呪術高専、三学期はじめ。
夏油傑の決行した百鬼夜行から数週間後。
そこに駆り出された乙骨ら1年生のコンディションを慮り本来休講の予定であったが、反転術式の治癒による負傷の早期回復、そして危惧されていた乙骨のメンタル面での問題も見られず、何より本人たちの希望もあって通常通り教室に集まっていた。
「出席とりまーす、憂太、真希、棘、パンダ…はい全員いますと。んじゃ、今日の授業は無しね。冬休み明けのテストも無し。それでは、この前ドンパチやったおかげで都内にザコ呪霊どもが大量に湧いてきたので、遅めの大掃除といきましょう~ッ、徹夜で数日ぶっ通しになるかもだけど気張って行こうぜ!!」
責任感を微塵も感じさせない口調でそう言うのは五条悟。現代最強の呪術師である。
(かなり面倒そうなことをサラッと言われた!?)
自身に取り憑いていた怨霊、祈本里香を解呪し、今ではすっかり黒い制服が様になった少年、乙骨憂太は心の中でツッコむ以上のことをできずにいた。
「ふざけんな雑草頭。そんなのお前ぇ1人行きゃなんとかなんだろうが、少しは休ませろ」
一番に悪態を着くのは、壊れた丸メガネの代わりに四角い縁のメガネを付け出した前髪パッツンのポニーテールの少女、禪院真希。ちなみに最近髪を切ったらしい。
「そうだそうだ~。パンダを労働させたら愛護団体が黙ってないぞ~」
「しゃけしゃけ」
あいも変わらずなパンダと狗巻棘も抗議する。ともかくこの場の全員が五条の提案に否定的だった。
しかしそんな反応は予測していたと言わんばかりに得意気な笑みを浮かべるのが我らが五条先生である。
「なに気色悪い笑い方してんだ」
「甘いねみんな!!そりゃ僕が行けるならもうとっくに片付いてるっての」
「あぁん?」
「実は上層部から懲戒受けちゃってあの件の事後処理に関しては出動禁止になっちゃった!てへ☆
だからみんなに頑張ってもらうしかないわけマジめんご!!」
「えっ、ええ…」
「「「………」」」
乙骨憂太を除く3人が目の前でクネクネと動く目隠し男に殴りかかろうと動作を始めていたが、同時にこの先生も内心大変なんだろうなぁとかの哀れみがよぎったのだろうか。夏油傑とは親友だったらしいし、因果関係の調査やらで行動に制限がかかっているみたいな苦労が色々あるのだろう。なにより殴りかかったところで届きっこ無いので憂さ晴らしにもならないと結論付け、今回ばかりは3人とも溜息をついて大人しく座り込んだ。
しばしの沈黙の後、口を開いたのは真希だった。
「…じゃあ。新宿の雑魚狩りには私らだけで行くとして、それはいつから参加すればいい?」
夏油傑が放った呪いは既に五条悟と呪詛師との戦闘に巻き込まれ殆どが消滅した。
しかし、残った呪いの残穢に吸い寄せられた三~四級程度の呪霊は、雑魚同然の文字通り取るに足らない相手とはいえ、規模が規模である。
それなりに準備をして赴くべきであろうと考えての発言だった。
しかし、目の前の男はそんな準備をする時間くらいはあるであろうという淡い期待すらぶった斬ったのである。
「え?今だよ?」
「「「「はぁぁぁ!!?」」」」
呪術高専、本日一の絶叫が響く。