殺したいほど憎いのに、好きになりそう   作:味噌村 幸太郎

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第十五章 二年生
133 食べ物で釣られる女


 

 二年生に進級して、2週間が経とうとしてた。

 相変わらず授業ではついていけず、既に俺はいくつかの補習のリストに入っていると噂が耳に入って来た。

 本当にこの中学校の教師はどいつも真面目だな。

 

 だが、俺は家に帰っても勉強など一切せず、ゲームボーイをピコピコ言わせてポケモン集めに熱中している。

 ゲームが終わったら、お母さんが作ってくれた晩ご飯を何回もおかわりして、テーブルに座るお父さんがドン引きしていた。

 お風呂に入ったあとは深夜番組を楽しむ。

 昨晩見たローカル番組の”ズバコンTV・Sooo(スゥーー)は傑作だったな。

 

 後に福岡市の市長となる”高塩 宗二郎アナウンサー”の”むね二郎の身体張ってます”で。

 冒頭から『博多川と博多湾の境い目を知りたい~!』とか言い出して、汚くてドブ臭い博多川に紐をつけたお玉を投げ入れて『オエッオエッ』言いながら舐めていた。そのまま川から海に沿って、お玉を何度も投げ入れて自身の舌で確かめては吐きそうになるし。

 でも、最終的には”福岡市民会館”あたりで『これはしょっぱい! みなさん、ここが博多湾との境い目です』って特定していたからな。

 そのしるしとして、川のそばに『高塩宗二郎アナウンサー ABCテレビ』と木製の立て札を花壇に刺していた。

 

 俺が腹を抱えてゲラゲラ夜中に笑うもんだから、お姉ちゃんに怒られてしまった。

 

「何時だと思ってんの! あ、また訳の分からない新人アナでしょ? つまんないの見ないで、早く寝な!」

 

 深夜まで興奮して番組を見ていたので、今日も寝不足だ。

 授業中もほとんど机の上で寝てばかり。

 昼休みになって、給食がクラスに持ち運ばれて香りで目が覚めると、鬼塚が目の前に立って俺を睨んでいた。

 

「よ、よう。水巻……」

 

 相変わらずのツンツン頭で、頬を赤らめている。

 こいつ、二年生に進級したのに全然身長伸びないな。

 ”もりもりにんに君”が過去に言った「身長が伸びる」という発言は嘘だったのか?

 

「どうしたの? 鬼塚」

「あのさ、お前。最近オープンした”カナルシティ”って行ったことあるか?」

「は? 最近オープンした……?」

 

 そんなもんは25年以上前に出来ただろうと思っていたが、違った。

 この世界じゃまだオープンして間もないんだった!

 なるほど、それをきっかけにデートを誘う気か。

 断ってやろうかな。

 

「なんかさ、シネコンていう映画館のやつがすごいらしいぜ? 13個もスクリーンがあるんだってよ」

「はぁ……それがどうしたの?」

「そ、その……水巻さえ良ければ、今度一緒に映画を観に行かないか? 前売り券を母ちゃんからもらってさ」

 

 やっぱりデートの誘いだ。

 今回は断ろう。藍ちゃんの処女を守らねば、映画ぐらいでホテルに連れて行かれたら安い女と思われちまう。

 

「ん~ 私はいいかなぁ。まだポケモン集めが忙しいし」

 

 俺が断ろうとすると鬼塚が急に慌て始める。

 

「えぇ!? そんなぁ、ゲームより楽しいって! あと売店もすごいらしいぜ? なんだったけな……あ、ホットドッグにナチョス、もちろんポップコーンもあるぜ?」

 

 それを聞いた俺の声色が変わる。

 

「なんだって?」

「だから、アメリカぽいポップコーンとか、ホットドッグにナチョスが売店に売ってるらしいぜ」

「行く。いつ、行くの?」

「え、今週の日曜日だけど」

「わかった。時間が決まったら、私の家まで迎えに来てね」

「お、おう……」

 

 映画館には珍しいナチョスがあると聞いて、釣られてしまった。

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