殺したいほど憎いのに、好きになりそう   作:味噌村 幸太郎

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第十六章 体育祭
140 ピラミッド


 

 5月に入り、ようやく二年生のクラスにも馴染めてきた。

 と言っても俺の授業態度は寝るか、給食の時間に「おかわり!」を連呼しているだけで、一年生の時と特に変わりはない。

 まあ優子ちゃんがいないので、その分静かだけど。

 

 担任のミルク先生が帰りのホームルームで「明日から、体育祭のために練習が始まります」と言っていた。

 体育祭ねぇ……身体の弱い藍ちゃんの肉体が耐えられるかな?

 

 ~翌日~

 

 朝、いつも通り優子ちゃんと中学校まで歩いていたら、学校近くの長い坂道から笛の音が聞こえて来た。

 よく見ると、バスケ部の朝練だった。

 ということは、鬼塚も練習に励んでいるはず……ってあれ、いないぞ。

 そう言えば、カナルシティで遊んで以来、鬼塚の様子が変なんだよな。

 まだ高塩アナのことで、嫉妬しているのだろうか?

 

 下駄箱で上靴に履き替えていると、細身でジャージ姿の男教師に話しかけられた。

 

「おい、水巻。お前、鬼塚と仲良かったよな?」

 

 そう問いかけられて、俺は教師の顔を見ると驚きのあまり固まってしまう。

 

「水巻、聞いているのか?」

「こ、”コル●ス”……」

「何を言っているんだ。お前、鬼塚とよく話してるよな? 最近、男子バスケ部を休んでいるらしいぞ。お前は何か知らないか?」

 

 鬼塚とバスケ部の名前で、ようやく我に返る。

 

「え? 鬼塚がバスケ部を休んでいるんですか!?」

「ああ、男子バスケ部の先生が困っていてな。鬼塚は身体こそ小さいが努力家だから、チームの中でエース的存在なんだ。あまり休まれると困る」

「へぇ~ 鬼塚って、そんなに上手くなってたんですね」

「だから、仲の良い水巻からもバスケ部に一度顔を出すように言ってくれないか?」

「私は構いませんけど」

 

 あの鬼塚がバスケ部を休む? ありえない。

 いじめられても、我慢してやめなかったバスケ馬鹿だぞ。

 そんなに高塩アナへ嫉妬して、傷心したのだろうか。

 

  ※

 

 ミルク先生の言うように、今月から授業は体育祭に向けての練習ばかりになった。

 中学生になるとたった一年違うだけで体格が全然違うから、注意が必要だ。

 それなのに、全学年でシャッフルして赤、黄、青組へ分かれることになった。

 

 俺は黄色組に振り分けられた。鬼塚も一緒だが、どうも元気がないように見える。

 団長となる三年生の先輩が俺たちの前に立って「絶対に勝とう!」と声を荒げていた。

 その話を聞いた俺はアホらしいと、ブルマからはみ出たパンツをなおす。

 

 ふと目の前で、赤組が練習している姿を見ていると……。

「よ~し! いいぞ、お前ら。笛の音と共に崩れろ!」

 と担当の先生が指示すると、生徒たちで作られたピラミッドが一斉に崩れる。

 一番下で支えていた土台となる生徒は、文字通り押し潰される。

 見たところ背の高い子が一番下になっているようだ。ということは藍ちゃんの場合は……。

 

 ~5分後~

 

 思っていた通り、藍ちゃんは一番下で女子生徒たちの土台にされていた。

 教師の笛の音と共に、上に乗っかっていた女子たちがなだれ落ちてくる。

 重たいし、痛い。

 ここまでしてやるイベントなのだろうか?

 

 隣りでも同様に男子たちがピラミッドをやっていたのだが、一番上に立つ少年は鬼塚だった。

 ふらふらと揺れて、危なっかしい。

 そう思っていたら、強い風がグラウンドを吹き抜ける。

 次の瞬間、鬼塚は地面に叩きつけられて意識を失っていた。

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