樹海のかみさま ー 因習村の花嫁ENDを回避したい男の娘ヒロインは、美少女かみさまと共に闇堕ちして街ごと全て滅ぼすことにした ー   作:紫陽花の季節に会いましょう

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2.5章3話:シェアハウス

「お兄ちゃんお兄ちゃん……真冬こんなご馳走初めて見た。……感動」

「お、俺も初めて見たんだが……いやでもこれ食べきれないぞ」

 

 柏崎家の食卓にはこれでもかと言わんばかりに料理が並べられていた。満漢全席とはこのことか。いや、違うか。

 千秋はドヤ顔をしていたが、あたりを見渡して不思議そうな表情を浮かべた。

 

「あれ、親御さんは? 4人家族を想定して運んできたんだけど」

「両親は海外に行っててな。今は俺と真冬だけなんだ」

「はぁ!? それを先に言いなさいよ! んー、大食い選手権の優勝者に連絡つくけど、よぶ?」

「いや、それより友達も呼んで良いか? みんなで食べた方が楽しいだろ?」

 

 大食い選手と連絡取れるって大分意味不明だけど、そこは突っ込まないようにしよう。

 俺は即座にほの囮に電話した。

 ほの囮は一向に出ない。5回くらいかけたのだが、スマホをどこかに忘れているのだろうか。

 続いて夏葉、ニコラとかけると2人とも直ぐに出てくれた。事情を知るやここにきてくれて、5人でご飯を食べることとなった。

 

「ぬふふ、驚いたよねぇ。まさか京ヶ瀬さんとお知り合いになってるなんてさー」

「ニコラ、知ってるのか?」

「そりゃあねえ。京ヶ瀬財閥のお嬢様だし。ボクもお近づきになれて光栄だよ、ぬふふ!」

「違うクラスだけど仲良くしてくれると嬉しいわ!」

 

 ニコラも夏葉もご満悦だった。真冬もモリモリ食べている。

 

「ええ、その……よろしく」

「……? どうかしたのか千秋?」

「ーーッ!? あんたさっきからあたしこと名前で……」

「あ、その、ダメだったか?」

「別に、ダメじゃないけど……」

 

 千秋は恥ずかしそうに横を向いた。ニコラは興奮気味に、「ヒロインキター!」と言っていた。

 

「それにしても、この家に2人暮らしって大変ね。そこそこ広いじゃないこの家。ウチほどじゃないけど」

「そうなんだよな。結構部屋も余ってて、掃除が大変なんだよ」

「ふーん。……それじゃ、あたしがここに住むってのはどう?」

「………え?」

 

 突拍子もない話だった。何がどうしてそうなった?

 

「あたし、ボディーガードを探してるわけ。あんた強いでしょ? でも泊まり込みは嫌っぽいし、それならあたしがこっちに泊まる。どう?」

「え、どうって言われても……」

「滞在中も給金は出すわ。お願い……今、あたしには頼れる人がいないの」

 

 目を伏せ、そう呟く千秋。

 京ヶ瀬財閥について詳しくはない。だが、お金持ちにはお金持ちなりに苦労があるのだろうか。今日会ったばかりの女の子だけど、俺はどうしても彼女を放っておくことが出来なかった。

 

「わかった。いいよ。何部屋か余ってるし、使ってくれ」

「いいの!?」

「え、ちょ海知!?」

「お兄ちゃん?」

 

 夏葉と真冬が反応する。そのまま夏葉はテーブルから身を乗り出して言った。

 

「じゃあ私も住むわ!」

「え!? な、なんで……」

「そ、そうだよ夏葉! 時々遊びに来る感じにしようよ!」

「だ、だって……海知が……」

 

 ニコラが必死になって止める。そこまで必死にならなくても……とは思うが、ニコラはニコラで何か譲れないものがあるようだ。

 結局夏葉については時々泊まりに来るということで決着したが、ほぼ毎日泊まりに来ることとなり実質的に住んでる状態になってしまった。

 しかも、

 

「か、会長! 早く服着てください!」

「む、すまない。つい癖でな」

「わー、会長めちゃエロな下着じゃん!」

「先輩に見せつけようって戦略ですね! のぞみんも負けませんよー!」

 

 どんどん女の子たちが増えていって、今では完全にシェアハウスのようになっている。

 まぁでもこんな騒がしい日々も悪くない、かな。

 

◇◆◇

 

 回想終わり。

 高校入学してから毎日が騒がしい。まだ1ヶ月しか経ってないなんて嘘のようだった。千秋を助けて、山の神事件を解決して、季節はGWに差し掛かろうとしていた。

 この騒がしい柏崎家を見ていると心が温かくなる。だが同時にこうも思うのだ。

 ーーここにほの囮が居たらどんなに良いだろう、と。

 ほの囮は人と関わるのがあまり好きじゃない。けれどここにいる子はみんないい人ばかりだ。ほの囮もみんなの輪に入って楽しそうにして欲しいと思う。

 ゴールデンウィーク中にでも誘ってみよう。きっとみんな仲良くなれるはずだ。その中でほの囮が本当の自分として生きられるようになったらもっと嬉しい。

 

「それで、誘ったわけ?」

「い、いや……なんか返事来なくて……」

「山の神事件でバタバタしてたし、仕方ないわよ。にしてもあんた、本当にその犀潟くんのこと気にかけてんのね」

「そ、そりゃ……親友……だからな」

 

 山の神事件。

 JOINTの部長・副部長をはじめ多くの学生が逮捕されたあの事件。あの時のほの囮の和服姿が忘れられない。それに似合う髪飾りを探しているが、中々和服姿を拝む機会はないだろうか。

 

「あたしも……喋ってみようかな」

 

 千秋がポツリと呟いた。

 

「へ? あ、ああ。ほの囮と?」

「夏葉もニコラもあんたも凄い気にかけてるじゃない。その割にあんたたち4人が一緒に居るのあんま見ないんだけど」

「ーーッ! そ、そうだ、な……」

「幼馴染なのよね? もっと気軽に遊びに誘えば?」

「……それは、そうだけど」

「これ、無駄になっちゃうわよ?」

 

 千秋がジト目のまま、部屋に積まれた袋を指差す。有名アパレルのロゴが入った袋の中には、ほの囮の為にとプレゼント用で購入したレディースの洋服が入っている。

 ニコラがウキウキで勧めるものだからつい購入してしまったが、未だにほの囮には渡せていない。

 

「…………幼馴染、ね」

「……? 何か言ったか、千秋?」

「なんでもない。お風呂入ってくる」

 

 千秋が去った後、俺は部屋に積まれた服を一瞥して、呟いた。

 

「早く、ほの囮をこの手で……」




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