ユエという吸血鬼のお姫様を解放して、蠍のような魔物と遭遇して、撃破した壮馬達。
そんな中、壮馬とハジメは、ある物を見つけていた。
「これって…………?」
「映像を記録するアーティファクトの類か?」
「どうしたの?」
「何か見つけたの?」
壮馬とハジメがそんな風に話すと、ユエと香織の2人がやってくる。
「ああ、なんか置いてあったんだ」
「アーティファクトの類かもしれないが………何なんだろう、これ」
「魔力を通してみたら、何か分かるかもしれないよ。ユエが封印されていた部屋にあったから、何か、ユエに関係してるかも」
「私に…………?」
壮馬とハジメがそう言うと、香織はそう言う。
ユエが首を傾げる中、ハジメは。
「まあ、取り敢えず流してみるか」
「そうだな。何か分かるかもしれないし」
ハジメと壮馬がそう言うと、魔力を流していく。
すると、アーティファクトが輝き、ふっと映像を映し出す。
そこに現れた相手を見て、ユエが驚愕に目を見開き呆然と呟いた。
「……おじ、さま?」
「叔父様って…………ユエを封印した張本人だよな?」
「何かのメッセージか?」
ユエはそう呟く。
現れたのは、ユエの叔父だったのだ。
ハジメと壮馬がそう話すと、記録上の叔父様が口を開く。
『……アレーティア。久しい、というのは少し違うかな。君は、きっと私を恨んでいるだろうから。いや、恨むなんて言葉では足りないだろう。私のしたことは…………あぁ、違う。こんなことを言いたかったわけじゃない。色々考えてきたというのに、いざ遺言を残すとなると上手く話せない』
その叔父様はそんな風に言う。
アレーティアという、ユエの本名を言いつつ。
「なんか、予想していた雰囲気と違うな」
壮馬がそう呟く中、記録の叔父は自嘲するような苦笑を浮かべながら、気を取り直すように咳払いをした。
『そうだ。まずは礼を言おう。……アレーティア。きっと、今、君の傍には、君が心から信頼する誰かがいるはずだ。少なくとも、変成魔法を手に入れることができ、真のオルクスに挑める強者であって、私の用意したガーディアンから君を見捨てず救い出した者が』
「……………」
その叔父がそう言う中、ユエはその映像をまっすぐ見ていた。
すると、映像内の叔父が口を開く。
『……君。私の愛しい姪に寄り添う君よ。君は男性かな?それとも女性だろうか?アレーティアにとって、どんな存在なのだろう?恋人だろうか?親友だろうか?あるいは家族だったり、何かの仲間だったりするのだろうか?直接会って礼を言えないことは申し訳ないが、どうか言わせて欲しい。……ありがとう。その子を救ってくれて、寄り添ってくれて、ありがとう。私の生涯で最大の感謝を捧げる』
「叔父様…………?」
『アレーティア。君の胸中は疑問で溢れているだろう。それとも、もう真実を知っているのだろうか。私が何故、あの日、君を傷つけ、あの暗闇の底へ沈めたのか。君がどういう存在で、真の敵が誰なのか』
「真の敵?」
叔父がそう言うと、ユエは困惑していた。
記憶していた姿と違うのだろうか。
ユエの叔父の言葉に、壮馬が首を傾げると、叔父の次の言葉に、壮馬達は言葉を失った。
それは、ユエは神子として生まれたのだが、この世界の神であるエヒト神に狙われていた事。
それに気づいたユエの叔父は、欲に目の眩んだ自分のクーデターにより、ユエを殺したと見せかけて奈落に封印し、あの部屋自体を神をも欺く隠蔽空間としたこと。
ユエの封印も、僅かにも気配を掴ませないための苦渋の選択であったこと。
「そんな…………!?」
「ユエの叔父は、エヒト神からユエを守る為に、封印したって事か…………」
香織が驚きの声を上げる中、壮馬はそう呟く。
無論、ユエも驚いていた。
『君に真実を話すべきか否か、あの日の直前まで迷っていた。だが、奴等を確実に欺く為にも話すべきではないと判断した。私を憎めば、それが生きる活力にもなるのではとも思ったのだ』
「そうだったのか…………」
映像内の叔父がそう言うと、ハジメは納得した様な表情を浮かべていた。
映像内の叔父は、その選択がどれほどの苦渋に満ちている物だったのかを示すかのように、拳を強く握りしめていた。
すると、その叔父は苦しげな表情から泣き笑いの様な表情に変わった。
とても優しく、慈愛に満ちていて、それと同時に、どうしようもない悲しみに満ちた物だった。
『それでも、君を傷つけたことに変わりはない。今更、許してくれなどとは言わない。ただ、どうかこれだけは信じて欲しい。知っておいて欲しい。愛している。アレーティア。君を心から愛している。ただの一度とて、煩わしく思ったことなどない。…………娘のように思っていたんだ』
「……おじ、さま。ディン叔父様っ。私はっ、私も……」
その叔父はそんな風に言い、ユエは涙を流しながらそう言う。
ユエは真実を知った。
自分を守る為に、叔父が動いていたという事を。
『守ってやれなくて済まなかった。未来の誰かに託すことしか出来なくてすまなかった。情けない父親役ですまなかった』
「……そんなことっ」
その叔父がそう謝ると、ユエは首を横に振りつつそう言う。
すると、叔父が口を開く。
『傍にいて、いつか君が自分の幸せを掴む姿を見たかった。君の隣に立つ男を一発殴ってやるのが密かな夢だった。そして、その後、酒でも飲み交わして頼むんだ。『どうか娘をお願いします』…………と。アレーティアが選んだ相手だ。きっと、真剣な顔をして確約してくれるに違いない』
それを聞いて、ハジメ達は黙り込んだ。
叔父は夢見る様に、遠くに眼差しを向けていた。
『そろそろ、時間だ。もっと色々、話したいことも、伝えたいこともあるのだが……私の生成魔法では、これくらいのアーティファクトしか作れない』
「……やっ、嫌ですっ。叔父さ、お父様!」
叔父がそう言うと、ユエは涙を流しながらそう言う。
記録できる時間が迫っていたのだろう。
この叔父からは、深い愛情と悲しいほどに強靭な覚悟が伝わってきたのだ。
『もう、私は君の傍にいられないが、たとえこの命が尽きようとも祈り続けよう。アレーティア。最愛の娘よ。君の頭上に、無限の幸福が降り注がんことを。陽の光よりも温かく、月の光よりも優しい、そんな道を歩めますように』
「……お父様っ」
その叔父がそう言うと、ユエは顔を俯かせる。
その叔父の視線が彷徨う。
まるで、ユエに寄り添う人の事を想像しているかの様に。
『私の最愛に寄り添う君。お願いだ。どんな形でもいい。その子を、世界で一番幸せな女の子にしてやってくれ。どうか、お願いだ』
「…………ああ」
「…………ハジメ君」
その叔父がそう言うと、ハジメはそう答える。
それを聞いて、香織は何とも言えない表情を浮かべる。
すると、その映像が薄れていく。
そして、最後の言葉がこの部屋に響く。
『……さようなら、アレーティア。君を取り巻く世界の全てが、幸せでありますように』
その祈りと共に、映像は終わった。
ユエはハジメに抱きついて、泣き続けていた。
それを見て、壮馬は何とも言えない表情を浮かべていた。
『…………まさかとは思ったけど、エヒト神ってのは、相当やばい存在みたいだな』
壮馬はそう考えていた。
世界の真相の一端を知ってしまったのだから。
しばらくすると、ユエは泣き止んだ。
「…………大丈夫か?」
「うん。ディン叔父様の思いを知る事が出来たから」
ハジメがそう聞くと、ユエはそう答える。
すると。
「……………ハジメ」
「うん?」
「…………私、ハジメの事が好き」
「おっと…………」
ユエは、ハジメに告白した。
それを聞いて、壮馬は予想はついていたが、本当にするとは思わなかったのか、そんな風な反応をする。
それを聞いたハジメは。
「……………俺、実は香織と付き合ってるんだ」
「っ!?」
「でも…………俺としても、ユエを幸せにしたいと思ったんだ。あの人に言われたからじゃ無くて、境遇に共感したというか…………」
「ハジメ…………」
「だから…………その…………香織さん。ユエさんとも付き合ってもよろしいでしょうか………?」
ハジメは、香織と付き合っている事を明かす。
だが、ハジメもユエに惹かれていたという事を明かす。
そして、ハジメは香織にそう聞く。
それに対して、香織は。
「………………」
「無言の圧が怖ぇ…………」
香織は無言でハジメの事を見ていて、背後には般若が現れていた。
壮馬がそう呟く中、香織は口を開く。
「…………顔を上げて、ハジメ君」
「…………はい」
「まあ、私もユエの事は幸せにしてあげたいと思ったから、良いわよ」
「…………え?」
「まあでも、ハジメ君の特別は私なんだけどね」
「さらっとマウント取ったな…………」
香織がそう言うと、ハジメは頭を上げる。
香織は、薄々そんな予感がしていたのか、そんな風に言う。
香織のマウントを取る行動に、壮馬はそう呟いた。
すると。
「…………ん!ハジメの特別は私が貰う!邪魔をしないで!」
「何言ってるのかしら?私がハジメ君の特別なんだけど?」
香織とユエはそんな風に言うと、お互いに睨み合う。
それを見ていた壮馬は、ハジメに話しかける。
「……………ハジメ、頑張れよ!」
「さっきの仕返しと言わんばかりに、いい笑顔で言いやがって…………!」
壮馬はハジメの肩に手を置くと、いい笑顔でそう言い、ハジメは恨めしそうにそう言う。
その後、蠍の肉の解体の続きをしていく。
その間、吸血鬼族について話をしていた。
「確か…………吸血鬼族は、300年前の戦争で滅んだはずだ」
「…………300年前」
「て事は、ユエは少なくとも、300歳以上な訳か…………ううっ!?」
壮馬がそう言うと、ユエはそう反応する。
ハジメがそう言うと、ユエは頬を膨らませていた。
「……………マナー違反」
「ハジメ君?女の子の年齢を聞くのは、タブーなんだよ?」
「ははっ…………」
ユエと香織は、ジト目でハジメを見て、ハジメは視線を逸らす。
すると、救いの手を差し伸べるかの様に、壮馬が口を開く。
「それにしても、吸血鬼って、皆、そんな感じなのか?」
「私は特別。自動再生で歳は取らない」
「ふむ…………不死身の固有魔法か」
壮馬がそう聞くと、ユエはそう言い、ハジメはそう呟く。
「ところで、ユエはここがどこら辺なのか分かるか?地上への脱出の道とか…………」
「分からない。でも…………この迷宮は反逆者の1人が作ったと言われている」
「反逆者?」
ハジメがそう聞くと、ユエはそう言う。
それを聞いた香織がそう聞くと、ユエは答える。
「…………神が治めていた時代に、神に挑んだ、神の眷属の事」
「神に逆らおうとしたってことか?まあ、さっきの話を聞いたら、疑わしいがな」
「世界を滅ぼそうとしたと伝わってる。目論見外れて、反逆者が逃走した場所が、大迷宮」
「じゃあ、ここオルクス大迷宮も………」
「うん。大迷宮の一番深いところに、反逆者の棲家があるみたい」
ユエはそう説明していく。
それを聞いた壮馬達は。
「…………とにかく、そこの最深部に行けば、地上への入り口もあるはずだ。ちょっと、雫達と連絡が取れないか、やってみる」
「おう」
「お願いね」
壮馬がそう言うと、ビルドフォンを取り出して、ハジメはそのまま、何かの作業をしていく。
壮馬はビルドフォンで、電話をする。
すると。
『もしもし、壮馬?』
「繋がったか。俺だ。ちょっと、現状報告をしておこうかなと思ってな」
『無事だったんだな!』
「何度も言わせんなって。ちょっと、とんでも無い事が分かってな」
『とんでもない事?』
雫が対応すると、光輝の声も聞こえてくる。
テレビ通話にしており、部屋には雫、光輝、恵里の3人がいた。
壮馬の言葉に首を傾げると、壮馬は先ほど、ユエの叔父が語った事を伝えていく。
オルクス大迷宮の奈落の底から50階層下がったフロアに、吸血鬼族の姫であるユエが封印されていた。
その理由は、エヒト神に狙われていたユエを守る為なのだと。
そんな風に伝えると。
『え…………!?それは本当なの!?』
「ああ。エヒト神ってのは、相当やばい存在の可能性が高い。まだ詳細は分からんが、俺たちは、エヒトの暇つぶしとかで呼ばれた可能性は十分にある」
『何だよそれ…………!?俺たちはそんな事の為に日本から呼ばれたのか…………!?』
それを聞いた雫達が驚く中、壮馬はそう言う。
叔父の言葉から、エヒトの本性を察知したのだ。
すると、恵里が口を開く。
『それで、君たちはどうするの?』
「とにかく、オルクス大迷宮の最深部に向かう。そこには、反逆者の棲家があるらしいから、そこに行けば、地上への脱出も出来るかもしれない」
『分かったわ』
『それで…………エヒト神の本性についてはどうするんだ?』
「…………今は伏せておく。エヒトを信仰している人たちからしたら、敵対していると認識されるのはまずいからな」
『…………分かった』
恵里がそう聞くと、壮馬はそう答える。
光輝の質問に対しては、そう答える。
エヒトを信仰している現状では、伝えるのは悪手であると判断したのだ。
すると。
「ユエさん?どうして迫ろうとしてるんですかね?」
「いただきます」
「ちょっ!?ちょっと待ってくれ!?あぁぁぁぁぁぁ!!」
「ちょっと!?ハジメ君に何しようとしてるの!?」
「何やってんだよ、お前ら!?悪い!しばらくしたら掛け直す!」
ハジメにユエが迫っており、それを香織が止めようとするのを見て、壮馬は電話を切る。
それを見ていた雫達は。
「「「あははは…………」」」
3人揃って、苦笑していた。
その後、何とか3人を落ち着かせた壮馬は、ハジメに聞いていた。
「…………ところで、お前は何を作ってんだ?」
「あ?対物ライフルのレールガンバージョン。シュラーゲンだ」
「……………そんなもんまで作っちまったのか」
「お前の仮面ライダーには言われたく無いな」
壮馬がそう聞くと、ハジメはそう答える。
壮馬がそう呟くと、ハジメはそう言う。
お互いに苦笑していると、ユエが口を開く。
「ハジメ達はどうしてここにいる?」
「え?」
「どうして、魔力、直接操れる?」
「へ?」
「どうして、魔物食べられる?そもそも人間?ハジメの左腕は?」
「ちょっ…………ちょっと待て!順番に説明するから待て!」
ユエはそんな疑問が湧いてきたのか、3人に詰め寄る。
そこから、3人は話をしていく。
自分たちがエヒトによって、この世界に召喚された事。
魔人族から人間族を救う為に。
壮馬とハジメは、戦闘には向いていない職業である為、周囲のトータスの人やクラスメイトの一部…………檜山を中心としたメンツ………から蔑まれた事。
オルクス大迷宮には、迷宮攻略の為に来た。
ベヒモス戦の最中、檜山に裏切られ、3人一緒に奈落の底に落ちた事。
生き抜く為に、手段は選ばない事を決めた事。
それらを移動しながら話していくと、ユエは泣いていた。
「ううっ…………ううっ…………!」
「いきなりどうした?」
「ハジメ…………壮馬…………辛い。私も辛い…………」
「ちょっと?私が入ってないんだけど?」
ユエが泣く中、ハジメがそう聞くと、ユエはそう言う。
香織がそう突っ込む中、壮馬は口を開く。
「良いって。檜山も投獄されたらしいし、ぶっちゃけ、クラスメイトに恨みを抱いてなんかいないよ」
壮馬はそう言う。
檜山が投獄された以上、特に復讐する意味が無く、光輝達は信じる事ができるからだ。
「そんな事より、生きる術を磨く事。故郷に帰る方法を探す事。それに全力を注がないとな」
「うん。私も協力するよ」
「帰る?」
「そりゃあ、帰れるなら帰りたいさ。父さんや母さんを心配させてるだろうし」
「そう…………私にはもう、帰る所ない」
ハジメがそう言うと、香織も協力する意思を見せる。
ユエがそう聞くと、壮馬がそう答えると、ユエはそう呟く。
叔父への誤解が解けたとはいえ、帰る場所が無いのは事実なのだ。
それを見たハジメは、口を開く。
「……………なら、ユエも来るか?」
「え?」
「いや、だからさ。俺たちの故郷にだよ。まあ、魔法がない人間の世界だから、窮屈かもしれないけど、どうとでもなると思うし」
「確かに、君の両親って、そういうのをあっさり受け入れそうな気がするよな」
「まあな。まあ、あくまでユエが望むのなら…………だけど」
「いいの?」
ハジメは、ユエに日本に来るかどうかを聞く。
壮馬は、ハジメの両親には何度か会った事があり、ノリの良さから、あっさり順応しそうだと思っていた。
ユエがそう聞くと、ハジメは笑みを浮かべる。
すると、地鳴りが聞こえてくる。
その頃、光輝達の方は。
「ステータス、オープン!」
光輝がそう言うと、メルドは光輝のステータスを見る。
「天之河光輝…………天職、勇者。うん。お前も、さらに力をつけた様だな」
メルドはそう言うと、光輝のステータスプレートを返却する。
メルドは、光輝達に話しかける。
「ここに居るメンバーを中心に、迷宮での実戦訓練が再開される。それぞれ、準備を怠らぬ様に」
『はい!』
「以上だ」
メルドはそう伝えると、去っていく。
それを聞いた一同は、気を引き締めていた。
一方、その頃。
「だぁぁぁぁぁ!畜生!!」
「うぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「きゃあああああっ!!」
「3人とも、ファイト」
「お前は気楽だなぁぁぁ!!」
迷宮の中を、3人は爆走していた。
その理由は、頭に花が生えている魔物に襲われているからだ。
しかも、大量に。
ちなみに、ユエはハジメのリュックの上に乗っかっていた。
「なんなんだよ、あいつらは!殺しても殺しても!次々に現れやがって!!」
「数もどんどん増えてる」
「どうなってんだよ!?ていうか、なんで頭に花を咲かせてるんだよ!?シュールすぎんだよ!!」
「確かに…………」
「フフッ…………ちょっと可愛い」
「可愛くねぇよ!さっきだってあいつらの一匹が…………あ?」
ハジメがそう叫ぶと、ユエはそう言う。
壮馬が後ろの魔物の頭から花が生えている事に突っ込むと、香織はそう良い、ユエはそう言う。
すると、ハジメはある事を思い出す。
それは、魔物の一体が踏みつけていた花と、頭から生えている花が似ていたのだ。
「あの花…………もしかして」
「寄生?」
「ユエもそう思うか?」
「うん。本体がいるはず」
「だとしたら、さっさとその本体を倒すべきだな!このままだと、この階層の魔物全てと戦わなくちゃいけなくなる!それはマジで面倒だ!」
「そうだね。行こう!」
ハジメがそう言うと、ユエはそう聞く。
壮馬と香織もそう言うと、ある穴に飛び込んで、魔物達の追跡を躱す。
魔物達が走り去ると、ハジメ達は穴から出る。
すると。
「…………あむ」
ユエはハジメの首筋に噛みついて、血を吸う。
それから、花を植えつけた本体を探しに行く。
「どこだ…………?本体はどこだ?」
「花の数も増えてるから、近づいているとは思うが…………」
「あむ」
「………………」
ハジメと壮馬がそう話しながら、本体を探していくと、ユエは再び噛み付く。
それを見て、香織は眉毛をピクピクさせ、青筋を浮かべる。
3回目の噛みつきの際に、香織は口を開く。
「…………ユエ?さっきから何をしているのかな?かな?」
「…………不可抗力じゃ」
「嘘だ!ほとんど消耗してないだろ!」
「不可抗力と言うのなら、リュックから降りて、自分で歩いてもらえます?」
香織がそう聞くと、ユエはそう言う。
ハジメがそう突っ込むと、壮馬はそう言う。
しばらく歩くと、先ほどの花が一番多く生えている洞窟が見えてきた。
「あそこが怪しいな」
「…………どうやら、正解みたいだな」
ハジメがそう言うと、壮馬は後ろをチラリと見ながらそう言う。
すると、先ほどの魔物が集まってきていたのだ。
それを見た3人は、洞窟の中へと駆け込む。
すると、魔物が三人を追うが、三人は洞窟の中に入れたのに対して、魔物は入れなかった。
中を進んでいくと、空洞に出てきて、錬成で封鎖する。
「これで、取り敢えず大丈夫だろう」
「お疲れ様」
「そう思うなら、そろそろハジメ君から降りてくれないかな?かな?」
「…………むぅ。仕方ない」
ハジメがそう言うと、ユエは労いの言葉をかける。
香織が降りる様に言うと、ユエは渋々降りるのだった。
ハジメがリュックを下ろす中、
「さて、あいつらはやけに必死だったから、ここに本体がいるはずだ」
「油断するなよ」
「うん」
「ええ」
壮馬がそう言うと、壮馬はドリルクラッシャーを、ハジメはドンナーを持って、周囲を警戒する。
「今の所、気配感知になんの反応もないが…………」
「うん?」
ハジメがそう呟く中、ユエは何かに気づき、残りの三人も気づく。
全方位から緑色のピンポン玉のようなものが無数に飛んできた。
それを見た4人は、一瞬で背中合わせになり、飛来する緑の球を迎撃する。
だが、数が多く、ハジメと壮馬が頷きあうと、錬成で石壁を錬成する。
「…………ユエ。恐らく、本体の攻撃だ。どこにいるか分かるか?」
「……………」
「ユエ?」
「どうした?」
ハジメは錬成しながら、ユエにそう聞くが、ユエから返事が返ってこなかった。
それを訝しんだ香織と壮馬がユエの方を見る。
すると、ユエは三人の方に手を向けていた。
それを見て、驚いていると。
「……にげて……ハジメ!壮馬!」
ユエはそう言うと、何故か魔法を放つ。
三人はすぐに回避する。
「ユエ!?どうしたの!?」
「くそっ!ユエがやられた!多分、本体によって乗っ取られたんだ!」
「さっきの緑の玉か…………!!」
香織が驚きながらそう聞くと、ユエの頭から花が生えてきた。
それを見て、壮馬がそう叫ぶと、ハジメはそう言う。
ユエは、寄生されてしまったのだ。
ユエは再び魔法を放ち、三人は回避すると、花を破壊しようとする。
だが、ユエは花を庇う様に動いた。
三人が攻撃を躊躇すると、ユエは再び魔法を放ち、三人は回避する。
すると。
「うっ!?」
「マジか…………!?」
「きゃっ!?」
三人に緑の玉が当たり、破裂して煙を出す。
緑の煙が三人を包み込むと、ユエの奥から何かが現れる。
それは、頭に大きな花を咲かせた魔物だった。
アルラウネの様な見た目をしていたのだ。
その魔物がユエに近寄り、ユエを包み込む様に左手を触れさせると、ユエは顔を顰める。
すると、ユエと共に壮馬達に近寄る。
まるで、ユエを盾にするかの様に。
「やってくれるじゃねぇか…………!」
「変な知恵、持ちやがって…………!」
ハジメと壮馬がそう呟くと、それぞれの武器を構えるが、アルラウネはユエを盾にしている為、迂闊に攻撃できなかった。
「三人とも…………ごめんなさい」
ユエがそう言うと、魔法を三人に向けて放つ。
「聖絶!」
その魔法は、香織の聖絶によって防がれた。
だが、三人の頭から花が生えてきていたのだ。
「ぐぅ…………!?」
「ううっ…………!?」
「うっ…………!?」
三人がそんな呻き声を出すと、アルラウネは勝利を確信したかの様な笑みを浮かべる。
だが。
「フフフフ…………!フフフフ…………!フフフフ…………!どうした?」
「残念だったな。俺たちは魔物の肉を食って、耐性が出来てるんだ!」
「あなたの思い通りにはならない!」
突如、ハジメが笑いだすと、三人から生えた花が枯れていく。
三人は魔物の肉を食べた事で、耐性を獲得していたのだ。
「やめて!」
だが、アルラウネは三人を始末することに決めたのか、ユエを使って、攻撃していく。
三人は、サイクロプスの肉を食べた事で得た固有魔法である金剛で耐えていた。
すると。
「ハジメ!………私はいいから……撃って!」
ユエは覚悟を決めた表情でそう言う。
それに対して、壮馬と香織は戸惑った。
香織としても、ユエを気に入っているので、攻撃できなかったのだ。
一方、ハジメは。
「え、いいのか?マジで助かるわ!」
「……………え?嘘〜ん……………」
それを聞いて、良い笑顔で躊躇いなく、ドンナーを撃ったのだった。
それを見て、壮馬と香織は呆気に取られていた。
ドンナーから撃たれた弾丸は、ユエの頭の花を貫き、後ろのアウラウネの左腕を吹き飛ばした。
アウラウネは、どこか非難するような目でハジメを見たが。
「お前がそんな目をすんなよ」
ハジメはそう言うと、ドンナーを撃って、アウラウネを撃破する。
ハジメは、ユエに聞く。
「で、ユエ、無事か?違和感とかないか?」
「…………撃った」
「え?撃って良いって言うから」
「お前…………仲間なんだぞ?少しは躊躇わねぇのか?」
「……ためらわなかった……」
ハジメがそう聞くと、ユエはそう呟き、ハジメがそう言うと、壮馬はドン引きするような反応をする。
すると。
「そりゃあ、最終的には撃つ気だったし。狙い撃つ自信はあったんだけど………流石に問答無用で撃ったら、ユエがヘソ曲げそうだし、配慮したんだぞ?」
「そういう話じゃないよ……………」
「……ちょっと頭皮、削れた……かも……」
「まぁ、それくらいすぐ再生するだろ?問題なし」
「うぅ~……」
ハジメはそんな風に言う。
それを聞いた香織は、なんともいえない表情を浮かべて、そう言う。
ユエが頭を摩りながらそう言うと、ハジメは軽い口調でそう言う。
すると、ユエは香織に抱きついた。
香織は何かを思いついたのか、小声でユエと話す。
その後、食事をとる事になった。
「…………ふぅ。何だか、魔物の肉を食べる事にも慣れちゃったね」
「まあ、生き残るためだ。仕方ないだろ」
「ユエも食うか?」
「いらない」
「…………まあ、300年も封印されて生きてたんだからな。飢餓感はないのか?」
香織と壮馬は何気なくそう話す。
ちなみに、サプリは服用済みであり、普通に食べていた。
ハジメがそう聞くと、ユエはそう答える。
ハジメの質問に、ユエは口を開く。
「ある。でも…………もう大丈夫」
「大丈夫って…………何か食ったのか?」
「うん。ハジメの血」
ユエがそう言うと、ハジメはそんな風に聞く。
すると、ユエはハジメを指差す。
「ああ…………ってことは、血を飲めば食事不要ってことか」
「食事でも栄養は取れる。でも…………血の方が効率的」
「なるほどな…………うん?」
ハジメがそう言うと、ユエはそう言う。
すると、ハジメはユエが舌なめずりをしたのに気づく。
「…………何故、舌なめずりをする?」
「ハジメは…………美味」
「えっ!?」
「熟成の…………味」
ハジメがそう聞くと、ユエはそう言う。
それを聞いて、ハジメは逃げようとするが。
「ダメだよ、ハジメ君」
「香織!?な、何するんだ!?」
「本当なら、あんまりさせたくないんだけど…………女の子の心を理解しなかったハジメ君には、お仕置きとして、ユエに血を吸われてね」
「嘘だろ…………!?おい、壮馬!助けてくれ!」
「……………ハジメ、悪いな。俺には無理だ。グッドラック!」
「おい!?勘弁してくれ…………!おわぁぁぁぁぁぁ!!………あ」
香織はハジメを羽交締めする。
香織はお仕置きの一環として、ユエに血を吸わせる事にしたのだ。
壮馬は助けに行かなかった。
結局、ハジメはユエに血を吸われたのだった。
その後、壮馬達は迷宮を更に進んでいく。
そして………………遂に100階層目に到着したのだった。
「…………ハジメ達、いつもより慎重」
「ああ。奈落の底から数えて100階層だからな」
「こういうのって、何かあるからね」
「まあ、備えあれば憂いなしって言うし」
ユエの言葉に対して、三人はそう答える。
香織は、ハジメと付き合っていくうちに、そういうサブカルやゲームなどの知識を蓄えていったのだ。
しばらく歩くと、何やら豪華な扉が目に入る。
ハジメはシュラーゲンを肩にかけて、壮馬はビルドドライバーを装着する。
「何かあるとしたら…………この先だ」
「こういうのは、大体ボス戦が待ってるからな。俺も本気で行くか」
「大丈夫、ユエ?」
「ハジメ達と一緒だから、大丈夫」
「上等だ!」
「行くぞ!」
壮馬達はそう話すと、扉を開ける。
果たして、その先に待ち構えているものとは。
今回はここまでです。
今回は、ヒュドラ戦の直前までです。
ユエは、原作よりもかなり早く、叔父の真相を知る事が出来ました。
叔父は、自分を守る為に封印したのだと。
そして、ユエと香織の関係は、原作通りな関係になりました。
アルラウネに乗っ取られたユエを何の躊躇いもなく撃つハジメ。
お仕置きも兼ねて、ユエに血を吸われたのだった。
次回は、いよいよボス戦です。
ハジメが檜山達に虐められていた時に出た、謎の存在が、いよいよ表出する。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
今後の展開などでリクエストがあれば、活動報告から受け付けています。
壮馬のヒロインは、雫、ティオ、優花の三人の予定ですが、どんな感じにくっつけるのかとか。