バカとテストと召喚獣~バカな天才の集まりGクラス~ 作:八月一日
『ーー時より、第二グラウンドにて召喚野球大会を行います。参加する生徒はーー』
あちらこちらに設置らせたスピーカーから放送部の新野さんの声が響き渡る。
あの懸命な講義から時が過ぎ体育祭当日。
僕らは野球大会の会場へと足を向けていた。
『雄二。最初の相手は?』
「確か一回戦は同学年で隣のクラス、俺たちはEクラスだったはずだ。ほら、対戦表だ」
雄二が仲間内にA4サイズの紙を見せる。
Eクラスかぁ…隣のクラスっていっても実を言うと一番交流がなかったり。
試召戦争、召喚大会、肝試し、これまでの数々の動乱で直接は関わることはなかった。
強いて言うなら覗き騒ぎのときだけだろう。
つまり僕らは彼らの情報を殆ど持っていない。
「なんか危険はねぇのか?悪鬼」
雄二の隣を歩く海穀君が尋ねる。
危険を聞いてるのにその顔は妙にニヤついている。
「まぁ、大丈夫だろ。さっきちょっと代表同士で挨拶してきたが、応対も可愛いもんだったしな」
「『え?本当?可愛いってどんな感じの子だったの?』」
「そうだな……」
可愛いと言われると、いくら敵チームと言えど気になるもの。どんな感じだろうか。
「とりあえず身長が2m越えで体重も100kgくらいで」
「雄二。一応聞くけど女子?」
「そうだ。で、『我こそはEクラス代表、中林にあり申す!今日の戦い、是非とも汗と共に血が舞わぬように気をつける次第にある!』って感じで」
「何部だソイツ⁉絶対可愛くないよね⁉」
身長体重口調…どこをみても可愛いという単語は出てこないっ!
「冗談だ。本当は『今日はヨロシクねっ。ぜったい負けないんだからっ。アハッ☆』って感じで喋るーー」
「よぉーし、こっちだったて負けるもんかっ」
「ーーウェイトリフティング部のホープ」
「ソイツきっと全身筋肉だよね⁉」
そんな喋り方のマッチョなんて嫌すぎる!
「なんてな。それも嘘だ。Eクラスの代表は女子テニスのエースで中林ってヤツだ。性格は……そうだな、島田に近い感じじゃないか?」
「拷問好き?」
『吉井君。それはあんまりだと思う…それより外見は?』
「鉄人に近ーー待て明久、神谷冗談だ。全力で逃げるな」
「『雄二の冗談は心臓に悪いんだよ!』」
「ったく……羅刹、からかうのも大概にしろ。話が進まん。結局、Eクラスっつうのはどんな連中だ?」
海穀君が改めてニヤニヤ顏で雄二に問う。
「そうだな……。Eクラスは一言で表すと『体育会系クラス』だな」
「『体育会系クラス?』」
思わず復唱する僕と神谷君。
「つまり部活に力を入れるあまり、勉強が厳かになってるやつらってとこだな」
『なるほど。部活バカってわけだね』
うんうん、と頷いていると正面、相手側の席からズンズンと近づいてくる人影。
ん?誰だろう?
「アンタにバカって言われたくないわよバカ!」
神谷君が黄色いヘアバンドが特徴的な女子に出会い頭に罵倒された。
えっと……。
『えっと……』
「私たちがバカなら観察処分者のアンタは大バカじゃない!この大バカ!」
『…っ!僕は吉井明久じゃないよ!Gクラス代表、神谷修玖だ!』
「そんな嘘、意味ないのよ!」
「僕が吉井明久」
えっ?と声を上げる女子。
この人は……?
「明久、こいつがEクラス代表の中林だ」
そこへ雄二からの助け舟。
なるほど、この人がーー
「例の全身筋肉」
「私はどんな紹介をされたの⁉」
中林さんが目を丸くする。
違った。そうじゃなくてEクラスの代表の人だ。
気が強そうなことを除けば特におかしなとこは見当たらない。
良かった……。
どうやら普通の人だ…。
そうやって観察していると僕の視線を勘違いしたらしい中林さんが自分の身体を抱いて距離をとる。
「な、何よその目。これだからFクラスのバカは嫌なのよ。人の身体をジロジロと……。いやらしい」
酷い誤解だ。
僕は弁解をしようと口を開いたときーー
「誤解ですよ」
ーー華麗に人影が僕と中林さんの間に降り立った。
****
降り立った人影、紳士・東雲翔君はこう言ってくれた。
「突然に失礼します。Gクラスの東雲と申します。以後お見知り置きをわ」
いやいやいや!
いま僕が求めているのは自己紹介じゃなくて身の潔白なんだけど⁉
「で…ご、誤解というのはどういうことかしら…!」
相対している中林さんは中林さんでなんかモジモジしてるし。
「これはあくまでこっちの推測に過ぎないのですが…。おそらく吉井君は貴女のことを破廉恥目的では見てなかったように思われます。違いますか?吉井君」
「え?あ、うん」
「でも!そいつは覗きの主格よ⁉」
ごもっともな話だ。
僕らは以前学年全体での覗きを促した主格。
そうみられても仕方がないのかな。
「何故表面的にしか人をみられないのですか!」
その声はグラウンドに響き渡り周囲の目を引く。
「過去、彼らが覗きをしたのもまた事実。ですがそれと今回の視姦は別の話です。バカで頭の悪い人間が善行をするし、ましてや頭の良い人間が悪行をしないとは言い切れません」
「ハァ…?何が言いたいのよ」
「つまり、その人の表面、学力、口調、過去だけでその人を判断してはいけない、ということです……。わかっていただけましたか?」
力なく頭を肯定の動きをさせる中林さん。
それを見て東雲君は、
「良かった…さて、みなさんそろそろ試合の始まりですよ。坂本君、そろそろメンバーを発表した方がいいのでは?」
「あ?ああ、じゃ守備位値と打順を発表する。おーい、全員聞いてくれー」
トボトボと自軍へと戻って行く中林さんを一瞥してから雄二がクラスメイト達に呼びかける。
「今回はこの守備、打順で行く」
1番 センター 東雲翔
2番ショート 土屋康太
3番ピッチャー 吉井明久
4番キャッチャー 坂本雄二
5番サード 須川亮
6番ライト 姫路瑞希
7番セカンド島田美波
8番レフト 横溝浩二
9番ファースト 神谷修玖
ベンチ 雨谷恭
福村幸平