殺したいほど憎いのに、好きになりそう   作:味噌村 幸太郎

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134 気がつけば女らしく

 

 鬼塚とまたデートの約束をしてしまった……だってナチョスていう食べ物が気になるんだよ。

 前日の夜、自室の中でベッドに今持っている女物の服を並べてみたが、どれを着たらいいか分からん。

 しばらく服選びに迷っていると、お姉ちゃんが勝手に部屋に入ってきた。

 

「藍、あんたさ。私がこの前買ったピアス知らない?」

「知るわけないでしょ……お姉ちゃんみたいに、耳に穴を空けてるわけじゃないのに」

「ふ~ん、藍もお姉ちゃんが空けてあげようか?」

「絶対にイヤ!」

「そこまで拒絶しなくても……って、こんなに服を並べて明日はデート?」

「ち、違うよ! ただ映画を観に行くだけだもん!」

「はは~ん、あの鬼塚くんて子ね? じゃあまたお姉ちゃんがコーデしてあげよっか?」

 

 お姉ちゃんがコーディネートした超絶ミニスカギャルは、鬼塚にも受けが悪かったし歩きにくかったな。

 俺が「鬼塚はいつもの格好が好きらしい」とお姉ちゃんに伝えると、「え? じゃああの子って制服フェチなの? キモッ!」と俺と同じ反応をしていた。

 

 けど、お姉ちゃんなりに鬼塚が好きそうな格好を真剣に選んでくれていた。

 

「普段の藍てことは、セーラー服ぽい処女らしいファッションだよね? なら……」

 

 いちいち、俺のことを処女て言いたがるんだよな。

 

「これはどう?」

 

 ~数分後~

 

 お姉ちゃんがクローゼットから出して来たのは、意外なファッションだった。

 ガーリーなセーラーカラーのワンピース。同系色のカチューシャまで用意された。

 俺はその服に着替えてドレッサーの前に座りこみ、可愛くなった藍ちゃんの姿に見惚れていた。

 

「かわいい……」

「でしょ? まさに『私が処女です』てアピールしているブリブリの尻軽女て感じ!」

「え……尻軽女?」

「こういう格好している女ほど、簡単に人の男をぶんどる悪い女って昔から決まってるじゃん!」

 

 と笑うお姉ちゃん。

 俺的にはかなり好みの清楚な女の子なのに、お姉ちゃんの仮説が本当なら辛すぎる。

 

  ※

 

 鬼塚が俺の家まで迎えに来て、そのまま二人して駅まで歩く。

 お姉ちゃんがコーディネートしてくれたガーリーなワンピースを着ているが、鬼塚の反応は特に無かった。

 だが、それもそれで腹が立つ。男なら何かひと言ぐらい気を使えよな。

 こんなに可愛く藍ちゃんが頑張ったのに……そうだ、電車に乗ったらいじわるしてやろっと。

 

 地元の駅の”筑前真島(ちくぜんまじま)”に着くと、博多駅までの切符を買う。

「博多駅まで片道270円て安くねっ!?」

 と驚いていたら、鬼塚に注意された。

 

「水巻、今日は人が多いんだから、迷子になるなよ」

「あ、は~い」

 

 なんか俺が妹みたいな扱いされてムカつく。

 でも、今に見てろよ。この人の多さを使って鬼塚を困らせてやる。

 

 ~10分後~

 

 俺の思っていた以上に電車の中は、人であふれ返っていた。

 人ごみを利用して藍ちゃんの巨乳を使い、鬼塚の小さな顔に押しつけて恥ずかしめてやろうかと思ったが……。

 それよりも俺の身体をさっきから誰がもぞもぞと触ってきて、気持ちが悪い。

 

「いっ!?」

 

 気がつけば、その手は藍ちゃんのスカートの中に入り込み、ついにはパンツの中にまで侵入しようとしていた。

 俺の声に気がついた鬼塚が、近くにいた中年のサラリーマンを睨む。

 すると藍ちゃんの尻を撫でまわす気持ちの悪い感覚は、どこかに消え失せてしまった。

 

「大丈夫か? 水巻!」

「う、うん……」

「だから言ったろ! 今日は人が多いから気をつけろって」

「ごめん」

 

 初めて痴漢にあったせいか、俺は安堵から目頭が熱くなり、気がつけば涙が頬を伝っていた。

 そして背の低い鬼塚を自身のふくよかな胸に当てて、気持ちを落ち着かせようとする。

 

「ふがが……」

「怖かった」

 

 予想とは違う結果になったが、このあと鬼塚はしばらく顔を真っ赤にさせて黙り込んでしまう。

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