殺したいほど憎いのに、好きになりそう   作:味噌村 幸太郎

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111 サイズが分からない

 

 お姉ちゃんが言うには、ブラジャーというものは姉妹の間で貸し借りできるものではないらしい。

 実際にお姉ちゃんがタンスからブラジャーを取り出すと、タグを見せてくれた。

 ”A65”と書いてある。

 左側からカップサイズとアンダーサイズが表記されているらしい。

 お姉ちゃんって貧乳だったのか……俺たちは本当に姉妹なのだろうか? 顔も全然違うし。

 

「だから自分で買ってきな。ちゃんと店員がサイズを計ってくれるところが良いよ」

「えぇ~ 私ひとりで行くの? お姉ちゃんもついてきてよ……」

「ダメダメ、お姉ちゃんは彼氏とデートするから。あ、そうだ。お母さんに連れて行ってもらいなよ」

「お母さんか……」

 

 

 俺はお母さんに事情を話すと、「じゃあ今から買いに行こうね」と約束してくれた。

 地元である真島じゃブラジャーなんて売っている店は少ないので、二駅離れた”梶木(かじき)”へ向かうことになった。

 そういえば、この世界に来てお母さんと買い物なんて初めてだったな。

 

  ※

 

 お母さんと二人でJRの電車に乗り、梶木駅で降りることとなった。

 古い駅舎から出ると、細い道路沿いに小さなお店がたくさん並んでいる。

 辺りを歩いているのは、主に若い学生たちだ。

 たぶん最寄りの大学や高校に通っている生徒たちなんだろう。

 

 お母さんに手を引っ張られたので、黙ってついていく。

 梶木駅からまっすぐ三号線まで伸びた通りが”セピア通り”らしい。

 しかし、俺たち二人は三号線まで出ず、途中で左に曲がって奥に進む。

 

「どこに行くの? お母さん」

「え? そりゃブラジャーを買うところなんて決まってるでしょ。スーパーの”タイエー”よ」

 

 久しぶりに聞いた名前だ。

 前世じゃ大手グループの子会社となってしまったスーパーだが……。

 この時代ではまだ活気があったんだろうな。福岡のプロ野球チームのオーナーだったし。

 

 商店街の”キラキラ通り”を抜けて、しばらくすると三号線が目に入る。

 大きな交差点の近くに、奥行きのあるショッピングモールがあった。

 間違いなくスーパーのタイエーだ。懐かしい看板が建物の上に飾られている。

 

 懐かしさを感じながら、お母さんとスーパーの中に入る。

 婦人売り場まで来ると知らない中年の女性店員が笑顔で接客してきた。

 

「なにかお探しですか?」

 

 すると俺が答える前にお母さんが勝手に答える。

 

「あの、この子。初めてブラジャーを買うからサイズを計ってくださる?」

「了解しました」

 

 俺はまだ何も言ってないのに、店員のおばさんは俺を試着室の中にグイグイと押し込む。

 仕方ないので靴を脱いで、試着室の中に入るとなぜかおばさんも一緒についてきた。

 密室の中で知らないおばさんと至近距離で見つめ合う。気まずい……。

 

「あ、あの……」

「初めてなんだよね? 大丈夫だよ~ じゃあ両脇を少し上げてくれるかな?」

「はぁ……」

 

 言われるがまま、両腕の脇を上げるとおばさんは制服のポケットからメジャーを取り出す。

 そして、俺の脇から背中にかけてメジャーを巻いてアンダーバストのサイズを計る。

 

「65か、じゃあ次はトップね」

 

 そのままメジャーを上げて、俺の胸のど真ん中に当てる。

 ”トップ”に引っかかるからくすぐったい……。

 

「上は95だから、Gカップだね。ちょっとブラジャーを何点か持ってくるから待ってて」

「あ……行っちゃった」

 

 しかし、前々から大きいとは思っていたが、藍ちゃんってGカップの持ち主だったのか。

 正直言ってなにがどうすごいのか、分からん。

 

  ※

 

「とりあえず、3個持って来たよ。色はあとで選べるからサイズがあっているか、試着しようか?」

「はい……」

 

 おばさんから白いブラジャーを一点受け取り、ひとり試着室に残される。

 上着を脱いで裸になると、ブラジャーを肩にかけてみる。

 そして後ろのホックをつけようとするが、うまくいかない……。

 何回も挑戦したがつけられず、終いには腕をつってしまった。

 俺が試着室の中で唸り声をあげていると、外から店員のおばさんが声をかけてくる。

 

「あ、ホックを後ろでつけにくいなら、肩ひもを通さずに前でホックをつけてから後ろに回したらいいよ」

「!?」

 

 なるほど、そんなやり方があるのか。

 言われた通り、胸の前でホックをつけてから、ブラジャーを回転させる。

 そして、ブラひもを肩にかけたら完成だ。

 

「おお~ すごい! ブラジャーをしただけだと言うのに安定感が半端ないぞ!」

 

 ひとりで鏡を見ながら感動していると、またおばさんが試着室に入って来た。

 俺に「前かがみになって」と言い、おばさんに向かって腰を屈めると何を思ったのか、左胸に手を突っ込んできた。

 そして埋もれていた肉を引っ張り出し、右胸にも同じことを繰り返し、最後にブラジャーの紐を調整する。

 

「で、デカい……」

 

 前から大きいと思っていたが、藍ちゃんてマジで巨乳だったんだな。

 おばさんに埋もれていた肉を引っ張ってもらい、カップの上にのせたとこにより、更に胸の形が強調されている。

 

「あらぁ~ これじゃ、小さくないかしら?」

「え……?」

「左胸がキツそうだから、もう一個上のサイズを持ってくるわね」

「……」

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