狂愛   作:クロウト

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転スラの二次創作の小説ってこういうのないよね。


腕を落とされて死にかけたので国主がキレた。

 

燃え盛る業火が瞳を灼きつける。栄華を極めた国家は人間の欲望によって弱き者は淘汰されていった。平和を好んだ魔物たちは欲に駆られた人間の無慈悲な刃で哀れにその肉を切り裂かれて行く。

 

貴方はその様子をただただ見るしかなかった。目の前で殺されていくホブゴブリンの民達。遺された民を必死に守らんとその身体を肉壁にする豚頭族(オーク)の軍勢。

 

どうしてこうなった────と、貴方は自身の身体に渦巻く激痛の中で滅びゆく魔物たちの国であるジュラ•テンペスト連邦国を見ながらそう嘯いた。

 

 

貴方は転生者だ。前世では降り注ぐ鉄骨に身体を貫かれてしまったが貴方の絶え間ない生への渇望によってこの世界に再びその命を取り戻した。貴方は同じ同郷の者を探そうと旅をしていたところ、この国を見つけたのだ。

 

そして連邦国の魔物達と触れ合いながら少しずつこの国に慣れていき、ここの国の主は自分と同じ同郷の者だと判明した。そこから貴方の運命は好転に傾いていった。

 

役割を与えられ、国を護り、魔物との絆を深める。それは貴方にとっては変え難い至福の時であった。前世の人生とは全く違うその人生の歩み方に貴方は段々とその平和を当たり前に享受する様になる。

 

 

しかし───それはあっという間に終わりを告げてしまった。

 

 

地面に大量の血が滴る。ドロリとした粘性を持つ様な血が石の道を紅く穢す。そしてそれは元は貴方の純血であったが貴方はその血が流れ出て来るのを許容してしまった。いや()()()()()()()()()()()

 

 

貴方は地面を見下ろした。もうぴくりとも動かない身体と朧げな意識で最後の一絞りを捻り出す様に顔を動かす。

 

 

そこで業火と芳醇な血の匂いの中で貴方が見たのは───腕だった。剣を握りしめたままで肩から先が無いくっきりとした断面が特徴的な()()()()だ。

 

 

───死ぬのか。

 

 

転生してから二度目の死の予感が貴方の脳裏を過ぎる。満身創痍の身体でこれ以上何が出来ようかと貴方は諦観する。力なく項垂れる貴方の後ろにいるのは小さいホブゴブリンの女の子だった。全身に鎧を覆った騎士達が無慈悲にその女の子を聖なる騎士団の敵として認識して襲いかかって来た所を女の子が斬り伏せられる一歩手前で貴方がその女の子の前に立ち、腕を犠牲にしてその命を救った。

 

 

貴方は後悔していた。この国の主が定めた人間と争ってはいけないという禁をその瞬間、貴方は破ったのだ。それは貴方の目の前に転がっている既に動かぬ死体になった騎士達が貴方の凄惨な戦いぶりを物語っていた。

 

 

 

だがその後悔ももう時すでに遅し、ぱたりと貴方の身体は力なく地面に堕ちる。周り一面は渦巻く焔で支配されているのに酷い悪寒が貴方の身体を迸った。血が抜け落ちる音と共にそこで貴方の意識は断絶されかける。

 

 

───そして貴方がそこで最後に目にした光景は、自分の元に走り寄って来る水色髪の青年の姿だった。

 

 

 

 


 

 

 

夜。草木も睡る丑三つ時の頃だろうか、断絶された貴方の意識は再び目を覚ました。上体を起こして見知った風景が目覚めた貴方の視界いっぱいに映り込む。それは貴方の頑張りを評価してくれた国主が特別に繕ってくれた貴方の家だった。

 

一人暮らし用に作られたのでスペースはそれなりに無いにしても二人や三人なら入れる最低限の広さはあった。貴方はこのジュラ•テンペスト連邦国でもそれなりに顔が広いのでこの家には度々客人がやって来る。

 

 

───そして、この憂鬱な夜にもまた客人が一人、貴方のそばに居た。

 

 

 

「 ──起きたか。 」

 

水色の艶やかな髪に顔を覆い隠す様な仮面。色褪せた白い獣毛で編まれたマフラーに濃淡な藍色のコート。貴方はその見慣れた姿の客人に覚えがあったと同時に少しばかりの驚愕も覚えた。

 

何故なら、布団に横たわる貴方の側でずっと座ってるその青年はこのジュラ•テンペスト連邦国の主であるリムル•テンペストその人だったからである。

 

 

国のトップであろう者がなぜこんな下っ端の家に訪れているのかと貴方は疑問に思ったがそれを口にはしなかった。少なくとも素顔を仮面で隠蔽しているリムルはそんなことを容易に口に出来ることではなかった。

 

 

「......なんで、あんな無茶をしたんだ。 」

 

 

暫くの沈黙の末にリムルが堰を切ったかの様に貴方にそう問うと同時に貴方が横たわっている布団に手を添えた。小さくて綺麗な汚れを知らない手だがその手で数多の敵を屠って来た強者の手でもあった。

 

 

「もうちょっと遅れてたら、死ぬとこだったんだぞっ...!!!! 」

 

 

リムルの手が強く布団を握り締める。その語気には明らかに怒りが孕んでいて、貴方はそれを見て酷く申し訳無い気持ちに駆られてしまう。リムルは貴方と同じ転生者でも関わらず、心優しい性格の持ち主だ。だからこそリムルは自分の配下を失う事には少なからず抵抗があったのだろう。

 

貴方はリムルの怒りを禁を破り尚且つその死を手放そうとしていた自分への戒めだと確信した。そう確信せざるを得なかった。

 

 

───だがリムルには()()()()()()()があった。

 

 

 

「...お前まで失ったら...俺は...どうすりゃ良いんだよ。 」

 

 

怒気の次にはどこか悲しみが感じられる様な口調になった。先程の怒りが孕んだ様な言葉とは違ってその言葉は掠れていて消えそうな程の声だ。リムルは布団を強く握り締めていた手を弱め、貴方の手へとリムルの手は添えられる様に触れる。

 

それは割り物を扱うかの様に酷く繊細だった。

 

 

 

「────なぁ。 」

 

 

一呼吸の間の後にリムルは自身の顔を隠していた仮面をもう片方の手で外す。黄金色の双眸が貴方の視線と交錯し、貴方はその瞳からは逃れる事は無理だと言わんばかりにその瞳には感情を超越する何かがあった。

 

 

「...お前はやっぱり、俺の側に居ろ。 」

 

 

リムルは貴方にそういった。貴方はその言葉の意味が分からなかった。貴方は自分はいつでもリムルに仕えてると答えたがその言葉が不正解だと示す様に首を横に振った。

 

 

「.....俺が言ってんのは、もう()()()()()()()()()って意味だよ。 」

 

 

貴方はその言葉の意味が理解できなかった。だがリムルは理解が及ばない貴方を置いて行く様に次々と言葉を投げかけて行く。

 

 

「一分一秒、俺から離れるな。もう二度と俺の前から姿を消さないでくれ。だって俺だけがお前を守ってやれるんだからさ。 」

 

 

リムルはそう言いながら少しずつ貴方ににじり寄ろうと身体を前に動かして行く。黄金色に照らされた瞳は夜の影の所為なのかそこから光は失われており、貴方はリムルの圧倒するかの様なその言葉にただただ黙って聞くしかなかった。

 

 

「今後は俺の許可無しに外を出歩くな。常に俺の目の届く範囲に居ろ。俺も此処に住むし、仕事する時はお前も一緒に連れて行く。また同じようなことが起きたらその時はお前を無理矢理にでも監禁するからな。 」

 

 

やがてリムルの身体は貴方の包帯で巻き尽くされた身体とあともう一押しもしてしまえば互いに衝突するぐらいの近さまで来た。リムルの黄金色の瞳が貴方の視界いっぱいに映り込む。目を離そうと離してくれないリムルの眼光に貴方は朧げながらも恐怖を感じた。

 

 

「.....頼むから、もう死にかけるなんて事をしないでくれ。 」

 

 

次の瞬間──リムルの腕が貴方の草臥れた身体を包み込んだ。小さい少年の様な身体だが敵を屠り続けて来た事が関係しているのかその感触は何処か貴方の身体よりも大きく感じた。そしてリムルの顔が貴方の胸にストンと埋まった。

 

貴方はただごめん、とリムルに言うしか出来なかった。抱き締められるがままに貴方の()()()()()()()()()を悲しそうに見つめるリムルを見て貴方は自身の不甲斐無さにただただ悔しさを募らせる事しか出来なかった。

 

 

 

「───本当に反省してんなら、今日はこのままで居させろ。 」

 

 

 

リムルは抱擁したままでそれ以上は何も言わなかった。貴方はリムルを引き剥がそうとはせずにそれを受け入れた。暗がりの中でリムルは貴方の存在を確かめる様に抱きしめる力を強くして行く。もう二度と離さぬ様に、大切な仲間でもあり数少ない同郷の者である貴方を失わぬ様に。

 

 

( もう二度と... )

 

 

リムルにとって貴方は特別な存在だった。まだ連邦国が作られる前に偶然邂逅した貴方という存在は数少ない同郷の者としてでもそうだし可愛らしい弟分としてでも共に国を一から作り上げた頼れる相棒としてでもリムルは貴方に友情を超えた感情を抱えていた。

 

 

( 離すもんか。)

 

 

だからこそリムルはそんな大切な存在が失われるという恐怖を短い間に二度経験したのだ。国主であって数多くの魔物を束ねるリムルでも前世は人間だ。心が魔物に染まっても人間だった時に魂に植え付けられた喪失の空虚な哀しみはなかなか払拭出来るものではなかった。

 

 

 

そしてその後──二人は朝まで抱き合いながらそのまま朝まで寝ていたらしくその光景を見た者達が一斉に勘違いを引き起こしたという。

 





一話完結型の超短い短編集式で行くので文字量が圧倒的に少ないです。すいません許してください!なんでもしますから!!
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