殺したいほど憎いのに、好きになりそう   作:味噌村 幸太郎

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104 ランチタイム

 

 ジェットコースター”タイタン”の激しい揺れに酔ったというか……藍ちゃんの胸の揺れが激しすぎて、引きちぎれるかと思った。

 コースターがホームに戻って来ても、痛みからしばらく動けずにいた。

 以前優子ちゃんが言ったように、ブラジャーのサイズがあってないのかも? 今度買いに行くかな。

 鬼塚はかなり楽しかったようで嬉しそうに笑っている。

 

「はははっ! あ~ めっちゃ楽しかったぁ~! なぁ? 水巻」

「……」

「どうしたんだ? 楽しかったろ? もう一回並んで乗ろうぜ!」

「ごめん。それだけは絶対に嫌」

 

 彼には悪いがきっぱりと断らせてもらった。

 あんな激痛は二度とごめんだ。

 

 鬼塚は俺がジェットコースターを怖がっているように思っているようだ。

 

「悪い、水巻。俺だけ楽しんじゃって……じゃあちょっと早いけどお昼にするか?」

「お昼ごはん? 食べる食べる!」

 

 遊園地の食事ってどんなのがあるんだろう?

 楽しみだなぁ~

 

  ※

 

 スペースワールドの左奥にタイタンがあるのだが、今から向かう”ラッキーズ・ダイニング”というレストランは園内の一番右側にあるらしい。

 かなりの距離を歩かされた。

 でも、歩いた分楽しみも増している。

 

「ここみたいだな」

「おお~」

 

 ウサギのキャラクター、ラッキーくんが看板に描かれている。

 まだお昼前だから客は少ない。赤ちゃん連れの親子が早めのランチってところだな。

 店の中に入ると、まるでスペースシップを連想させるような内装が目に入る。

 

 ペアルックの俺たち二人を見るや否や、若い女性店員が「お二人でよろしいですか?」と笑顔で現れた。

 やっぱりカップルとして見られているな。

 まあ美味い料理が食べられるなら、別にいいや。

 

 二人がけのテーブル席に通されると、メニュー表とお水を二つ出された。

 とりあえず、鬼塚へメニュー表を先に渡すことにした。

 俺はあとでじっくり選びたいので。

 

「あ……お子様ランチがある。いいな」

 

 あのいじめっ子で凶悪だった少年から、可愛らしい名前が出て来たのでイスから転げ落ちそうになってしまう。

 

「お、お子様ランチ?」

「うん、俺さ。前からお子様ランチってものを一回で良いから、食べたくてさ。でも翔平がいるから我慢してて」

「え? ひょっとしてお金の問題とかで、我慢してたとか?」

 

 俺がそう言うと、彼は頬を赤くして両手をブンブン振って否定する。

 

「いやいや、なんていうか……兄貴として、ちょっと弟と同じものを頼むのに抵抗があってさ」

「それなら頼んだらいいじゃん。私、そんなことでバカにしないよ。食べたいものはちゃんと食べるべきだと思う。あとで後悔しないように」

「じゃ、じゃあ頼もうかな。学生証を持っているなら、年齢は関係ないらしいし」

 

 そう言うと、ショートパンツのポケットから真島中学校の学生証を取り出す。

 用意が良いな。よっぽど食べたかったんだろう。

 注文を決めた鬼塚は俺にメニュー表を渡してくれた。

 

「んと、私はなんにしようかなぁ……とりあえずカツカレーとハンバーグプレート。あとから揚げ定食にするかなぁ」

 

 独り言のように呟いたつもりだったが、鬼塚は全部聞こえていたらしい。

 

「み、水巻……そんなに食って大丈夫か? さっきタイタンに乗ったばかりだぞ? 気持ち悪くならないのか?」

「ならないよ! むしろ空腹で気持ち悪くなりそうだから、早く頼みたい。あ、すいませぇ~ん! 注文お願いしま~す!」

 

 心配する鬼塚を無視して、店員を呼び出す。

 

「お客様、ご注文でしょうか?」

「えっとですね。そっちの彼はお子様ランチで。私はカツカレーにハンバーグプレート。それから、から揚げ定食を全部ライス大盛でお願いします」

「か、かしこまりました……」

「待ってください! 追加でフライドポテトもお願いします」

 

 俺の頼み方に店員も鬼塚も絶句していた。

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