殺したいほど憎いのに、好きになりそう   作:味噌村 幸太郎

130 / 130
130 いろんな形の復讐

 

 伝説のマンガ家兄弟、岸本先生たちとラーメンをすすりながら、俺は将来の夢を二人に聞いていた。

 

「あの、岸本先生の夢はさっき聞いたんですが……弟のセイシ先生はどんな夢があるんですか?」

 

 俺の問いに割り箸の動きが止まってしまう。

 なにかまずいことでも聞いたかな?

 

「夢なんて言葉で終わらす気はないが、野望はある! それは……ある男へ必ず復讐することだ」

「えぇ!?」

 

 今の話を岸本先生の描いた大人気忍者マンガと比較すると、その対象は?

 俺が隣りに座る岸本先生の方に目をやると……。

 

「なんだってばよ? アイ。オレの顔になんかついてっか?」

「いえ……」

 

 俺と岸本先生が話していると、セイシ先生が眉間に皺を寄せる。

 

「おい! アイと言ったか? いいか、オレの復讐ってのは生半可なもんじゃない。相手に屈辱を与えた上で、絶望に突き落とす行為だ」

「え……それを誰に対して、復讐する気なんですか?」

「聞きたいか? それはな……」

 

 本当は聞きたくない! でも岸本先生の身に関わることかもしれないし。

 

「よく聞け、アイ。オレの復讐する相手はな……親父だ」

「へ? お父さん?」

「そうだ。親父はオレとマサシのために美大の高い学費を払ったんだ。この屈辱を黙って受け入れるわけないだろう!」

 

 興奮しているのか、右手で拳を作ってカウンターに叩きつける。

 

「屈辱……? 要はお父さんに対して、申し訳ないという気持ちなんですか?」

「フンッ! 女のお前に何がわかる? オレは必ずマンガ家として成功し、必ず親父に学費を返してみせる」

「良いと思いますよ、とても親孝行で……」

 

 俺がそう言うと、セイシ先生の頬を真っ赤になり、視線を床に落とす。

 

「やっぱり、お前……うざいよ」

 

 それを聞いた俺は、また岸本先生に「ここからなんですね?」と話を振るが「どういうことだってばよ?」と首を傾げていた。

 

  ※

 

 全員でラーメンを10杯以上食べ終え、三人とも店を出る。

 のれんをくぐる際、大将が岸本先生たちに声をかけていた。

 

「お前ら、必ず天下取って来いよ!」と。

 

 それに対して、岸本先生はこう答えていた。

 

「当たり前だってばよ! もし連載が始まったら、この店をモデルに出すぜ! 大将もな!」

「フンッ、ウスラトンカチのくせして……」

 

 なんだかんだ言って、二人とも仲が良いんだな。そう考えていたら、岸本先生が俺に背中を向けてこう言った。

 

「アイも元気でな! オレとセイシはこれから、超急いで駅に走らないといけないからよっ!」

「そうだ。オレとマサシは今から激しい修行が待っている。アイ、いじめに屈するな。お前ならこの世界でもやれるはずさ」

 

 と別れの言葉を頂いて、二人は駅に向かって走り出した。両腕を後方へ伸ばしたまま……。

 俺が二人の後ろ姿を見て感動していると、誰かが声をかけてきた。

 

「藍ちゃん、こんなところにいたの? 探したんだよ」

 

 美大で講義を受けていたはずの優子ちゃんだった。

 

「あ、ごめん。ちょっとお腹すいてラーメンを食べてたんだ」

「ふ~ん、でもさっきの変なコスプレの人たちは誰? 相当ヤバい人でしょ?」

「な、なんてことを言うの!? 後の週刊少年チャンプのレジェンドになる人だよ!?」

「はぁ? 藍ちゃんてたまに変なことを言うよねぇ~ 後の市長だの芸人だの、おまけに今度はチャンプのマンガ家でしょ……」

 

 この目は信じてもらえてないな……。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

TS転生したら人類の敵だった(作者:生しょうゆ)(オリジナル現代/冒険・バトル)

私の名前は伊藤桜。前世の記憶がある女子高生!▼そんな私はある日、自分の家族を惨殺し、この世界に原作があることを知ったのだった。▼この作品はカクヨムにも投稿しています。


総合評価:4435/評価:8.52/連載:28話/更新日時:2026年05月27日(水) 23:09 小説情報

【TS】近所のガキ達相手に師匠面して千年後、久しぶりに戻ったら色々荒れてた(作者:御花木 麗)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

ヒキニートだったTS娘は、「いい加減里に貢献しろ」と親にエルフの里の子守りを任される。しぶしぶそれを引き受け、子供達相手に師匠面をして遊んでいたある日、魔法の発動ミスで、主人公ひとり謎空間に閉じ込められてしまう。▼↓▼それから千年の時が経ち、ようやくもとの世界に帰還したTS娘。▼ホッとしたのも束の間、弟子たちは国すら安易に無視できないほどの影響力を持つ、伝説…


総合評価:21108/評価:8.84/連載:20話/更新日時:2026年05月26日(火) 12:12 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>