殺したいほど憎いのに、好きになりそう   作:味噌村 幸太郎

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132 貧乏ギャル

 

 二年生に進級して、初めての授業が全て終わった。

 ヤバい、どの授業もさっぱり意味が分からない。何も頭に入って来なかった。

 その点左隣に座っている鬼塚は「思ったより、楽だったな。二年生の授業」なんて余裕を見せていたから、苛立った。

 

 帰りのホームルームで担任のミルク先生から、今年の目標を告げられた。

 

「あのね、みんな~ 私は特に厳しくするつもりはないの。ただ一つだけ守ってね。ケガとか命の危険に関わる行為はしないように!」

 

 それを聞きながら俺は「小学生かよ」とぼやく。

 

  ※

 

 帰り道。

 一日、藍ちゃんにくっつくことが出来なかった隣りのクラスの優子ちゃんが俺の肩にべったりくっつく。

 

「ああ~ 藍ちゃんの甘い香り、たまらなぁ~い」

「……」

 

 優子ちゃんて本当に女子中学生なのだろうか?

 誰かおっさんが死んで、その身体に憑依してないか……。

 

 自宅に着いたところで、優子ちゃんと別れて二階に駆け上がる。

 今日も初代ポケモンの育成をしよっと。そう考えながら自室の扉を開くと、金髪のミニスカギャルが俺の部屋を物色していた。

 

「ギャーッ!」

「ん? 藍、なにをびっくりしてんの? 私だって」

「お、お姉ちゃん?」

 

 いきなり髪の色を金髪に染め上げたから、悲鳴をあげてしまった。

 全然似合ってない……所詮は”ばく●んいわ”だからな。

 

「どしたん? これ、めっちゃ可愛いでしょ? お姉ちゃん、先輩に美容師見習いがいるから染めてもらったんだぁ」

 

 なんて嬉しそうに自身の髪を触るお姉ちゃん。

 しかし、厳格な我が家では髪色をこんなに染めることは禁止されているはずだが……。

 

「お姉ちゃん……それってお父さんとお母さんに許可取ったの?」

「は? 取るわけないじゃん。言ったら、怒られるもん」

「じゃあ家にいる間はどうするの?」

「あ、それね。ちゃんと考えたよ。これを使えば大丈夫!」

 

 と黒い物体を頭から被る。

 

「それって……」

「そう! 家ではウィッグを使うんだよ! これでお父さんとお母さんにもバレずにすむんだって。美容師の先輩からもらったの」

「そうなんだ」

 

 そこまでして髪を染めたいのか。

 

  ※

 

「ところで藍、スティックのり持ってない?」

「え? うん持ってるけど」

「じゃあ、貸してよ」

「はい」

 

 俺がスティックのりをお姉ちゃんに渡すと、その場でふたを開けて、ひざ下あたりにのりを塗り始めた。

 

「ちょっと! なにやってんの!?」

「なにって、”ルーソー”を止めるために塗ってるけど」

「るーそー? なんのこと?」

「あんた、それでも中学生なの。”ルーズソックス”のことに決まってるじゃん」

 

 じゃあいちいち略すなよ。面倒くさい。

 お姉ちゃんの話では”ソックタッチ”を切らしていたので、金がないから俺にスティックのりを借りたかったそうだ。

 だが、貧乏ギャルのスティックのりは他にも使われていた。

 

 小指の腹にのりを塗りつけると、何を思ったのか顔に持っていき、瞼に塗り始める。

 

「な、なにやってんの!? 今度は一体なにする気?」

「うるさいね、藍は。見てわかんないの、”アイプチ”してんの」

「え? あいぷち?」

「あんたはいいよねぇ~ 天然の二重だから一重の悩みがわかんないでしょ」

「はぁ……」

「私なんかデートの度に3回はトイレでこの作業しないと、二重をキープできなくてマジで苦労するわ」

 

 お姉ちゃんはお父さん似だからな……。

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