。
そんな中、左手から出血は続いていた。
『クソッ!左腕がやけに痛い…………!食われちゃって無くなってるのに…………!誰のせいだ?誰が悪い?誰だ…………誰だ…………?誰なんだ…………!!』
ハジメはそう思う。
そんな中、ある事を思い出す。
ベヒモスから、光輝達の元に戻ってくる際に、自分、壮馬、香織に向かって飛んできた魔法があった事を。
『そもそも、僕や壮馬、香織は命を狙われる覚えなんてない。でも、あれは意図的…………殺意を感じた。一体誰が…………?』
ハジメはそう考えた。
すると、答えはあっさり出た。
それは、檜山が犯人であると。
『あいつか…………!でも、何で…………?どうでも良いか…………』
檜山が犯人だと分かったが、すぐにやめた。
どうせ死ぬのだからと。
すると、ある事を思った。
『…………結局、誰も助けてくれない…………。一体、どうすればいい?…………どうして、僕が苦しまなきゃならないんだ。僕が何をした?何故、こんな目に遭ってる?理不尽にこんな所に連れてこられ、クラスメイトには裏切られた…………敵は圧倒的…………こんな絶望しかない所で、俺は何を望んでる?』
ハジメはそんな自問自答をしていた。
クラスメイトに裏切られて、ハジメの心には絶望が満ちていた。
そう考えると、ある事を思う。
「『…………生きて帰る事。うちへ…………!それを邪魔する者は…………全て敵!そうだ………邪魔する者、理不尽を強いる全てを俺は…………』殺す!」
ハジメはそんな風に決意を決めた。
行手を阻む者は全て倒すと。
すると、ある事を思い出した。
『…………そうだ。あの2人は無事なのか?あの2人とも合流しないと…………!絶対に帰るんだ!』
ハジメは、行手を阻む者は倒すが、同じく奈落に落ちた壮馬と香織の事を気にした。
そして、2人と合流すると決めたのだった。
「喉が渇く…………腹も減った…………」
ハジメはそう言うと、近くにあった水を飲んでいく。
「くそっ!こうなったら、魔物でも何でも良い!喰らってやる!」
ハジメはそう決意した。
ハジメは外に出ると、二尾狼をわざと引き寄せて、奥に戻る。
二尾狼がハジメを追うが、途中で落ちる。
錬成で落とし穴を作っていたのだ。
二尾狼が上がろうとすると、ハジメは錬成で二尾狼を埋めていく。
「うっせぇな!こっちは腹減り過ぎてイライラしてんだよ!!」
ハジメは苛立ちながらそう言う。
そこから、錬成した武器で二尾狼を仕留めようとする。
「黙って俺の糧になれ!強い魔物は当然硬いよな!」
そこから、何度も突き刺して、トドメを刺す。
その後、二尾狼を解体して、その肉を食べる。
「想像を超える不味さだな。うっ!?うわぁぁぁぁ!?」
ハジメがそう言うと、突然、ハジメの体に異変が生じる。
「がはっ!?な、何だ…………!?何かが俺を…………侵食していく…………!?うぉぉぉぉぉぉぉ!?」
ハジメはそう悶える。
魔物の肉を食べた事で、毒が体に入り込み、崩壊しようとしていた。
ハジメはすぐに、神水を飲む。
神水は、四肢欠損以外は基本瞬時に治す伝説の薬なのだ。
「うっ!?ぐはっ!?お、治らねぇ!?一体、何がどうなって!?うぉぉぉぉ!?魔物食ったら死ぬんだっけか?うぉぉぉぉぉ!?」
だが、神水を飲んでも、激痛は治らなかった。
すると、髪が白くなっていき、ハジメの体が変わっていく。
しばらくすると、意識を取り戻す。
『神水がなかったらやばかったな…………体がボロボロに砕けて死ぬって話だし…………久しぶりに痛みを感じない。むしろ、軽いくらいだ。一体、俺の体は…………?』
ハジメはそう思うと、壁を使って、己の体を見る。
すると、体は大きく強くなっており、髪が白に染まって、目が赤くなっていた。
「うわっ!?なんか魔物みてぇだ…………ステータスプレートを確認してみるか」
ハジメは己の体の変貌に驚きつつも、ステータスプレートを確認する。
すると、ステータスが上がり、技能も増えていたのだ。
「魔物を食うと一気にレベルが上がるのか。なんか技能も増えてるし…………」
ハジメはそう呟く。
そこから、獲得した新たな技能などを確かめていった。
その頃、壮馬は戦闘はなるべく避けていた。
その理由は、魔物がベヒモスよりも強く、香織を守りながら戦うのはきついと判断したからだ。
食料は、壮馬が念の為に持ち込んだ携帯食料を食べていた。
拠点に関しては、定期的に錬成で壁に部屋を作って、それで凌いでいる。
「…………ハジメ君、無事でいて…………」
「信じるしか無いだろ」
香織はハジメの無事を祈り、壮馬はそう言う。
それから数日が経過した。
壮馬達は奈落を歩いていた。
すると、銃声が響き渡る。
「今の音は!?」
「銃声か?まさか!」
その音が聞こえてくると、2人はそう話し、銃声が聞こえた方に向かう。
その頃、ハジメはというと、更に魔物を食った事でレベルがさらに上がり、色んな技能を獲得していった。
特に、鉱石系の鑑定ができる様になった事が大きく、高い硬度を持つタウル鉱石を使った六連式回転弾倉と弾丸を作り、天雷で加速して発射する拳銃を作成していた。
ちなみに、ドンナーという名前がつけられた。
そして、爪熊のリベンジに挑むのだった。
「よぉ、久しぶりだな。俺の腕は美味かったか?」
ハジメがそう聞くと、爪熊は戦闘態勢を取る。
「そう来なくっちゃな!リベンジマッチだ!殺して食ってやる!」
ハジメはそう叫んだ。
すると、爪熊は爪を伸ばして、ハジメに攻撃しようとする。
「縮地!ハハハっ!そうだ!俺は敵だ!ただ狩られるだけの獲物じゃねぇぞ!!空力!」
縮地で回避すると、ハジメはそう叫ぶ。
そこから、空力で飛び上がる。
爪熊は斬撃波を放ち、ハジメはドンナーを撃つ。
すると、爪熊は再び斬撃波を放つ。
「しまった!?くっ!?」
その斬撃波はドンナーに当たり、ハジメは地面に落ちる。
だが、何もしないわけではなく。
「自慢の逸品だ!注目してくれよ!」
ハジメはそう言うと、ある物を投げる。
それは、爪熊の前に来ると炸裂して、閃光を放つ。
フラッシュグレネードも作成していたのだ。
強烈な光に爪熊が怯む中、ハジメはドンナーをキャッチすると、左腕を撃ち抜く。
爪熊が怯む中、ハジメは爪熊の肉を食らう。
それはまるで、かつての意趣返しとも取れた。
「クソまずい肉…………なのに、どうして他の肉よりも美味く感じるんだろうな?」
ハジメはそう言うと、水筒に入っている神水を飲む。
爪熊がハジメの方に向かおうとすると。
「天雷!」
ハジメは天雷を発動して、爪熊を痺れさせる。
爪熊が尻餅をつく中、ハジメは狙いを定めて、銃撃する。
弾丸は爪熊の脳に直撃して、そのまま爪熊は絶命した。
「…………帰る。絶対に帰るんだ。それを邪魔する者は誰であろうと…………どんな存在だろうと…………必ず…………殺す」
ハジメはそう言う。
すると、壮馬達が到着して、壮馬達の視線には、白髪の隻腕の男と目の前に爪熊が倒れている光景が広がっていた。
「…………っ!ハジメ君!」
「っ!?香織?」
それを見た香織は、すぐにその男の方に向かう。
男も驚いていた。
その男の正体は、南雲ハジメだった。
「良かった…………!無事で…………!」
「お、おお…………『良かった…………』」
「無事だった…………とは言えない見た目だな」
「壮馬か。まあな。色々あってな」
香織が涙を流しながらそう言うと、ハジメは安堵しながらそう言う。
壮馬がそう話しかけると、ハジメはそう言う。
「それにしても、何があったの?その見た目は一体…………?」
「ちょっとな」
香織がそう聞くと、ハジメはそう言い、事情を話す。
壮馬と香織から離れた場所に落ちたハジメは、左腕は爪熊に食べられてしまい、そこから、神結晶と神水が出ている場所を見つけた。
それから、魔物の肉を食べて、神水で魔物の肉の毒による肉体への苦痛や崩壊を癒やしながら、強引にステータスを上げていったそうだ。
その結果、白髪になってしまうが、ステータスがかなり上がったそうだ。
それを聞いた2人は。
「ごめんね…………すぐに合流できなくて…………」
「いや、香織のせいじゃねぇよ」
「そうか…………苦労したんだな」
「まぁな。壮馬も、香織を守ってくれて、ありがとうな」
「ああ」
香織は涙を流しながらハジメにそう謝ると、ハジメはそう言う。
壮馬の同情に対しては、ハジメは香織を守ってくれた事を礼にする。
すると、壮馬は口を開く。
「よし。合流できた事だし、雫達と連絡を取るか」
「連絡って…………?」
「そういえば、ビルドフォンを作ってたもんな」
「まあな」
壮馬はそう言う。
香織が困惑すると、ハジメはそう言う。
壮馬は、ビルドフォンで雫に連絡を取る。
その頃、雫は。
「……………」
雫はビルドフォンを見つめていた。
連絡が来るかもしれないと信じて。
すると、光輝と恵里が部屋に入ってくる。
「雫、そろそろ訓練の時間だ」
「行こう」
「…………ありがとう。今行くわ」
光輝と恵里がそう言うと、雫はそんな風に答える。
すると、ビルドフォンから着信音が鳴る。
「っ!?」
「着信!?」
「っ!」
光輝と恵里が驚く中、雫はすぐにビルドフォンを持って、応答する。
耳に当てると。
「……………もしもし?」
『もしもし?聞こえるか?』
「っ!壮馬!」
「無事だったんだな!」
雫がそう言うと、ビルドフォンから壮馬の声が聞こえてくる。
それを聞いた雫と光輝は、そんな風に叫ぶ。
その頃、壮馬は。
「ああ、何とか無事だ。香織もハジメも一緒にいる。ハジメに関してはちょっと…………無事とは言い難いけどな…………」
『どういう意味?』
「ビデオ通話にするから」
壮馬はそんな風に言う。
壮馬の歯切れの悪い言葉に、雫が訝しげにすると、壮馬はそう言う。
それには、ハジメと香織も同意する。
ビデオ通話モードにすると。
『ハジメ!?その姿は…………!?』
『一体…………!?』
「こんな姿だが、一応無事だ」
「それに関しては、説明するよ」
光輝と雫は、驚愕の表情を浮かべる。
ハジメがそう言うと、壮馬は口を開く。
ハジメに何があったのかを。
壮馬と香織と合流する前に、先ほど、ハジメが壮馬にした説明を3人にする。
『そんな事が…………』
『無茶をしたんだな』
「まあな。生き残る為には、手段を選んでられないからな」
「それで、そっちはどうだ?」
『こっちはね…………』
雫と光輝がそう言うと、ハジメはそう答える。
壮馬がそう聞くと、恵里はそう答える。
あの後、壮馬達に魔法を当てた犯人が、檜山である事が判明して、檜山は独房に入れられる事になった。
王は、神の使徒である勇者一行に死者が出た事が公になると、不安を煽りかねない事から、箝口令を敷いた事。
そんな事を話していった。
それを聞いた壮馬達は。
「やっぱり、犯人は檜山だったか…………」
「何でそんな事を!?」
「ほっとけ。どうせ独房に入れられたんだ。放置しても問題ないだろ」
『そ、そうか…………』
壮馬がそう呟くと、香織が憤慨する。
そんな中、ハジメは興味なさそうにそう言い、光輝はそう言う。
すると、壮馬が口を開く。
「それで、海斗はどうした?」
『園崎か?どうしたんだ?』
「いや、俺たちが落ちる際に、邪悪な笑みを浮かべていたからさ……………何か動きを見せたかなって思って」
『え?そういえば…………』
壮馬がそう言うと、光輝は首を傾げながらそう聞く。
壮馬がそれを伝えると、雫はある事を思い出していた。
それは、オルクス大迷宮から戻った翌日、雫は自主練をしていた。
すると、海斗が何処かへと向かおうとしているのが目に入る。
『海斗?こんな遅くにどこに行くの?』
『少し、用を足しに来たんだよ。君こそ、何をしているんだい?』
『私は自主練よ。腕が鈍っちゃうのは嫌だし』
『そうかい。まあ、せいぜい頑張りなよ』
雫がそう聞くと、海斗はトイレに行くと言う。
海斗の質問に対して、雫がそう答えると、海斗は興味なさげにそう言って、その場から去っていく。
それを見た雫は。
『…………彼は、この現実を受け入れているのかしら。やけに冷静だし…………というより、そっちにトイレなんてあったかしら?』
そんな風に呟いた。
海斗が向かった先には、檜山が入ってる独房があったのだ。
それを思い出した雫は。
『…………もしかして、何か企んでるのかも』
「どういう事だ?」
『メルド団長によると、時折、海斗が檜山と会ってるらしいの。何の話をしてるのかは知らないけど…………』
「あいつ、何してんだ?」
雫がそう言うと、壮馬はそう聞く。
雫は、海斗が檜山とちょくちょく会っているという事を伝える。
ハジメが首を傾げる中、壮馬は口を開く。
「…………分かった。俺たちは迷宮の下に向かう。流石に2人を背負って飛べる自信がないからな。それと、海斗の件については、メルド団長以外には黙っててくれないか?」
『メルド団長にはいいのか?』
「あの人なら信用できる。とにかく、海斗の動向には気をつけろよ」
『ええ』
壮馬はそう言う。
ホークガトリングやロケットパンダなど、飛べる形態は存在するが、どれくらいの深さがあるのか分からず、無事に戻れる保証がない為、下に向かう事にしたのだ。
すると、雫が口を開く。
『壮馬』
「うん?」
『…………私、強くなるから。君に伝えたい事があるの』
「…………分かった。じゃあな」
『…………ええ』
雫はそんな風に言う。
それを聞いた壮馬は、そう言うと、連絡を切る。
すると、ハジメと香織が少しニヤニヤして壮馬を見ていた。
「…………何だよ?」
「いや、別に」
「うんうん!何でもないわよ?」
「…………ったく。とにかく、下に向かうぞ。脱出の手がかりを見つけないとな」
「言われるまでもねぇよ」
「うん」
壮馬がそう聞くと、2人はそう答える。
そうして、壮馬達は迷宮の奥に進んでいく事を決めたのだった。
その頃、海斗は。
「…………さて、進めていくとしようか」
そんな風に呟いていた。
果たして、海斗の目論見とは。
今回はここまでです。
今回は、奈落に落ちた後の話です。
恵里によって、檜山が犯人だと分かり、独房に入れられる事になりました。
そして、ハジメは原作通りの変貌を遂げました。
壮馬達とも合流して、光輝、雫、恵里が生存を知りました。
次回はユエが登場する予定です。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。