殺したいほど憎いのに、好きになりそう   作:味噌村 幸太郎

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126 燃えるバレンタインデー

 

 この前、俺はいきなり抜き打ち検査を食らって、みんなの目の前でブラジャーを脱いだ。

 そして指定のブラジャーをつけてくるまで没収され、職員室にある道具箱に置かれたまま、色んな生徒や教師に見られるという羞恥プレイを味わうことに……。

 つまり、この真島中学校はそれぐらい校則に厳しいということだ。

 だが、今日は違う。

 

 それはバレンタインデーだから。

 普段、ツンツンしている女子もこの日だけは乙女になってしまう。

 校則とかお構いなしで、各々が手作りチョコを持参している。

 休み時間に意中の相手に手渡して告白するか、自信が無ければ机の中に隠す。もしくは下駄箱の中に入れておくかだろうな。

 

 せっかく美少女に転生したというのに、俺はと言えば生理中ということもあってか、非常にイラついていた。

 あんなにブラジャーを脱げとか、校則を守らない俺が悪いとか、先生たちは怒ったのに。

 バレンタインデーのチョコは見逃すのかよ……。

 

「あ、藍ちゃん~! 私が作ったチョコをもらってよぉ~!」

 

 それに優子ちゃんが甘ったるい香りのケーキボックスを俺に近づけてくるから、更にイライラする。

 何度も断っているのに。

 

「優子ちゃん。私、本当にチョコがこの世で一番大嫌いだから、二度と作って来ないで。何だったら、トイレの中に捨てなよ」

 

 今日はあの日のせいか、語気が強くなってしまう。

 

「酷いよぉ~ そんなの! 汚物扱いじゃ~ん!」

 

 泣いている優子ちゃんを無視して、俺は机の上で眠ることにした。

 

  ※

 

 下校時間になり、教室から出ると学ラン姿の鬼塚が廊下に立っていた。大きな紙袋を抱えて。

 

「よ、よう。水巻、久しぶりだな!」

「え? そうだったけ?」

 

 ひょっとして、こいつもチョコを作ってきたのか?

 いくら料理やお菓子作りが上手なお前でも、チョコだけは渡すなよ。

 渡したら、もう絶交だからな。

 ん? というか、バレンタインて女が男に渡す風習だよな……。

 

「実はさ、この前弟の翔平とケンカしちゃってさ……俺も悪いなと思って、仲直りのために二人でお菓子を作ったんだ。たくさん作ったから水巻にあげようと思って」

「翔平くんとケンカ? どんなことで?」

「いや……それは男同士の内容だから、あまり聞かないで欲しいな」

 

 そう言うと頬を赤くして、俯いてしまう鬼塚。

 あ、この前学校帰りに翔平くんと会ったな。

 精通が始まったから、藍ちゃんで夢精してしまってそれを鬼塚に相談したら、頭を叩かれたんだっけ。

 確かにそれで頭を叩かれるのは理不尽だもんな。仲直りして良かった。

 

「ねえ、鬼塚。そのお菓子ってひょっとしてチョコ? だったら、私絶対にもらいたくないよ」

「いやいや! なんで男の俺が水巻にチョコを渡すんだよ? たまたま渡す日が被っただけだって! この前スペースワールドでお前がチュロス気に入っていたからさ。それを100本、作ってきたんだよ」

「チュロス……?」

 

 俺は耳を疑った。

 あんな大きいチュロスを鬼塚は家庭で再現したというのか!?

 そういえば、紙袋から漂う香りがチョコとは全然違う。

 

「本当にチュロスなの!?」

「ああ、一晩かけて翔平と作ったからさ。ぜひ受け取ってくれないか? スペースワールドのより、ちょっと小ぶりだと思うけど……」

「関係ない! 味さえ良ければ。全部私がもらっていいの!?」

「もちろんだよ」

 

 ~下校時間~

 

 鬼塚と弟の翔平くんが作ってくれたチュロス100本入った紙袋を両手で抱えて、下駄箱に向かう。

 うれしいな~ 帰宅したら、録画してある高塩アナウンサーの深夜番組を見ながら、ベッドの上でチュロスを楽しもうっと!

 鼻歌を歌いながら、ダサいスニーカーに履き替えると誰かが背後に立っていること気がつく。

 振り返ると、鬼のような怖い顔をした”コル●ス先生”が立っていた。

 

「おい、水巻! お前、その紙袋はなんだ?」

「え? その、クラスメイトから頂きまして……」

「お前なぁ……私は最近、補習で頑張るお前の姿を見て評価していたんだぞ? それがなんだ。バレンタインとかいう諸外国の文化に(うつつ)を抜かすとは!?」

「い、いや、これは、そのバレンタインは関係なくてですね。ただクラスメイトの男子が私にお菓子を作ってくれたんです。だから家に持って帰って食べようと……」

「バカ野郎! 水巻、お前は身長が165センチもあるのに、大事な中学時代を恋愛で終わらせる気かっ!? その紙袋を貸せ! 没収だ!」

「そ、そんなぁ~」

 

 コル●ス先生は無理やり紙袋を奪い取ると、初めて会った時と同じように「歯を食いしばれ」と言う。

 まさかと思っていたら、俺の頬を容赦なく引っ叩いた。

 前回と同じく、激しい痛みが走ると耳鳴りが続いて、先生の声がよく聞こえない。

 

「いいかっ! 男子の誘惑などに負けるな! お前には165センチという身長があるんだ。早く女子バスケ部に入って、ぜんそくも治せ。私にまかせろ。男なんてみんなお前と性行為したいだけの生き物なんだ!」

 

 そして、鬼塚が作ってくれた100本のチュロスだが、俺がひと口も食べずに焼却炉で燃やされたそうだ。

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