殺したいほど憎いのに、好きになりそう   作:味噌村 幸太郎

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114 女の子になった日

 

 大人がつけるような可愛いデザインのブラジャーとパンツを手に入れた俺は、ハイテンションで帰宅する。

 まあブラジャーは高いので、お母さんに買ってもらったのだが。

 それでも嬉しくてたまらない。

 

 二階の自室に上がるとさっそく服を脱いで、上下お揃いの下着を着用してみる。

 今まで使っていたダサいファーストブラとは違い、藍ちゃんの豊満なバストをしっかり支えてくれる。

 それにデザインが可愛い。

 

 ドレッサーの前に立ち、その場で身体をくるくると回転させてみた。

 

「おお~! これこそ、前世で夢見た女の子の下着姿って感じだな」

 

 白い肌に華奢な体型。それに対して大きな二つの胸が黄色のブラジャーにおさまっており、小さな尻にも同系色のパンツを履いている。

 これでいつ脱がされても大丈夫……って、誰にも脱がさせるか。

 でも気分が良いから、今夜はこの下着を着たまま寝よう。

 

 ~半日後~

 

 今夜はハンバーグだったので、お母さんにおかわりを6回頼んでいたら怒られた。

「藍、最近のあんたは燃費が悪いのよっ!」と。

 どうしたんだろう? いきなり怒りだして。

 

 自室に戻り、カレンダーを眺めていると俺はあることに気がつく。

 

「ヤベッ! もう冬休みが終わりだ……宿題、全然やってないんだけど」

 

 ねーちゃん先生から出された冬休みの宿題なのだが、一枚も手をつけてない。

 今ごろ思い出したのが悪い。とりあえず寝ちゃおう。明日どうにかすればいいさ。

 諦めた俺は蛍光灯の紐を引いてベッドへ飛び込んだ。

 そのまま夢の中へ落ちていく……。

 

  ※

 

『水巻……』

 

 誰かが俺を呼んでいる。この甲高い声はもしかして?

 瞼を開くとそこには、ジャージ姿の鬼塚が立っていた。

 いつもと様子が違う。真剣な眼差しでこちらを見つめている。

 

『”俺の”を見たいんだろ? ならお前にだけ見せてやるよ』

 

 そう言うと、何を思ったのかジャージの首元からファスナーを下ろしていく。

 すると小麦色の肌が丸見えになってしまう。

 上半身裸になって俺の手を掴み「ほら」と自身の”(つぼみ)”に触れさせようとした。

 

 ピンク色の蕾に触れようとした直前で俺は我に返り、彼の手を払う。

 

『水巻、どうして……この前スペースワールドで俺はお前の胸を触ったろ。だからお互いさまなのに……』

 

 寂しそうにこちらを見つめる彼の顔がどんどん小さくなっていく。

 そう考えると触っておけば良かった……と思った瞬間、身体に異変が起きていることに気がつく。

 夢の中で起きていることかと思ったが違う。これは現実世界で起きていることだ!

 

「あっ!?」

 

 しまった。昨晩のおかずと一緒にお父さんのおみやげで、リンゴジュースがあるからと何杯もおかわりしていた。

 それで漏らしちゃったのか……情けないな。

 とりあえず、部屋に灯りをつけて布団の中を確認しよう……ってあれ?

 何度も見直したが、これは通常のお漏らしではない!

 

「ぎゃああ!」

 

 布団のシーツが真っ赤に染まっていたので、最初はなにか病気かと思ったが。

 冷静に考えると、今の俺は女の子だった。

 ”あれ”が始まったということか。

 

 いきなり生理が始まったことで、俺は大パニックに陥っていた。

 この真っ赤に染まったシーツをどうやって洗う? それに昨日買ったばかりの可愛いパンツも汚れてしまった……。

 今はまだ夜中の3時だ。1階で寝ているお母さんを起こしてもいいけど、ついでにお父さんを起こして生理を知られるのもなんか嫌だ。

 それだけは絶対にダメな気がする。男であるお父さんにだけは知られたくない。

 

 そう思った俺は自室から出て廊下を抜け、お姉ちゃんの部屋をノックせず、勢いよく扉を開いてみる。

 すると部屋の中でお姉ちゃんは起きていて、何やら小さな端末を持って部屋の中をウロウロと歩き回っていた。

 

「あ~ もしもし? ダメだわ……ポケベルから”PHS”に変えたのに、電波が入らないんじゃ意味ないんだけど!」

 

 PHS、懐かしい名前だ。

 携帯電話が高かったから、若い女子高生たちが安いPHSで我慢していたとか?

 しかし、今はそんなことを懐かしく思っている場合ではない。

 

「お、お姉ちゃん! 私、大変なことになったんだけど!」

「藍? あ……あんた、大きな身体のわりに始まるのが遅かったもんね。おめでとう」

 

 下半身が血だらけになった俺を見て、冷静に初めてを祝う姉。

 それに対して、俺は半泣き状態で「助けてよぉ!」と叫ぶ。

 

「はいはい……じゃあ、とりあえずお風呂に行こうか?」

「うう、ぐすん……」

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