殺したいほど憎いのに、好きになりそう   作:味噌村 幸太郎

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102 触っても嫌じゃない

 

 今回の遊園地代はこちらが支払うと、事前に鬼塚には伝えてある。

 以前、イタリアンレストランで7000円以上使わせてしまったので……。

「お母さんが出してくれたから」と言って鬼塚を黙らせたが、本当は全部俺持ち。

 

「そう言ってウソをつけば、鬼塚くんも奢らせてくれるでしょ?」というお姉ちゃんからの案。

 

 確かにお姉ちゃんの言う通り、鬼塚は「じゃあ今回だけ」と照れていた。

 クソが……入園料にフリーパスもつけたから、二人分で8000円近く支払ったぞ。

 行く前に銀行でお金を下ろしておいてよかったな。

 

  ※

 

 入場券をスタッフに渡して、エントランスを抜ける。その際、パンフレットをスタッフの人から渡された。

 俺は初めて来たから、何があるか分からない。

 パンフレットを開いてマップを眺める。

 

「う~ん、どれから乗ろうかな?」

 

 俺がそう呟くと、隣りから鬼塚が割り込んできた。

 

「水巻、遊園地は初めてなんだろ。最初からいきなり絶叫系はやめておかないか?」

「え? どうして?」

「いやさ。俺は大丈夫だけど前に社会見学で来た時、身体が弱い奴は酔っちゃってさ。しばらく動けなかったんだ」

「そうなんだ……確かに一発目でグロッキーになったら、フリーパス代がもったいないよね」

 

 しばらくマップを見ながら二人して悩んだ後、近くにお化け屋敷があることに気がついた。

 ここから左に曲がったら、すぐだな。

 鬼塚も「こんなところのお化け屋敷じゃ、物足りないけど。一発目だからな」と苦笑いしていた。

 

 俺もそう思ったけど、まさか”あんなハプニング”が待っているとは思わなかった。

 

 

 ”エイリアン・パニック”という名前のお化け屋敷らしい。

 入口にも緑色の宇宙人が置いてあるから、タコみたいなおばけの格好をしたバイトスタッフが出てくるのかな?

 冬休みということもあって、若者に人気のようだ。特にカップルが多い。

 俺たちもその行列に並び、順番が来るを待つ。目の前にいた高校生ぐらいのカップルの会話が聞こえてきた。

 

「ねぇ、私。暗いの無理だから、アッくんにくっついてもいいかな?」

「え!? べ、別にいいよ。俺なんかで良かったら、腕でも胸でも……」

 

 とか言いつつ、なんか嬉しそうにしているな。

 その会話を鬼塚も聞いていたのか、頬を赤くしてこう言う。

 

「水巻も暗いところ、苦手なら俺を頼ってくれていいぜ」

「は? 全然、怖くないよ。おばけもゾンビも好きだから、そんな必要な無いと思う」

「そ、そっか……女にしては珍しいな」

 

 なにを落ち込んでいるんだ、こいつは?

 

 ~20分後~

 

 ようやく俺たちの順番が回って来た。

 建物の中から頻繁に若い女の子たちの悲鳴が聞こえてくる。

 そんなに怖いのかな……。

 

「水巻、なにやってんだよ? 早く入ろうぜ」

「あ、うん……」

 

 入る直前になると、少し怖くなってきた。

 でも、建物の中に入ると俺の不安はすぐに消え失せる。

 よくテレビロケで被り物をしたスタッフが、客を驚かせるシーンとかあるけど……そんなことは一切起きない。

 

 ただ暗くて狭い通路を歩くだけ。怖いのは前が見えないというところかな。

 あとは、たまにプシューという音と共に白い煙が噴射され、驚くぐらい。

 ほとんど動かない置き物に俺たちが近づくと、ピカッと明るくなるだけ。

 

「言うほど、怖くないね」

「ああ、大したことないな……」

 

 俺と鬼塚は二人して「拍子抜けしたな」とどんどん奥へ進む。

 しかし、建物から出る直前でそのアクシデントは起きる。

 

「あいてっ!」

 

 大きな音がすると、目の前を歩いていた鬼塚の姿が消えてしまう。

 

「鬼塚? どうしたの?」

 

 視界が悪いので、俺は手探りで彼の姿を確認しようとするが、見つからない。

 

「あ、水巻。悪い……こけちゃったみたいだ」

「そうなんだ。立てる?」

「大丈夫だ。すぐに立つから安心してくれ」

 

 この時、彼も視界が悪かったのだと思う。

 鬼塚が立ち上がるを待っていたら、小さな手が俺の大きな左胸を掴んできた。

 

「あれ? なんかすごくやわらかいな……なんだろう、これ」

 

 俺の胸だと気づかず、触り続ける鬼塚。

 

「きゃっ!」

 

 思わず、女みたいな声を出してしまった。まあ、今は女だから問題ないか。

 正直、触られて痛かったけど……それよりも彼が俺の胸を触ったことを知ったら、罪悪感に陥るだろう。

 だから胸を触り続ける彼の手首を掴み、立たせてあげた。

 

 薄暗い建物の中だが、至近距離でお互いの顔を見つめることはできる。

 

「水巻?」

「……」

 

 なぜかわからないけど、触られた俺の方が心臓の音がうるさく聞こえる。

 そして頬が熱くなっている。

 女の子の優子ちゃんに触られて鳥肌立ったけど、こいつは別に嫌じゃないと思っている自分が怖い。

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