樹海のかみさま ー 因習村の花嫁ENDを回避したい男の娘ヒロインは、美少女かみさまと共に闇堕ちして街ごと全て滅ぼすことにした ー 作:紫陽花の季節に会いましょう
「テコ入れ、必要だと思う?」
「藪から棒ねぇ。何のテコ入れが必要だと思うのかしらぁ?」
「ヒロインの、だよー。なーんか今思ったんだけど、海知のヒロインって弱くない?」
高級ソファでBL雑誌を読み漁っている自分ーーラブコメ様に相談事を持ちかける。
「用意された海知のヒロインの中で今最も親密度が高いのは千秋と真冬。でもなんか2人ともキャラとして弱くない? あとは上白川生徒会長とか、赤鏥ちゃんとか? なんか正統派ヒロインって感じの子が居ないんだよね」
「貴方、どーんなラブコメにするか決めてないのに強いキャラとか欲してるわけぇ? 正統派なんて居たらルートがその子にほぼ確定じゃなぁい」
「まぁそうなんだけどさぁ。難しいんだよねぇ。大体ヒロインってボクが作れないの?結局ラブコメ様が引っ張ってきたキャラクターしか扱えないしさぁ」
ボク自身も柏崎ハーレムの中にいて彼女らを動かしているが、どうにも物語が進んでいる気がしない。山の神事件なんて余計なものにも気を取られてしまったし。
「京ヶ瀬千秋はお金持ちで色んなイベントごとを引き起こすのに最適。柏崎真冬は常に柏崎海知にベッタリで、他キャラの嫉妬を加速させる舞台装置として最適。いずれもラブコメを盛り上げる大事なキャラクターじゃなぁい」
「まぁそうだけどさぁ……」
「それに、原因は分かりきっているでしょう? 正統派ヒロインになり得る筈の赤泊夏葉を柏崎海知のヒロインにしないように手を回してるのは貴方じゃなぁい。犀潟ほの囮を思うように動かせてない現状、ヒロインの決定打に欠けるのは当然よぉ」
ぐぬぬ。正論だ。
現状、ボクの描いてるシナリオはまだ初期の段階だ。この世界、柏崎海知を主人公としたこのゲーム盤は一つの物語を構成している。
「元々はいろんな女の子たちと出会って校内でラブコメを繰り広げるだけのお話の予定だったけど、なんか事件とか起きはじめたから方向性を変えないといけなそうなんだよねぇ」
「別に変える必要ないんじゃないかしらぁ? 貴方、学校の外まで作り込んでないのだから、学校内のお話で済ませないととっ散らかるわよぉ?」
「……ラブコメ様的にはどうした方がいいとかある?」
やっぱプロに聞くのが1番だよねこういうのは。
「そうねぇ。ま、幸いまだ学生レベルの事件しか起きてないし、生徒会をやりつつ日々校内で起こる事件やヒロインの問題を解決していく。そんな感じじゃないかしらぁ?」
「そうなると、やっぱ探偵役っぽい琵樹がメインヒロインになっちゃうなあ。あいつ、動かせないから苦手なんだよなぁ」
「悩んでもがくといいわぁ、ニンゲン。舞台と人物、そして台本とそれを実行する能力を与えた。これで演劇が完成しなかったら、それはもう我の責任ではないものぉ」
ラブコメ様の口が三日月に歪む。
そうだ、ボクはなんとしてでも夏葉を手に入れる。その為に海知を動かし、ほの囮をメス堕ちさせようとしているのだから。逆に言えば、ほの囮と夏葉が結ばれる可能性さえ消せれば海知の物語が完結しなくてもいいんだ。
優先順位を間違えるな。まずはほの囮。あのクソ陰キャはボクの洗脳が効いていない可能性がある。まずはそれを確かめないと。
「ねぇ。ほの囮に洗脳が効かない場合、もうラブコメ様の言ってたことが確定でいいんだよね?」
「そうねぇ。そうなったら、犀潟ほの囮は"山の神の祝福"を受けている可能性があるわねぇ。そしてその上でニンゲン、貴方を欺いてる可能性が高い。恐らく意図的に柏崎海知や赤泊夏葉を避けているし、こちらの盤上に溶け込もうとしている」
「くっそがああぁぁあっ!」
この空間にある白い壁に向かって蹴りを入れる。なんでだ。なんでよりにもよってほの囮にその祝福がついてる? よりにもよって1番ボクの影響下に置きたいキャラクターが!
「ゴールデンウィーク明け、試してみる。そんで、林間学校が終わったら徹底的にほの囮を壊す! あのクソ陰キャは、男どもにぐちゃぐちゃにされてるのがお似合いだ! 2度と女に興味を持てないように、いいや、人間としてまともな生活が送れないくらいの犬畜生に堕としてやる!」
「そぉ〜。頑張ってねぇ」
興味なさそうにラブコメ様は返事する。その投げやりっぷりにもイラつくけど、ラブコメ様に当たるのは悪手だ。彼女から力を取りあげられてしまったらボクの目的は達成できなくなってしまう。
なんとしてでもほの囮を壊す。そのために出来ることはなんでもやろう。待っててね、夏葉。ぬふ、ぬふふふふ!!!
次から3章!